LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)

長生きせざるをえない時代の生命科学講義
未読
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長生きせざるをえない時代の生命科学講義
著者
未読
LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)
著者
出版社
出版日
2020年12月21日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

私たちの日常には健康にまつわる情報が溢れている。いつでもどこでも手軽に情報に触れられるようになった一方で、「うさんくささ」を感じることや、まったくの真逆の情報を目にすることも増えてきている。情報が錯綜したコロナ禍においては、どの情報を信じて行動するかが自分の健康や生命に直接的な影響を与えることとなった。溢れる情報を正しく読み取り、的確な判断をすることの重要性は増すばかりだ。

本書がまずテーマにするのは、自分で考えるための「科学的思考」だ。コロナ禍のような事態では、専門家であっても「答え」を持ち合わせていない。本書はまず、デマにまどわされずに理屈で物事を見極める力を読者につけさせようとする。そのうえで、生命科学を基礎から教えてくれる。基本の単位は「細胞」だ。生命科学に詳しくない、学生時代は生物が苦手だったという人でも心配はいらない。専門用語の羅列ではなく、素人にもイメージしやすいような比喩を用いながら説明が進むので、気持ちよく理解しながら読むことができるはずだ。

そして、本書を読んでワクワクさせられるのは、オートファジーの可能性だ。著者の専門分野であるオートファジーは、老化や死に介入し、遅らせる未来を実現できるかもしれないというのだ。理由ははっきりしていないという断り書きはあるものの、寿命を延ばす方法はある程度わかってきているというのだから驚きだ。寿命を延ばすための習慣は、日々の生活にも取り入れることができるものもある。「科学的思考」を用いて、まずは本書の情報を検証し、自分の生活習慣を見直してみてはいかがだろうか。

ライター画像
香川大輔

著者

吉森保(よしもり たもつ)
生命科学者、専門は細胞生物学。医学博士。大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授。
2017年大阪大学栄誉教授。2018年生命機能研究科長。
大阪大学理学部生物学科卒業後、同大学医学研究科中退、私大助手、ドイツ留学ののち、1996年オートファジー研究のパイオニア大隅良典先生(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)が国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げたときに助教授として参加。
国立遺伝学研究所教授として独立後、大阪大学微生物病研究所教授を経て現在に至る。
あちこちを転々としてきた流浪人。自分が研究に向いているのか確信が持てないまま、しかし「細胞内の宇宙」に魅せられて40年以上、役に立つか立たないかわからない基礎研究の世界にどっぷり。特にオートファジー研究に黎明期から携わり、今それが予想外の発展を遂げていることに感慨しきり。マラソン、トレイルランニング、靴磨き、焚き火、Perfume、雲見物、世界の美術館探訪、ラバーダック収集など趣味多数。
大阪大学総長顕彰(2012~15年4年連続)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2013年)。日本生化学会・柿内三郎記念賞(2014年)、Clarivate Analytics社Highly Cited Researchers(2014年、2015年、2019年、2020年)、上原賞(2015年)。持田記念学術賞(2017年)。紫綬褒章(2019年)。

本書の要点

  • 要点
    1
    科学的思考の基礎は理屈で考えるという姿勢だ。真理をどこまで追求しても、本当に正しいかはわからないという前提のもと、仮説の検証を繰り返し、真理に近づけようとする営みが科学である。
  • 要点
    2
    生命の基本単位は細胞である。細胞には恒常性があるが、さまざまな原因でこれが失われたときに、病気になったり死んだりする。
  • 要点
    3
    オートファジーは細胞を「自分の力で新品にする機能」で、細胞の中の恒常性を保つ役割を担う。応用すれば、老化と死に介入し、それらを遅らせることのできる未来が実現できる可能性を秘めている。

要約

生命の基本単位である細胞

科学的思考の重要性

生命科学に入る前に、科学を考える基礎となる「科学的思考」について説明する。科学的思考を身につければ、生命科学が理解しやするのはもちろん、自分が行動するうえでの正しい判断基準が得やすくなる。

昔も今も人類最大の敵は病気だ。人類は感染症に善戦しているが、勝つまでには至っていない。新型コロナウイルスの感染拡大に多くの人が困っているが、じつは、専門家もよくわからずに困っているのが実情だ。不確かな状況のときには自分で考えるしかない。そんなとき役立つのが「科学的思考」だ。

科学的思考のベースにあるのが、理屈で考えるという姿勢だ。科学には、「真理をどこまで追求しても、それが本当に正しいかはわからない」という前提がある。真理であるかのように教科書に載っている法則も、「真理っぽい仮説」にすぎない。検証を繰り返しながら仮説をよりよいものにし、真理に近づける営みが科学である。

これを押さえておくだけで、不確かな状況で何かを断言する「専門家」は怪しいと判断できる。新型コロナウイルスは感染拡大が速すぎて「真理に近い仮説」もまだない。私たちは今まさに、いろいろな人が仮説を出し、データが集まり、よりよい仮説になっていく過程を目撃している。このプロセスを知っていれば、不用意にデマに振り回されることはないだろう。

細胞の構造とタンパク質
LisaAlisa_ill/gettyimages

生命の基本は細胞だ。細胞を正しく理解すれば、生命のしくみもおのずとわかる。本書は、細胞を中心に生命科学の基礎から最先端までを解説する。異なる生き物でも、細胞を取り出して見ると形状や機能はほとんど変わらない。

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要約公開日 2022.10.08
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