あなたを疲れから救う

休養学

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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2024年03月12日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたは忙しい毎日において、束の間の休暇をどのように過ごしているだろうか。休日を迎えるたびにリフレッシュでき、100%充電した状態で次の仕事を迎えられるなら理想的だ。だが、休んでも完全には回復できず、慢性的な疲れを抱えている人が多数派ではないだろうか。映画を観ながらソファでごろごろしたり、ゆっくり寝たりしても、いまいち疲れがとれない……。そんな疲れた現代人に、本書をぜひ読んでほしい。

本書では、「休養学」を提唱する片野秀樹氏が、健康づくりの三大要素である「栄養・運動・休養」のうち、「休養」に焦点を当てている。特に注目したいのは、「休養」を7タイプに分けて解説し、それらを複数組み合わせることで疲労回復効果がアップすると書かれた章だ。この章を読むと、意外な活動も「休養」にあたることがわかるだろう。

片野氏は本書で、「昔と同じ休み方をしていたのでは、疲労がうまくとれないおそれがあるのです」と警鐘を鳴らしている。なぜなら、頭脳労働が中心となった現代では、仕事が終わってからも興奮・緊張状態が続くからだ。コロナ禍以降、オンラインミーティングが中心となったことで、こなせる会議の数が増え、仕事量が増えていることも理由の一つだそうだ。

「しっかり休んでいるつもりなのに、全然疲れがとれない」「短い休暇をうまく使い、しっかり休みたい」という人に、本書を勧めたい。「なぜこんなにも疲れているのか」「どんな休み方をすれば疲れがとれるのか」という問いへの答えが見つかるだろう。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

片野秀樹(かたの ひでき)
博士(医学)、一般社団法人日本リカバリー協会代表理事。株式会社ベネクス執行役員。
東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、東海大学医学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は一般財団法人博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)も務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消やリテラシー向上を目指して啓発活動に取り組んでいる。編著書に『休養学基礎:疲労を防ぐ!健康指導に活かす』(共編著、メディカ出版)。

本書の要点

  • 要点
    1
    疲れをごまかして動き続けると、回復するまで時間がかかるだけでなく、本当に病気になってしまうことがある。疲労を感じたら、思いきって休みをとることが重要だ。
  • 要点
    2
    「自分で決めた」「仕事とは関係ない」「成長できる」「楽しむ余裕がある」の4つの条件がそろった負荷をかけると、あなたにとって理想的な「攻めの休養」がとれる。
  • 要点
    3
    休養には「生理的休養」「心理的休養」「社会的休養」の3種類があり、これらはさらに7タイプに分けられる。7種類の休養を組み合わせることで、疲労回復効果アップが期待できる。

要約

慢性的に疲れている日本人

8割の日本人が疲れている

日本リカバリー協会が就労者10万人を対象に行った調査では、日本人の約8割が疲労を抱えていることがわかった。なお、25年ほど前に厚生省が調査をしたときは、「疲れている」と答えたのは就労者の約6割にとどまっていた。およそ25年で疲れた日本人が大幅に増えていることがわかる。

また2004年から厚生省疲労調査研究班が行った調査では、慢性疲労症候群(生活に支障をきたすような疲労が6カ月以上続く状態)の人々がもたらす経済損失は、約1兆2000億円に上っている(医療費除く)。このような巨額の経済損失が生じるのは、疲れているのに無理をして働き続けることで、本来のパフォーマンスを発揮できず、生産性が下がるからだ。

休養=休息・睡眠?
adamichi/gettyimages

OECDの調査によると、日本人の睡眠時間はOECD加盟国の中で最下位である。一方、日本人の労働時間は年間で1607時間と、意外なことに世界の平均である1752時間よりやや少ない。

またある調査では、「プライベートな時間が増えたら何をしたいですか?」という質問に対し、日本人の回答の第1位は「休息・睡眠」である。一方で、世界的に見ても睡眠時間が短く、労働時間が長い韓国の人たちに同じ質問をすると、回答の第1位は「運動・スポーツ」で、「友人・恋人などと過ごす」「家族と過ごす」などが上位に入っていた。おそらく韓国人は、運動やスポーツをしたり、家族や友人や恋人と過ごしたりすることが休養になると考えているのではないだろうか。

なぜ日本人は疲れているのか

意外と労働時間が短いのに、8割の日本人が疲れているのはなぜか。その原因として著者が考えるのは、「日本人は、休みの日数が多いわりに、ちゃんと休めていないのではないか」「休養の取り方がうまくいっていないのではないか」ということだ。

肉体労働が多かった時代には、一日じゅう体を酷使して疲れるため、夜はしっかり眠れていただろう。一方、頭脳労働が中心の現代においては、仕事が終わってからも興奮・緊張状態が長く続き、日常生活のリズムが狂ってしまいがちである。これが現代人を疲れさせているのだ。

しかも、コロナ禍以降、オンラインでミーティングができるようになり、スケジュールがみっちり詰まるようになった。単純に仕事量が増えただけでなく、移動中に音楽を聴くなど、気分転換をする時間がなくなってしまったのも大きな問題だ。

日本では、休養とは「何もしないこと」「寝ること」だと捉えられがちだ。だが現代においては、単に体を休めたり眠ったりするだけでは、疲れがうまくとれないのである。

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要約公開日 2024.09.24
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