両利きの経営が組織に長期的な成長をもたらす
サクセストラップ
高いマーケットシェアを誇り、順調に業績を伸ばし、その地位は盤石だと思われていた企業が、あっという間に衰退してしまうことがある。それはなぜなのか。ベンチャーなどの後発企業が革新的な製品・価値を生み出して従来のマーケット秩序を破壊し(=破壊的イノベーション)、その変化に対応しきれなかったからだ。例えば、アメリカの一大DVDレンタル企業であったブロックバスターは、1999年に創業したネットフリックスの動画配信サービスによって、2010年に倒産に追い込まれた。サクセストラップと呼ばれるこの転落現象を引き起こす原因は「慣性」だ。成功している組織は、既存事業をさらに成長させるための戦略を立て、具体的に取り組むべきことを設定し、それを達成するための人材の採用・育成方法、組織構造、組織文化を構築し、維持している。こうした統制の取れたシステム、つまり組織アラインメントが確立されているからこそ、成功できたわけだ。しかし、破壊的イノベーションによる急激な環境変化に直面したときには、逆にこれが仇になる。今の組織アラインメントがそのまま自走しようとするので、変わろうにも変われないのだ。自社の成功の犠牲になるといってもいい。
両利きの経営=深化+探索

サクセストラップを退け長期的に成長し続けるためのアプローチが、両利きの経営だ。「両利き」とは、「深化」と「探索」の二刀流を意味する。つまり組織は、すでに成功している既存事業においては漸進的な改善やコスト削減を進める(=深化)。同時に、全く異なる新規事業を興し破壊的イノベーションを生むための努力を続ける必要がある(=探索)。両利きの経営の旗振り役を担うのは、もちろんリーダーである。