世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する

歴史思考

未読
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世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する
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出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2022年03月29日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

悩みは社会の「当たり前」から生まれる。「お金を稼ぐ人が偉い」「性の対象は異性」といった価値観があるからこそ、そこから外れた人が悩みを抱える。しかし、こうした「当たり前」は、歴史を紐解けばちっとも「当たり前」ではない。本書によれば、江戸時代はお金を稼ぐ力にかかわらず公家や武士が力を持っていたし、ヨーロッパでも日本でも長らく一般的に男性間セックスが行われていたという。絶対的かに思える「人を殺してはいけない」という価値観でさえ、当たり前ではなかった時代がある。私たちの「常識」など、長い歴史から見れば、ただのごく最近できたちょっとしたトレンドにすぎないのだ。

本書は、JAPAN PODCAST AWARDS 2019で大賞とSpotify賞をダブル受賞した大人気コンテンツ「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」のパーソナリティを務める、深井龍之介氏初の著書である。深井氏は、私たちを縛る固定観念から自由になり、楽に生きられるようになることが、歴史や古典を学ぶ効能だと説いている。本書ではチンギス・カン、イエス・キリスト、マハトマ・ガンディーなど、誰もが知る偉人の物語を通じて、現代人の「当たり前」を崩していく。深井氏の確かな知識と軽妙な語り口で、歴史初心者でも気軽に読めるのが魅力だ。「ガンディーは性欲を克服するために19歳の孫姪を全裸にして一緒に寝る修行をしていた」など、偉人たちの知られざるエピソードも紹介されており、おもしろい。

多様で変化の激しい現代を生き抜くために不可欠な視点を与えてくれる一冊だ。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

深井龍之介(ふかい りゅうのすけ)
株式会社COTEN代表取締役CEO
島根県出雲市出身。大学卒業後、大手電機メーカーや複数のベンチャー企業の取締役・社外取締役などを経て、2016年に株式会社COTENを設立。「メタ認知を高めるきっかけを提供する」をミッションに掲げ、3500年分の世界史情報を体系的に整理。数百冊の本を読んで初めて分かるような社会や人間の傾向・行動パターンを、誰もが抽出可能にする「世界史データベース」を開発中。COTENの広報活動として「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」を配信。2019年には、「JAPAN PODCAST AWARDS 2019」で大賞とSpotify賞をダブル受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    現代社会の「常識」は、絶対的なものではない。「命は大切」「お金を稼ぐ人が偉い」といった当たり前の価値観すら、コロコロ変化しているものだ。
  • 要点
    2
    歴史を通じて、私たちの悩みの前提となっている価値観が絶対的なものではないと知れば、生きるのが楽になる。
  • 要点
    3
    私たちが悩んでいるようなことは、過去の偉人たちが考え尽くしている。歴史や古典という過去の事例を比較対象にすることで、自分自身を俯瞰する「メタ認知」がしやすくなる。

要約

【必読ポイント!】 「当たり前」を疑え

歴史を知り、悩みから解放される

私たちが生きる社会には、無数の「当たり前」がある。ほとんどの悩みは、そこから外れることによって生まれる。例えば、現代日本では、お金を稼げることが「良いこと」とされ、男性は女性を、女性は男性を好きになることが「普通」とされている。そこから外れた人が悩みを抱える。悩みの原因は、社会にある常識や価値観なのである。

歴史を学ぶと、その常識や価値観が決して「当たり前」ではないことがわかる。価値観は絶対ではなく、場所や時代によって変わる。それがわかると、悩みの前提が崩れ、悩みから解放される。歴史を知ることで、悩みから自由になることが本書のねらいだ。

今の我々が持つ「当たり前」が「当たり前」ではないことを理解する。これを著者は、「メタ認知」と呼んでいる。メタ認知とは一般に、今の自分を取り巻く状況を一歩引いて客観視することを指す。そして、歴史を知ることによるメタ認知を、本書では「歴史思考」と呼ぶ。歴史思考を身につけることで、悩みから解放されることができるはずだ。

凡人だった惑星級偉人イエス・キリスト
Hase-Hoch-2/gettyimages

「ダメ人間である自分が嫌だ」という悩みを抱える人は多い。そういう人は人間を「偉人」と「凡人」に二分して考えているのではないだろうか。しかし、実は偉人と凡人の区別はそうはっきりとつけられるものではない。その好例として、世界史を代表する偉人、イエス・キリストを紹介する。

言うまでもなく、イエス・キリストは後世に絶大な影響を及ぼした人物だ。キリスト教がなければ科学も資本主義も今のような形では生まれていなかっただろう。

しかし、地球規模の歴史を変えた偉人であるイエスも、30歳くらいまではただの大工だった。当時の大工は社会的地位の低い職業で、せいぜい奴隷より一つ上という程度だ。その上、自分の考えを広めた期間はたったの3年程度。十字架に磔にされたことで有名だが、これは政治犯全般に適用された罰であり、イエスだけの特別な刑罰だったわけではない。

イエスとともに有名な「十二使徒」という弟子たちがいるが、これは見方を変えれば弟子が12人しかいなかったということだ。零細団体もいいところで、当時のイエスは「地方都市で処刑されたちょっとエキセントリックな元大工」にすぎなかった。

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要約公開日 2022.10.02
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