おとな六法

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おとな六法
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2023年10月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「人の唐揚げに勝手にレモンをかけたら犯罪?」

こう質問されて、あなたは正しく答えることができるだろうか。

私たちは法治国家に住んでいる。法律に従って生活し、法律を犯したら刑罰を受けることを当然のこととして受け入れながら日常を送っている。しかし、その法律自体をどれほど知っているだろうか。六法全書を開いたことはおろか、本そのものを見たこともない人は多いはずだ。

本書によれば、法律の原則は「法の不知は罰する」であるらしい。それは、「知らなかった」は罪を逃れる理由にならないということだ。私たちは、私たちが知らぬ間に従っている、もしかしたらうっかり破っているかもしれない法律というものについて、もっと知るべきなのではないか。そこで本書の出番である。

「法律を知る」といっても、身構える必要はない。本書はTikTokやYouTubeで大人気の動画を書籍化したものだ。現役弁護士である岡野武志氏が、寄せられた素朴な疑問に答えていくという形式なので、大人から子どもまで誰もが楽しめる内容になっている。

「波平さん(サザエさんのキャラクター)の1本の髪の毛を抜くのは犯罪ですか?」「南極で犯罪が起きたらどこの国の法律で裁かれますか?」といった、言われてみると気になってしょうがなくなる質問が満載だ。楽しみながら法律を知るのにもってこいである。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

岡野武志(おかの たけし)
アトム法律事務所 代表弁護士 第二東京弁護士会所属。高卒フリーター生活10年を経て、司法試験に合格。アトム法律事務所を創業し、グループ全国12拠点の法律事務所に成長させる。その後、2019年から法律をテーマにした動画配信を開始し、YouTube国内ショート動画クリエイターランキング1位(2021年)、TikTok Creator Award 教育部門最優秀賞を3年連続で受賞(2021年、2022年、2023年)。現在のYouTubeチャンネル登録者数は159万人(2024年1月時点)。著書に『人生逆転最強メソッド』(KADOKAWA)がある。

アトム法律事務所
2008年、岡野武志によって東京永田町に設立された法律事務所。2023年9月現在、グループ全国12拠点を展開し、交通事故や刑事事件などの都市型トラブルを主に取り扱っている。一部、無料相談にも対応している。

本書の要点

  • 要点
    1
    法律の原則は「法の不知は罰する」である。つまり、法律を知らなかったことを理由に罪を逃れることはできない。
  • 要点
    2
    法律は内容を正確に規定しなければならないために、文章が複雑で難解である。そのため、一般市民が法律を正しく知り、理解することは現実的に難しい。
  • 要点
    3
    日本に住む誰もが法律に親しみを持ち、トラブルのない生活を送れるようになるための知識について、わかりやすい質問を素材に解説する。

要約

法律を知ろう

「知らなかった」では済まされない

法律の世界には「法の不知は罰する」という格言がある。これは、「法律を知らなかったことを理由に、罪を免れることはできないという法律の原則」である。しかし、内容を正確に規定しなければならないために、法律の文章は複雑、難解である。そのため、普通に生活する一般市民が法律を正しく知り、理解することはなかなか難しいのが現実だ。

そこで、「日本に住む誰もが法律に親しみを持ち、法律的なトラブルのない生活を送れるよう」動画配信を始めたのがアトム法律事務所だ。本書には、そのアトム法律事務所の4年間の動画配信と、岡野武志氏の15年間の弁護士経験が凝縮されている。

フィクションの疑問

コナン君が使っているキック力増強シューズは犯罪ですか?
Halfpoint/gettyimages

人気作品『名探偵コナン』の主人公・江戸川コナンは、「キック力増強シューズ」を着用している。作中では、このシューズを使用して蹴ったボールが石の柱を割る描写もあり、相当な威力である。これを使用することは犯罪だろうか。

「キック力増強シューズ」はピストルなどと同じ「人を死亡させる可能性が高い武器」となり得る。したがって、このシューズを使用して人に向かってボールを蹴った場合、殺人罪、少なくとも殺人未遂罪が成立する。

はっきり「相手を殺す」という意思を持っていなくても、「相手が死ぬ可能性があるけど仕方がない」というように、「相手が死ぬ結果を認識・認容して行動している」ならば、殺人罪もしくは殺人未遂罪が成立する。

コナンが「犯人逮捕のために必要だった」と主張しても、「人を死亡させる可能性が高い武器」であるシューズの使用は、「逮捕のために必要かつ相当な範囲を明らかに超えている」ので罪の成否には影響を与えない。

ウルトラマンが怪獣と戦う中で街を壊すのは犯罪ですか?

巨大なヒーローであるウルトラマンは、怪獣と戦う際にかなり街を破壊することがある。これは犯罪だろうか。

問われる可能性があるのは建造物損壊罪だ。これは、「他人の建物などをわざと壊したときに問われる罪」である。

ただし、緊急避難の要件を満たす場合は、街の破壊も「社会的に相当で、違法ではない」と判断される。緊急避難とは、「差し迫った危険を避けるためにやむを得ず何かを壊したり誰かをケガさせたりした場合、被害の程度によっては責任が小さくなったり、責任を問われなくなったりすること」を指す。

ウルトラマンの場合、街を壊すのは怪獣から人々を守るためには仕方のない行為だといえる。しかも、「ウルトラマンが戦わなかった場合の怪獣による被害の方が大きくなる」と予想される。したがって、ウルトラマンが街を壊す行為は緊急避難の要件を満たし、無罪となる。

ただし、ウルトラマンが防衛の程度を超えて積極的に怪獣を攻撃することは、「過剰防衛として違法と判断される可能性がある」。その場合、あとで怪獣の保護者から損害賠償を請求されれば、「ウルトラマンには多額の支払い義務が生じる」。くれぐれもやりすぎてはいけない。

【必読ポイント!】 職場の疑問

会社は従業員の有休申請を却下してもいい?

有給休暇を取得しようとしても会社側に認められなかった、という話はよく聞く。これは会社の権利なのだろうか。

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要約公開日 2024.02.04
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