職場を腐らせる人たち

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職場を腐らせる人たち
出版社
出版日
2024年03月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「上司も同僚もいい人ばかり。仕事は大変だけど、職場の人間関係で悩むことはほとんどない」――そう言える人は相当幸せだ。多くの職場には、程度の差こそあれ、「職場を腐らせる人」がいる。

本書の著者、片田珠美氏は精神科医として、7000人以上を診察してきた。そんな著者によると、精神的な不安やイライラの背後には、たいてい人間関係の悩みが潜んでいるという。特に多いのは「職場を腐らせる人」に関係する悩みだそうだ。

本書の第1章では、著者の豊富な臨床例をもとに「職場を腐らせる人」の事例が15種類紹介される。根性論を持ち込む上司、過大なノルマを部下に押しつける上司、言われたことしかしない若手社員、あれこれケチをつける人、いつも相手を見下す人……きっと誰しも、これまで周囲にいた「職場を腐らせる人」たちの顔が浮かぶことだろう。

本書の特徴の一つは、「職場を腐らせる人」たちの行動原理が、精神科医の視点から解説されることだ。要約者は、かつて自分を苦しめた人たちの行動原理の一端を知り、「そういうことだったのか!」と目からウロコが落ちる思いだった。当時の自分が本書を読んだら、少し気持ちが楽になっていただろうと思う。

あなたの周囲に「職場を腐らせる人」はいるだろうか。「いる」人も、「今はいない」人も、「まだ出会ったことがない」人も、とにかく本書に目を通してほしい。あなたの身を守れるのはあなただけだ。

著者

片田珠美(かただ たまみ)
精神科医。広島県生まれ。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。2003年度~2016年度、京都大学非常勤講師。臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。著書に27万部ベストセラー『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    根性論を持ち込む上司は、目の前の現実を受け入れられない、現実否認の傾向が強い。そういう人に対しては、具体的な数字や根拠を示し、現実を見てもらうべきだ。
  • 要点
    2
    職場を腐らせる人を変えるのはほとんど不可能に近い。「根気強く言い聞かせれば改心してくれるだろう」という期待は捨て、「どうすれば実害を少なくできるか」を考えるべきだ。
  • 要点
    3
    職場を腐らせる人の実害を少なくするためには、まず「気づくこと」が重要だ。重苦しい雰囲気、不和やもめごと、心身の不調の増加、沈滞ムード、疲弊がヒントになる。

要約

職場を腐らせる人たちの事例

根性論を持ち込む上司

ある食品会社で営業部長を務める50代の男性は、「営業で大切なのは気合と根性」と断言して憚らない。自分がかつて気合と根性で営業成績をあげた話を繰り返しては、現実離れした目標を達成させようとする。

根性論を持ち込む上司は「みんながやる気を出せば、すべてがうまくいく」と考えがちだ。こうした思考回路の根底においては、しばしば「すべてがうまくいけばいいのに」という願望と「すべてがうまくいく」という現実が混同されている。これを精神医学では「幻想的願望充足」と呼ぶ。このような人は、目の前の現実を受け入れられない、現実否認の傾向が強いのだろう。過去の栄光をしきりに持ち出すのも、現実を直視したくないからだと思われる。

現実否認の傾向の強い人には、具体的な数字や根拠とともに「業界全体を見ても、こうなっている」「数字が落ちているのは長期的な傾向」などと示し、現実を見てもらうべきだ。決して「あなたのやり方は現実的ではない」「あなたは現実を見ていない」などと言ってはいけない。

八つ当たり屋
alvarez/gettyimages

ある中小企業では、30代の女性社員が突然、20代の女性社員を怒鳴りつけることがあるそうだ。怒鳴りつける内容は、「この前、頼んでいた仕事はどうなったの。まだできてないの。なんでそんなに遅いの」「あなたが作った書類はミスが多くて、後で修正するのが大変なのよ。もっとちゃんとやってよ」といったものだ。

その女性が怒鳴るのはいつも、社長から叱責された日か、その翌日らしい。怒鳴られて怒りと欲求不満が溜まった結果、自分よりも弱い相手に当たり散らして鬱憤を晴らそうとするのだろう。このケースのように、怒りや欲求不満の原因になった相手に反撃できず、別の対象に矛先を向けることを、精神分析では「置き換え」と呼ぶ。

このケースの問題は、20代の社員が傷つくことだけではない。当たり散らされた20代の社員も、自分よりも弱い立場の相手、後輩や派遣社員、パートタイマー・アルバイトに対して、鬱憤を晴らそうとするだろう。その対象にされた側も、自分より弱い相手に当たり散らす――。「置き換え」による八つ当たりの連鎖が起こるのだ。

八つ当たりの連鎖が起きている職場では、仕事の能率も業績も下がる。そして、それに激怒したトップが部下を怒鳴りつけ、怒鳴りつけられた部下は自分より弱い相手に八つ当たりをして……と、悪循環に陥っていく。

いつも相手を見下す人

ある金融機関の20代の男性行員は、「僕は有名な△△大学の出身でさ」などと、相手を見下すようなことを言う。同僚が辟易していても、本人はまったく気づいていないそうだ。

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要約公開日 2024.08.06
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2024 片田珠美 All Rights Reserved. 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は片田珠美、株式会社フライヤーに帰属し、事前に片田珠美、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
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