職場のメンタルヘルス・マネジメント

――産業医が教える考え方と実践
未読
職場のメンタルヘルス・マネジメント
職場のメンタルヘルス・マネジメント
――産業医が教える考え方と実践
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未読
職場のメンタルヘルス・マネジメント
著者
出版社
出版日
2023年03月10日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

今春より異動を命じられた、あるいは思いがけず管理職に昇進したという人もいるだろう。心機一転、やる気に満ちる一方で「これまで以上に人間関係への配慮が必要な立場になったなぁ」と感じている――。本書は、そんな方にうってつけの一冊だ。

個人の多様性が叫ばれ、ますます複雑化する組織。そんな中、職場におけるメンタルヘルス問題は年々大きくなっている。本書によれば、病気による休退職のおよそ4分の3を精神疾患が占めている。また労災補償においては、精神疾患による申請および認定数が2000年代に入って飛躍的に増加しているという。

本書の著者は産業医として長年活動し、京都大学名誉教授でもある川村孝氏だ。産業医という特殊な立場から見た職場における心理特性や精神症状を分析し、仕事に対する考え方や職場における立ち回りのコツなどを提案してくれる。また、雇用形態や労働安全に関わる法令、産業医の業態といった職場を包括する概念までカバーしているため、読めばメンタルヘルスを構造的に捉えることができるだろう。

冒頭では新たに管理職になった人向けと書いたが、ベテラン管理職者にも是非一読いただきたい。精神的な問題はとかく視野が狭くなりがちだが、構造的に捉えることでその幅を広げることができる。上司一人で抱え込まず、人事労務担当者や産業医も一体となってケアする大切さが、本書を読めば理解できるはずだ。

著者

川村 孝(かわむら たかし)
1954年岐阜県生まれ。名古屋大学医学部卒業。社会保険中京病院(名古屋)、日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院(東京)、静岡済生会総合病院にて内科診療に従事したのち、愛知県総合保健センターにて健診・健康増進業務に従事。1993年より名古屋大学医学部予防医学教室の助教授、1999年より京都大学保健管理センターの所長・教授。現在、京都大学名誉教授。公的機関や民間企業の産業医を30年以上にわたり務める。著書に『臨床研究の教科書――研究デザインとデータ処理のポイント』『エビデンスをつくる――陥りやすい臨床研究のピットフォール』(いずれも医学書院)、訳書にミセス・ジェニセック『EBM時代の症例報告』(医学書院)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    雇用契約において、従業員は会社に「労働力」を提供する代わりに「賃金」を受け取る。従業員は会社の業務に対して、過度な責任を背負いすぎる必要はない。
  • 要点
    2
    人の心理は多様であり、病気や問題に発展しやすい心理特性もある。上司や同僚はその特性を知り、その人に合わせた接し方や仕事の割り振りをしなければならない。
  • 要点
    3
    部下の様子が「いつもと違う」ことに気づいたら、上司は直ちに産業医に相談しよう。
  • 要点
    4
    長時間労働や在宅勤務における衛生管理は会社の責任だが、本人任せになっているのが現状だ。

要約

【必読ポイント!】合理的に働く

勤務は契約

会社で働くあなたは、自身の「雇用契約書」を読んだ覚えがあるだろうか。民法上の「雇用契約」とは、従業員が「労働力」を提供し、その代わりに「賃金」を受け取るというものだ。この契約では従業員は管理者の命令に従わなければならないが、その指示や命令が法に反する場合、また公序良俗に反する場合はその限りではない。また、管理者は従業員の労働に対する裁量権を持っているものの、従業員の能力や生活環境、健康状態に見合った仕事を提供しなくてはならない。

会社の業務において、個人の責任には限りがある。無理を引き受けるとしたら、それは会社である。そのために、会社は利益余剰金(内部留保)を積んでいるのだ。

部下管理の方法
maroke/gettyimages

管理者に求められる力の一つが「人を診る」力だ。部下が元気か、疲れていないか。疲労の色が濃い場合は、休養や受診を勧める。セルフケアだけに頼るのではなく、しっかりとラインケア(上司または人事担当による管理)を行うべきだ。この時に大事なのは「キャパシティは人によって異なる」ことを肝に銘じることである。能力は人それぞれのため、その人の問題ではなく人の配置の問題と捉えるべきだ。

また、「あるべき管理職像を演じる」ことも重要だ。勤務中は徹底的に仮面を被り、本音を出さず、舞台の役者のように与えられた“役”をこなすのだ。その演技料が管理職手当に相当する。「形ばかりで心がこもっていなければ意味がない」と思うかもしれないが、心配ない。仕事は仮面舞踏会(マスカレード)なのだから、演じることに専念しよう。それに、「演じ続ければいつか本物になれる」のが人間の面白いところだ。

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要約公開日 2023.06.22
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