ゼロからわかるファイナンス思考

働く人と会社の成長戦略
未読
ゼロからわかるファイナンス思考
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ゼロからわかるファイナンス思考
出版社
出版日
2022年04月18日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「ファイナンス」と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは資金調達だろう。財務に直接関わる部門で働いているのでなければ、自分の業務とファイナンスとの関わりを実感する機会は少ないかもしれない。しかし、本書の著者は、「ファイナンス」とは「企業価値を最大化するためにおこなう活動」のことと捉え、ファイナンス思考は「すべてのビジネスパーソンが触れるべき基礎教養、基礎教育の対象である」と主張する。

ファイナンス的なモノの考え方は、私たちが生きる資本主義のルールそのものだ。そのルールを知らずに生きることは、自分の参加しているゲームのルールを理解せずにプレイしていることを意味する。だからこそ、ファイナンス思考は必須であると著者は繰り返し強調するのだ。

本書の最大の特徴はファイナンス思考の解説にまんがを取り入れている点だ。登場するのは日本の中堅メーカー「月島電機」の社長や社員たち。月島電機は、目先の利益を優先するあまり新規事業への投資が進まず、このままでは先細りに……と日本ではよく見かける企業のひとつだ。状況を打開するべく呼ばれたのは敏腕経営コンサルタントの深町。彼はどのようにして月島電機の面々にファイナンス思考を根付かせ、さらなる発展につなげるのか。そんなストーリーを追いながら、無理なく楽しくファイナンス思考について学ぶことができる。年次や業種、勤務形態を問わず、どんな人でもすらすらと読めるはずだ。

著者

朝倉祐介(あさくら ゆうすけ)
シニフィアン株式会社共同代表。兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務に携わった後、東京大学法学部を卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニージャパンを経て、大学在学中に設立した株式会社ネイキッドテクノロジー代表に就任。株式会社ミクシィへの売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、シニフィアンを創業。同社ではグロースキャピタル「THE FUND」の共同運営など、IPO後の継続成長を目指すスタートアップに対するリスクマネー・経営知見の提供に従事。主な著書に『論語と算盤と私』『ファイナンス思考——日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』(以上、ダイヤモンド社)がある。
株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。

本書の要点

  • 要点
    1
    会社が存続していくための資本市場は投資家の「期待の連鎖」が基本構図である。売上やコストなどを示すPL、資金の調達手法や使い道を表すBSはファイナンスの基礎だ。
  • 要点
    2
    ファイナンスには「外部からの資金調達」「資金の創出」「資産の最適配分」「ステークホルダー・コミュニケーション」の4つの活動がある。これらを通して企業価値を高めていくことが重要だ。
  • 要点
    3
    増収増益などPL上の数値の良さを絶対視する「PL脳」に陥ると短期的な戦略に偏って企業価値を損なうおそれがある。キャッシュ・資本コスト・成長投資を軽視してはいけない。

要約

ファイナンスの基礎

月島電機の悩み

電子部品メーカー・月島電機の碇川社長は悩んでいる。就任から6年、なんとか黒字を維持してはきたが、コストダウンや投資控えといった消極的な経営に終始している。現状維持では未来がないのではという不安もある。そこで敏腕経営コンサルタント・深町に仕事を依頼することにした。

深町がまず指摘したのは、月島電機が研究開発投資を削減してきた点だ。その経営手法は「企業価値を最大化するための活動」すなわち「ファイナンス」と正反対だという。ファイナンス思考とは、外部から出資を受けている株式会社が守るべきルールだ。まずはその会社の仕組みを見ていこう。

株式会社は「期待の連鎖」で回っている
Nuthawut Somsuk/gettyimages

起業家が資金を必要とした際、投資家にお金を出してもらい、外部株主になってもらうことがある。そのお金は設備や従業員に支払われ、それにより商品やサービスができる。これが「事業投資」というプロセスだ。できあがった商品やサービスが顧客に「販売」され、債権の「回収」というプロセスを経て初めてお金になる。この一部を配当金などの形で投資家へ還元し、一部は社内にとどめて事業投資へと回す。こうした流れでお金を循環させるのが原始的な会社の形だ。投資家は、会社の株式を別の投資家に売ることもできる。この市場をセカンダリー・マーケットと呼ぶ。投資家間で株式がやりとりされても、会社にお金が入ってくることはない。会社に一切資金提供をしていない投資家であっても、その会社の株式を保有していればその会社が稼いだお金は配当金などの形で還元される。セカンダリーマーケットの投資家の間で株式やお金が循環しているのは不思議に思われるかもしれない。

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要約公開日 2022.08.12
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2022 朝倉祐介 All Rights Reserved. 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は朝倉祐介、株式会社フライヤーに帰属し、事前に朝倉祐介、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
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