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アドラーに学ぶ部下育成の心理学の表紙

アドラーに学ぶ部下育成の心理学


本書の要点

  • ほめることは、上から目線でコントロールすることと同義である。そうではなく、「横から目線」で主観や感想を伝えよう。それが、アドラー心理学で「勇気づけ」と呼ばれる方法だ。

  • 叱ることは勇気をくじいてしまう。勇気づけながら部下を指導するには、「主観伝達」と「質問」で自発的な思考を促す、何か事例を「誘い水」として挙げ、部下の意見を引き出す、という方法がある。

  • 教えすぎると、部下は自分の考えを持たなくなる。教えずに部下を育てるコツは「支援応需」、つまり、手伝ってほしいという要請があって初めて手を貸すということにある。

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ほめてはいけない

「横から目線」の「勇気づけ」

部下が難易度の高い目標を達成したとする。上司もしくは先輩として、あなたはその部下にどんな言葉をかけるだろうか。

①「よくやった!」とほめる

②「すごいなあ」と感心する

③「チームのためにありがとう」と感謝する

一般的には①の「ほめる」が正解と考えられている。しかし、アドラー心理学ではほめることを否定する。ほめることは「上から目線」の行動であり、「相手の自律心を阻害し、依存型の人間を作る」と考えるからだ。

アドラー心理学では②や③を、①の「ほめる」と明確に区別して、「横から目線」の「勇気づけ」と呼ぶ。

上から目線のコントロールは即刻やめよう

Sergey Nivens/iStock/Thinkstock

自分の会社の社長に「社長、なかなかよく頑張っていますね」などと言うビジネスパーソンはいない。立場が下の者が、上の者をほめることはない。つまり、ほめるということは上下関係をすり込むことにつながっている。「あなたはよく頑張っているね」という言葉の裏側には、「私が上、あなたは下」というメッセージが含まれているのだ。

野菜が大嫌いな子どもがハンバーガーだけを食べ続けていたとしよう。あなたがその子の親ならば、叱ることはあっても、ほめることはないだろう。では、野菜嫌いの子どもがサラダをもりもり食べていたらどうか。きっと、あなたは子どもをほめるだろう。これは、親が子どもを自分が思う通りにコントロールしようとしていることの、ひとつの例だ。いくら、野菜を食べることが健康によくても、子どもは大人のコントロールを嫌がる。親でさえ子どもをコントロールできないのだから、上司が赤の他人である部下をコントロールできないのは当然だ。

成果が上がればほめ、上がらなければ無視する、もしくは叱るといった態度をとる上司は、部下からの信頼を失ってしまう。このようなコントロールは即刻やめよう。上司は部下を常に勇気づけなければならない。

相手が自分の力で課題を解決できるよう支援する

Kesu01/iStock/Thinkstock

ほめていけないならば、どうすれば勇気づけになるのか。先の野菜が嫌いな子どもの例でいえば、子どもが野菜を食べているのを見た時、親がかけるべきなのは、以下のような言葉だ。「ずいぶん、もりもり食べているね」「おいしそうだね」「私もサラダが食べたくなった」。上から目線で子どもを評価せず、代わりに、横から目線で主観や感想を伝えることが、「勇気づけ」である。

勇気づけとは、「相手が自分の力で課題を解決できるように支援すること」だ。上記の事例は上司と部下の関係にもそのまま適用することができる。業績を上げた部下に対して「偉いぞ! よくやった!」とほめるのではなく、「生き生きと仕事をしているね」「チームを助けてくれてありがとう」のように、横から目線で主観や感想、感謝を伝えるのだ。

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叱ってはいけない

常識をくつがえす「叱らない」人材育成

部下が、目標を60%しか達成できなかったとしよう。部下の日ごろの行動には、残念ながらあまり頑張りが見えなかった。そんなとき、上司や先輩として、あなたはどんなふうに声をかけるだろうか。

①「60%じゃだめだ。やり方を変えなくてはならないぞ」と叱る

②叱るとモチベーションが下がるので、あきらめて黙っておく

③「成果は出なかったけれど、あのやり方は良かったね」とプロセスに注目する

④「60%はできたね」とできたところに注目する

アドラー心理学の「勇気づけ」にあたる声かけは、

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要約公開日 2015.02.24
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