罰ゲーム化する管理職

バグだらけの職場の修正法
未読
罰ゲーム化する管理職
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罰ゲーム化する管理職
ジャンル
出版社
集英社インターナショナル

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出版日
2024年02月07日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「毎日へとへとになるまで働いている」「連日、深夜まで残業」……こうした声を聞いたとき、あなたはどんなビジネスパーソンを想像するだろう。多くの人は、仕事を押し付けられた若い社員を思い浮かべるのではないだろうか。しかし、本書のタイトルを見ればわかる通り、これらはいま管理職に起きていることだ。そして、そんな上司をすぐそばで見ているメンバー層は管理職になりたがらない。これを著者の小林祐児氏は「管理職の罰ゲーム化」と呼んでいる。

働き方改革が進む裏で、管理職の激務っぷりは悪化の一途をたどっていた。社会からは共感されず、部下とのギャップに苦しみ、「それが管理職の仕事だから」「自分も若い頃はそうだったよ」「修羅場を乗り越えてこそ成長するはず」と考える経営者や人事部門とすれ違う――。こうした管理職の悲劇が、本書では生々しく綴られている。

本書の最大の強みは、やはりその科学的な視点だろう。本書で論じられる「罰ゲーム」は、著者が丁寧に集めたデータと現場の声によって支えられている。読んでみれば、日本企業の置かれている現状に強い危機感を持つはずだ。そして、「いったいどうすればいいのだろう」と、経営者ならずとも頭を悩ませることになるかもしれない。

本書では、「罰ゲーム化」を修正する4つのアプローチが明確に提示される。いままさに悩み苦しんでいる管理職、「管理職にはなりたくない」と怯えるメンバー、そして「管理職研修を実施すれば改善するだろう」と楽観的に捉えている経営者や人事部門をはじめ、多くのビジネスパーソンに読んでほしい一冊だ。

著者

小林祐児(こばやし ゆうじ)
パーソル総合研究所上席主任研究員。上智大学大学院総合人間科学研究科社会学専攻博士前期課程修了。NHK放送文化研究所、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は人的資源管理論・理論社会学。単著に『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎新書)、『リスキングは経営課題』(光文社新書)、共著に『残業学』(光文社新書)、『働くみんなの必修講義 転職学』(KADOKAWA)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    働き手からすれば、もはや管理職の仕事は「罰ゲーム」に近い。
  • 要点
    2
    経営者や人事部門は「管理職の負荷が高いのは、管理職自身のマネジメント・スキルが足りないからだ」という「筋トレ発想」に陥り、管理職研修に頼ろうとしている。だが、これは逆効果だ。
  • 要点
    3
    管理職の「罰ゲーム化」を修正するためには、フォロワーシップ・アプローチ、ワークシェアリング・アプローチ、ネットワーク・アプローチ、キャリア・アプローチの4つが効果的だ。

要約

管理職の「罰ゲーム化」

誰もやりたくない管理職

今、管理職として働くことは「罰ゲーム」と化しつつある。

「朝から晩まで会議ばかりで、夜からしか自分の仕事ができない」

「メンタルヘルスの不調で、常に部下が欠けている状態で働いている」

……こうした課題が次から次へと湧いてきて、管理職の心身をすり減らす。メンバーはそんな上司を横目で見て、管理職に就くことにますます魅力を感じなくなる――。

この問題は深刻だ。管理職ポストの後継者不足、イノベーション不足、部下育成不足、管理者本人のストレス、自殺という悲劇に至るまで、管理職の「罰ゲーム化」の影響はもはや経営・組織の問題の域を超え、「社会課題」と呼ぶべき事態になっている。

低下する管理職の魅力
recep-bg/gettyimages

パーソル総合研究所の国際調査によると、日本における「管理職になりたいメンバー層の割合」は21.4%と、14カ国のうち断トツの最下位となっている。同じく管理職意欲の男女比率を見ても、女性の意欲の低さは断トツ最下位だ。

年代ごとの管理職意欲に目を向けると、日本の異常さがさらに際立つ。日本だけ40代で一気に管理職意欲が下がるのだ。つまり、他国では何歳になっても管理職を目指し続ける人が多い一方で、日本では、40代までに管理職になれなかった人は「諦める」のである。

時系列でも確認してみよう。日本生産性本部の調査を見ると、平成最後の10年間のデータにおいて、昇進について「どうでもよい」という回答だけが男女ともに高まっている。同様に、博報堂生活総合研究所の調査データでは、「会社の中で出世したい」という設問に肯定的な回答をする人は1998年の19.1%から徐々に低下し、2022年には13.2%だ。

これらのデータを総合すると、日本では、管理職への出世に魅力を感じる人が少なく、この20~30年ほどでその傾向がより顕著になっているといえるだろう。

管理職の罰ゲーム化が進めば、次世代のリーダーは育ちにくくなる。HR総研の企業調査では、どの企業規模でも、直面している課題の断トツは「次世代リーダー育成」だ。

さらにここ数年、優秀な若手が安定した大手企業から去り、スタートアップ企業に流れる傾向にある。20年も会社に奉仕した挙げ句に大した給与も貰えずに苦労ばかりする大手企業より、同年代の仲間たちと切磋琢磨できるスタートアップ企業のほうが魅力的に思えるのも無理はない。

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要約公開日 2024.06.11
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