コンテクスト・マネジメント

個を活かし、経営の質を高める
未読
コンテクスト・マネジメント
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個を活かし、経営の質を高める
未読
コンテクスト・マネジメント
出版社
定価
3,520円(税込)
出版日
2023年09月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

大企業には、次世代の経営を担う人材を育成するための研修プログラムがある。経営層との対話の機会が用意され、企業の哲学や信念を引き継ぎ、さらに次の世代へとバトンパスしていく。しかし現場で日々仕事をする社員にとって「経営」は経営層の仕事と感じるものだし、話を聞くだけではそれが一体何を指すのかわからないのも無理はない。組織変更、新たな人事制度といった断片的な改善を目にしても、その背後にある経営者の意図を汲み取ることは困難だ。

本書には「経営は人を通じて事をなすこと」とある。そして「人がつくり出すプロセス」こそ、経営の質を左右するという考えを軸に据える。そのプロセスに影響を与える、経営者の意図によってつくり出される環境や仕組みを「コンテクスト」と呼び、予算策定システムから行動規範まで、そのすべてを「コンテクスト・マネジメント」の対象とする。

周知の通り、どの企業でも経営者は多忙だ。その中で数人の役員がコンテクストをつくり、魂を吹き込み、運営しなくてはならない。だからこそ、ミドルマネジャーや現場リーダーが「コンテクスト・マネジメント」を学び、実践することは、大きな支えとなる。本書が出版され、広く届けられているのは「1人ではできないことを成し遂げるために組織がある」からだ。誰もが、経営者リーダーとなる志ある人々であるために。この講義録を開き、日本企業の経営を「そこそこ」から「卓越した経営」へと変えていこう。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

野田智義(のだ ともよし)
大学院大学至善館 理事長・学長。特定非営利活動法人アイ・エス・エル(ISL)創設者。1983年東京大学法学部卒、日本興業銀行入行。その後渡米し、マサチューセッツ工科大学(MIT)より経営修士号(MBA)、ハーバード大学より経営学博士号(DBA)を取得。ロンドン大学ビジネススクール助教授、インシアード経営大学院(フランス)助教授を経て帰国。既存のMBA教育に飽き足らず、2001年、財界トップ等120名の支援を得て独自の教育機関ISL(Institute for Strategic Leadership)を創設。大企業の経営幹部、社会起業家等約1600名を輩出。2018年に、ISLを母体に至善館を開校し現在に至る。専攻は経営政策、組織戦略、リーダーシップ論で、インシアード在席中には3年連続で最優秀教授賞を受賞。著書に『リーダーシップの旅』(金井壽宏氏と共著、光文社新書)、至善館での講義を書籍化した、「至善館講義シリーズ」第一弾の『経営リーダーのための社会システム論』(宮台真司氏との共著、光文社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    競争優位は「組織プロセス」から生まれる。よい組織プロセスを形成すべく、経営陣の意図によって作り出される社内の環境や仕組みが「企業コンテクスト」だ。
  • 要点
    2
    経営リーダーは「戦略」「経営管理」「組織行動」の3つのコンテクストを設計・構築・運営して経営の舵取りをする。
  • 要点
    3
    「内部資本市場」「中枢神経」「インキュベーター」の3つの経営アジェンダの同時追求で生じる葛藤は不可避だ。マネジャーが新たな役割と任務を果たせるよう、経営者リーダーはかれらを支える「組織行動のコンテクスト」を率先垂範しなくてはならない。

要約

経営の質

「経営者リーダー」の使命
AndreyPopov/gettyimages

「経営者リーダー」の仕事とは何だろうか。著者が設立した大学院大学至善館の経営政策の講義では、経営者リーダーの役割と責任、使命を次のように定義する。

①環境と自社の戦略や組織の適合の実現

②正解が見えない中での意思決定

③「コンテクスト(文脈)のマネジメント」を通じた組織能力の構築

このうち著者が着目したのは、人の力を最大限に活かす第三の使命、組織能力である。その系統立った教科書もまだない。組織能力とは「人の活動の集合体がつくり出す時系列プロセス」が生み出すものであり、経営者リーダーにはそのプロセスをうまく機能させる役割がある。

組織は、1人ではできないことを可能にする協働体であると同時に、誤解やエゴイズム、政治など「1人でいるときには考えられないような困難に直面する」厄介なものでもある。この本質に、経営者リーダーが対峙すべき挑戦と苦悩が隠されている。

組織は「知恵の貯蔵庫」であり、それを使って「『組織ならでは』のイノベーション」を起こすことが経営だ。そして経営者リーダーの役割は、「経営の質」を向上させることである。経営の質とは、「人と組織の力をよりよく引き出すもの」を指す。社員が生き生きと働き、新しい商品やサービスが次から次へと開発される会社と、そうではない会社の間にあるのが経営の質の違いだ。その根底には「組織能力」の差がある。

【必読ポイント!】 組織の意思決定と行動のメカニズム

競争優位を生む「組織プロセス」

経営者の挑戦としてまず話題にのぼりやすいのが、戦略分析論だ。ホンダの事例から考えてみよう。

ホンダによる1950年代末の北米オートバイ市場への進出と成功は、議論の的になってきた。当時オートバイは黒い革ジャケットを着たアウトローの男性の乗り物というイメージがあり、大型バイクが市場を占めていた。そこにホンダは50ccのスーパーカブで参入する。「日々の暮らしに密着した手軽な乗り物」という価値をアピールし、全米規模の大ヒットとなった。

BCGなどの戦略分析では、ホンダ飛躍の背景には創業時からの「戦略的意図」に基づく合理性があったと解説される。しかし、ホンダの経営幹部へのインタビューによると、本田宗一郎は気まぐれであり、北米進出も「計算違い、思わぬ偶然、組織的な学習」の連続だったという。たとえば、社用車の代わりに社員が使っていたスーパーカブが現地の人々の目に留まり、百貨店シアーズからの問い合わせがあった、といった具合だ。

伝統的な戦略分析の多くは「全知全能の戦略家」を想定したトップダウンの「計画的戦略」であり、「後づけの要素」も含まれる。そもそも、組織における実際の意思決定は、複数のレイヤーの多様な人たちが協働するなかで行われ、現場での試行錯誤やセレンディピティに彩られている。戦略分析は、あくまで仮説立案とその分析のプロセスが重要なのであり、成功を約束するものではないのだ。

ではホンダの競争優位はどこにあったのだろうか。ホンダのトップはアメリカという大市場に夢を賭け、現場はトップに忖度せず、若手の挑戦を下支えする組織だった。成功要因は、そうした「組織能力」を生み出す組織プロセスにあるのだ。

こうした、トップの明確な意図がつくり出す社内の環境や仕組みを著者は「企業コンテクスト」と呼ぶ。

コンテクスト・マネジメントとは
Andrii Yalanskyi/gettyimages

著者の恩師であるジョー・バウワー氏は、組織における意思決定と行動のフレームワークとして「コンテクスト・マネジメント」を提唱している。現場、トップとそれらをつなぐミドルの3層構造を想定し、新規事業に参入するケースで考えてみよう。

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要約公開日 2024.01.27
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