笑いのある世界に生まれたということの表紙

笑いのある世界に生まれたということ


本書の要点

  • 「笑い」には、人工的な薬と同様の効能がある脳内ホルモンを分泌する機能がある。「笑い」は過酷な現実を生き延びるための「Happy Pills」であり、人々はお金を払ってでも笑いたいのだ。

  • 「笑い」が起こるセオリーには、「緊張と緩和」理論・「裏切り」の理論・「共感」の理論の3つがある。セオリーに則って芸人が「イジる」ことでおいしくなるが、下手をすると「イジメ」に見えるおそれがある。

  • お笑い芸人は、かつて他に職業的選択肢がない人が飛び込む場所であったように思われるが、今は頭の良い人たちが芸人を目指すようになり、学歴も偏差値も関係なくなっている。

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お金を払ってでも笑いたい

「笑い」はHappy Pills

中野氏はまず、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2023」のメインプログラムのひとつである「Happy Pills」という展示を紹介する。これは写真家のパオロ・ウッズとジャーナリストのアルノー・ロベールが世界各地を回り、現代人がいかに薬を使っているかを調べた成果である。中野氏が特に印象的に感じたのが、「世界幸福度ランキング」の上位と「抗うつ剤の最多消費国」ランキングの相関をとった表だ。これを見ると、人々が幸せに暮らしている国では、同時に抗うつ剤が大量に消費されていることがわかる。その意味を考えるとぞっとすると中野氏は語る。そういう薬を服用しないと人は幸せになれないというわけではない。人の脳内ホルモンにあるベータエンドルフィンというホルモンは、幸福感をもたらすと同時に、モルヒネの数倍強いといわれる鎮静作用を持っている。この分泌を促す仕組みのひとつに、「笑い」がある。笑うと幸せを感じられ、痛みが軽くなり、気持ちが楽になる。それを経験的に知っているからこそ、人は昔からお金を払ってでも「笑い」の場を求めてきたのだろう。「笑い」は過酷な現実を生き延びるための「Happy Pills」たりうる。

笑いを読み解く能力がある

sanjagrujic/gettyimages

お笑いは、人間社会のしんどい部分を拾ってネタにする方がやりやすいのか。中野氏がそう問いかけると、兼近氏はそれを肯定しつつも、観客サイドの情報を読み解く力、リテラシーが高くなければ笑えないという側面があると語り出す。

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要約公開日 2024.03.07
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2024 中野信子 All Rights Reserved. <br>Copyright © 2024 兼近大樹 All Rights Reserved. <br>本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は中野信子、兼近大樹、株式会社フライヤーに帰属し、事前に中野信子、兼近大樹、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。

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