AIが答えを出せない 問いの設定力

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AIが答えを出せない 問いの設定力
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2024年04月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

問いの質が人生の質を決める。コーチングの世界で著名なアンソニー・ロビンズが残した言葉といわれている。この言葉にこそ著者の思いが集約されているのではなかろうか。

では、良質な人生に向けて、筋の良い問いを立てるためにはどうすればよいか。要約者は、本書で紹介されている2つの方法に特に魅力を感じた。ビジネスシーンで役立つような実践的な問いと、自分と向き合うための哲学的な問いである。

前者ではさまざまなフレームワークを用いる。適切な順番で考えることや、広げる・深めるなどの切り口で深掘りすることなどである。「問い」の形で相手と接しながら回答の精度を高め、クリティカルな解決策を導ける。自分ひとりで机上でただ考えるだけではなく、周囲とコラボレーションしながら臨機応変に物事を進めるイメージにつながった。

後者については、そもそもAIが答えを出せないタイプのものである。「自分は何がしたいのか」といった問いは、自分自身が決めなくてはならないからである。こうした哲学的な問いは、AI登場後の変化が激しい時代だからこそ向き合うべき問いといえよう。本書では、さまざまな視点から自分自身に問うべき質問が掲載されている。ページをめくるうちに、人生を変える問いに出合えるかもしれない。

問いのあり方自体を変えようとしている生成AIが身近である人はもとより、仕事のキャリア展望、人生設計に悩むすべての人にすすめたい。

ライター画像
霧島大和

著者

鳥潟幸志(とりがた こうじ)
株式会社グロービス マネジング・ディレクター
GLOBIS 学び放題 事業リーダー
埼玉大学教育学部卒業。サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタル・PR会社のビルコム株式会社の創業に参画。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービスに参画後は、社内のEdTech推進部門にて「GLOBIS 学び放題」の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系等のプログラムの講師や、大手企業での新規事業立案を目的にしたコンサルティングセッションの講師としてファシリテーションを行う。

本書の要点

  • 要点
    1
    生成AI登場後の時代を生き抜くためのスキルの1つに、問いの設定力がある。
  • 要点
    2
    問いには、生成AIが「答えやすい問い」と「答えにくい問い」がある。
  • 要点
    3
    質の良い問いの設定は、「自分らしさ」がベースとなる。過去、現在、未来の視点から自分自身と向き合うことで、「自分らしさ」を再発見できる。

要約

AFTER AIを生き抜くための能力

求められる能力の変化
sesame/gettyimages

ChatGPTをはじめとした生成AIは2022年以降急速に広がり、単純な思考作業からクリエイティブな領域に至るまでキカイへのシフトを起こしている。

BEFORE AIではあくまで人間が“考える”主体であり、テクノロジーは効率化を支援する補助的な存在であった。AFTER AIでは「テクノロジーが人間の“考える”作業の一部を代替していく状態」に移行する。BEFORE AIとAFTER AIでは、ビジネスパーソンに求められる能力について4つの変化が起きたという。

第1は「正解の発見力」から「問いの設定力」への変化である。かつては、コスト削減や営業目標の達成など、“正解”の存在する日々の業務について、組織や上司が設定した課題や目的を正確かつ迅速に解決することが評価された。しかし、変化が激しく、課題の特定さえも難しい現状では、与えられた課題を解決する能力自体がキカイに代替されてしまうかもしれない。「そもそも何を解決するべきなのか」「何を理想とするべきなのか」という問いを自分で設定できる能力が必要となっている。

第2は「判断を仰ぐ力」から「決める力」への変化である。部下の権限を超える範囲の仕事については、適切な情報収集と選択肢の準備をしてから、経験や知識を持つ上司に相談して最終的な判断を仰ぐのが一般的だろう。しかし、組織規模が大きくなればマネジャー職が現場を正しく把握するのは困難になるし、上司に指示を仰いでいると対応スピードが遅くなるケースも増えている。生成AIによって複数の選択肢を瞬時に得られるいま、自分で観察し、状況判断を重ねて意思決定しながら、自分の責任のもとで行動していける人材が求められている。

第3は「フォロワーシップ」から「リーダーシップ」への変化である。カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が1992年に紹介したフォロワーシップのうち、組織のために独自に考え、建設的な批判精神をもって行動する「模範的フォロワー」は、AFTER AIにおいても重要である。ただし、あらゆるビジネスパーソンにリーダーシップが必要となる時代に突入している。変化スピードが速い組織では、リーダーだけでなくスタッフ自身も状況判断して周囲を動かせたほうがよい。それに、生成AIがいかに論理的に正しい場合でも、人間は魅力あるリーダーの言葉に共感するものである。

自分らしくあること

第4は「集団の“らしさ”に沿って生きる力」から「『自分らしさ』に沿って生きる力」への変化である。これは、先ほど挙げた3つの変化に大きな影響を与える土台になる。

BEFORE AIでは組織のルールやプロセスに従順で、それに基づいて課題を解決できる人物が評価された。しかし、ここで重視されている集団の“らしさ”が硬直化していくと、それを守ること自体が優先されて、顧客や従業員のメリットが犠牲となってしまう。その結果、道徳的・倫理的に誤っていると知りつつ、組織の「ものさし」に従って過ちを犯すことにもつながるのである。

「人生を評価するものさし」は大切である。それは、「他者から与えられるものではなく、自分自身で見出していく必要がある」。

なぜ「問い」が必要か

AIが答えにくい問い

生成AIには「答えやすい問い」と「答えにくい問い」があり、著者はそれを4つの観点で分けている。

選択肢があるものか意思を問うものかの視点では、前者はAIの得意分野でありスピーディかつ網羅的に答えられる。一方、自分で決める必要がある「私はどうしたいか」といった種類の問いには当然答えられない。

時間軸の視点では、過去の膨大なテキストデータを読み込んでいる生成AIにとって、過去の情報について問うものは対処しやすい。逆に、現時点での状況を踏まえて判断していくことは、いまの技術レベルでは難しい。

理想についての視点では、AIは複数の条件の範囲内で選択肢を提示することに優れている一方で、まったくのゼロから直感的な理想を掲げることは難しい。

そして、論理と情理の視点では、プロンプトに感情についての指定をすることはできても、主体的に読み取った感情を踏まえて柔軟にコミュニケーションを変えることまではできていない。

問いが持つ4つの力
yangwenshuang/gettyimages

日々浮かんでは消える、AIに答えられない「問い」にも向き合うことは、仕事や人間関係、自分の人生にも効果がある。問いは次のような4つの力を秘めているからである。

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要約公開日 2024.09.07
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