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LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)

長生きせざるをえない時代の生命科学講義


本書の要点

  • 科学的思考の基礎は理屈で考えるという姿勢だ。真理をどこまで追求しても、本当に正しいかはわからないという前提のもと、仮説の検証を繰り返し、真理に近づけようとする営みが科学である。

  • 生命の基本単位は細胞である。細胞には恒常性があるが、さまざまな原因でこれが失われたときに、病気になったり死んだりする。

  • オートファジーは細胞を「自分の力で新品にする機能」で、細胞の中の恒常性を保つ役割を担う。応用すれば、老化と死に介入し、それらを遅らせることのできる未来が実現できる可能性を秘めている。

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生命の基本単位である細胞

科学的思考の重要性

生命科学に入る前に、科学を考える基礎となる「科学的思考」について説明する。科学的思考を身につければ、生命科学が理解しやするのはもちろん、自分が行動するうえでの正しい判断基準が得やすくなる。昔も今も人類最大の敵は病気だ。人類は感染症に善戦しているが、勝つまでには至っていない。新型コロナウイルスの感染拡大に多くの人が困っているが、じつは、専門家もよくわからずに困っているのが実情だ。不確かな状況のときには自分で考えるしかない。そんなとき役立つのが「科学的思考」だ。科学的思考のベースにあるのが、理屈で考えるという姿勢だ。科学には、「真理をどこまで追求しても、それが本当に正しいかはわからない」という前提がある。真理であるかのように教科書に載っている法則も、「真理っぽい仮説」にすぎない。検証を繰り返しながら仮説をよりよいものにし、真理に近づける営みが科学である。これを押さえておくだけで、不確かな状況で何かを断言する「専門家」は怪しいと判断できる。新型コロナウイルスは感染拡大が速すぎて「真理に近い仮説」もまだない。私たちは今まさに、いろいろな人が仮説を出し、データが集まり、よりよい仮説になっていく過程を目撃している。このプロセスを知っていれば、不用意にデマに振り回されることはないだろう。

細胞の構造とタンパク質

LisaAlisa_ill/gettyimages

生命の基本は細胞だ。細胞を正しく理解すれば、生命のしくみもおのずとわかる。本書は、細胞を中心に生命科学の基礎から最先端までを解説する。異なる生き物でも、細胞を取り出して見ると形状や機能はほとんど変わらない。

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要約公開日 2022.10.08
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