人間関係がうまくいっているときは、充実した日々を送れる。しかし、人間関係が悪くなると毎日が楽しめず、暗い気持ちになってくる。心理学者アドラー博士の言葉を借りれば、「すべての悩みは対人関係の悩みである」のだ。
従来の心理学者は病んだ人たちから「何が問題なのか」を研究していた。一方、幸せな人たちを集めて「何がうまくいくか」を研究したのが、ポジティブ心理学である。2002年に行われた「幸せな人」の研究は驚くべき結果をもたらした。それは、「不幸な人」と「幸せな人」の違いは、よい人間関係があるかどうかだったのである。そして、人間関係はスキルである。つまり、学んで練習することで人間関係は改善し、「幸せな人」になれるのだ。
では、悪い人間関係とはそもそも何なのか。親子関係がギクシャクしている、上司からパワハラにあっている、ママ友と不仲である……など挙げればきりがない。これらは一見、どれも異なるシチュエーションのように思えるが、根本は同じだ。悪い人間関係とは、どの場合も《犠牲者》《迫害者》《救済者》の三者で成立している。一人ひとりが悪いのではなく、関係性が悪いのである。この悪い人間関係は「DDT(The Dreaded Drama Triangle:恐怖のドラマトライアングル)」と呼ばれているが、ここでは、わかりやすく「どろどろトライアングル」と呼ぶことにしよう。
どろどろトライアングルを構成する三者は次のようになる。
《犠牲者》は悲劇の主人公。変わりたくないと考え、責任転嫁や他力本願に陥りがちだ。
《迫害者》は犠牲者の問題の原因とされている。他を攻撃し、統制しようとする。
《救済者》はヒーローになりたがり、相手のことよりも問題解決を優先する。
これをプリンセスものとして有名なシンデレラの話に当てはめると、シンデレラは《犠牲者》、いじわるな継母と姉は《迫害者》、シンデレラを救ってくれる王子様が《救済者》である。継母にいじめられていたシンデレラは、あるとき王子様に救ってもらう、というストーリーだ。だが、よく考えると、王子様が現れなければシンデレラはいつまでたってもつらい環境に置かれることになる。つまり他力本願なのだ。
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