問うとはどういうことか

人間的に生きるための思考のレッスン
未読
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問うとはどういうことか
出版社
定価
1,760円(税込)
出版日
2023年08月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

物事を深く考えるためには、問う力が不可欠だ。相手に対して、世の中に対して、ときには自分に対して。それぞれに適切な問いをすることで、私たちの思考はどんどん深まっていく。

『問うとはどういうことか』は、複数の人が共同で思考を作り上げる「共創哲学」というジャンルを追究する梶谷真司氏によって書かれた一冊だ。本書が印象深いのは、「問うための方法」など具体的なスキルを伝えるだけではなく、人々がなぜ問うことを避けるのか、問う目的は何なのかという、問いの根元的な部分を探求している点である。そのため、本書は「聞く力」や「質問力」のようなビジネススキルを超えた、生きるための哲学を学べる書籍と言える。

と書くと、もしかしたら哲学的な話題が多く、とっつきにくいと思うかもしれないが、本書は身近な言葉や具体例を交え、理解しやすい形で解説されている。これは、私たちが意識している以上に、問うことは日常のあらゆるところに潜んでいるからだ。問い方から入ることで、哲学自体があらゆる人に関係するものであることも見えてくる。

本書は、問うことに慣れていない多くの人に手にとっていただきたい一冊だ。なかでも、これまで「聞く」「問う」ことに関するスキルアップ本を読んできたけれど、「どうも、うまくいかないな」「身についていない感じがするな」と思ってきた人におすすめしたい。問いの根本部分を知ることで、蓄えてきた知識への理解が深まり、より自分の血肉になる。そうした相乗効果も期待できるような内容が、本書には詰まっている。

ライター画像
藤平泰徳

著者

梶谷真司(かじたに しんじ)
東京大学大学院総合文化研究科教授。京都大学大学院人間・環境学研究科修了。専門は哲学、医療史、比較文化。近年は学校や企業、地域コミュニティなどで「共に考える場」を作る活動を行い、いろんな人が共同で思考を作り上げていく「共創哲学」という新しいジャンルを追求している。近著に『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』(幻冬舎)、『書くとはどういうことか 人生を変える文章教室』(飛鳥新社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    私たちは問うことをためらいがちである。それは「問うのが歓迎されない」「問うのが攻撃的だと感じられる」「問いは与えられるものだという思い込みがある」といった理由のためだ。
  • 要点
    2
    何のために問うのか、何を問うのか、どのように問うのか、適切に理解することが重要となる。
  • 要点
    3
    特に何のために問うのかは、問うことが真価を発揮する意味で大切だ。問う目的には知ること、理解すること、考えること、自由になることが挙げられる。

要約

「問う」ことが問題になる理由

問うのが難しい「5つの理由」
skynesher/gettyimages

生きていると知らないことと出くわすものだ。私たちは、それらすべてに対して問うことはしない。むしろ問うことをためらったり、抵抗を感じたりする。その理由として、著者は以下の5つの理由を挙げている。

まず、問うのが「歓迎されない」ためである。たとえば、学校で「先生、これはどういう意味ですか?」と問うと、「自分で考えなさい」と一蹴される。会社でも、質問したら「そんなこともわからないのか!」と怒られる。そこまではいかなくても煙たがられる場面は多い。「いい質問」しか許されない。

2つ目の理由は、問うのが「攻撃的だ」と感じられることである。学校の先生が「何で宿題をやってこないんだ?」、恋人が「どうして連絡くれなかったの?」と聞くとき、それは不満や抗議を表している。どのように答えても、さらに責められる可能性がある。問いが攻撃的であるならば、自分も相手にしないようにしたい。そう思う人は多いだろう。

3つ目の理由は、問いは「与えられるものだ」という思い込みがあることだ。学校では、教科書やテストに出題されている問いに「正解」を出すことが常に求められる。相手の意図をふまえた答えを出さなくてはならない。そうして「空気を読める人間かどうか」がいつも試されている。

4つ目の理由は、問うことが「面倒」だからだ。相手に問えば、その人に不快感を与えていないか心配になる。答えのない問題について問えば、余計なことも考えなければならなくなる。自分に問いを向ければ、「なぜ自分はこうなのか」としばしばつらい気持ちになる。だから、最初から問わなければ平和で、楽に過ごせると考える。

そして最後は、問うのが「怖い」という理由である。知的な人、学歴の高い人ほど、わかったふりをして問いを恐れる。答えが出ない問いは「そんなことを考えても仕方ない」と忌避されるか、「そんなに悩まなくていい」と諭される。

そうした経験から、疑問をもつのを自らやめてしまうのだ。

【必読ポイント!】 何のために問うのか

知るために問う

問うのが難しい理由は多い。とはいえ、私たちはまったく問わないわけではない。好奇心や違和感を表現したいという欲求があるからだ。そこで何のために問うのか、何を問うのか、どのように問うのか、適切に理解することが重要となる。

問うことが真価を発揮するのは、目的と結びついているときである。その目的には、知ること、理解すること、考えること、自由になることが挙げられる。

日常生活では何でもかんでも知っている必要はないが、「新しいこと」と「正しいこと」を知るために問うことは重要だ。

新しいことを知ることは、知識を増やすだけでなく、自分の世界を広げ、楽しみを増やしたり失敗を少なくしたりできる。関心があることを増やせれば、新たな可能性も拡げていける。大学の選択や就職活動など、人生の重要な決断において、さまざまな大学や会社について詳しく調べることで、よりよい選択ができるだろう。知ろうとしなければ、自分と異なった価値観に触れることもできない。

正しいことを知ると、他者や自分についてより深く理解できる。「知っている」と思っていたことを改めて疑う。通説やうわさ話が孕む誤りに目を向け、「本当にそうなのか?」と問うことは、差別や誹謗中傷につながらないために重要なのだ。

理解するために問う

新聞記事を読んでいて、次のような一文を見かけるとしよう。

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要約公開日 2024.01.20
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