人はどう悩むのか
人はどう悩むのか
人はどう悩むのか
出版社
出版日
2024年09月20日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

人はいくつになっても悩みから解放されない。若くても年齢を重ねても、どんな立場にあっても、悩みが尽きないのが悩ましい。

とはいえ、「お母さんがおもちゃを買ってくれない」と悩む大人がいないように、悩みの対象は成長するにつれ変わってくる。今は食事が喉を通らないほど悩んでいることも、10年後にはケロッと忘れて、別のことに頭を悩ませているはずだ。しかし、その最中はそんな未来のことに考えが及ばず、「生きるか死ぬか」というところまで思い詰めてしまうこともある。

本書は、医師で小説家の著者が、人生それぞれの年代における悩みにフォーカスし、精神保健学の知見と自身の経験からアドバイスを講じていく。通常なら、若い頃から徐々に年齢を上げていくところを、本書では老齢期、中高年、成人、青年期、思春期……と遡り、最後は乳幼児期で終わる。今の自分の年代から読みはじめてもいいし、最初からページを進めて「人生の逆回転」を体験するのもいい。いずれにせよ、長い時間軸で見ると、過去か今か未来かの違いだけで、どの悩みも「自分の悩み」であるはずだ。

要約では20代〜60代に相当する中高年、成人(大人)、青年の3つの年代を取り上げた。若い世代には「中高年」といってもピンとこないかもしれないが、「この先、こういうことがあるかもしれない」と、転ばぬ先の杖としてほしい。人生100年時代を健やかに生きるためにも、読んでおきたい一冊だ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

久坂部羊(くさかべ よう)
1955年大阪府生まれ。小説家・医師。大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院の外科および麻酔科にて研修。その後、大阪府立成人病センター(現・大阪国際がんセンター)で麻酔科医、神戸掖済会病院で外科医、在外公館で医務官として勤務。同人誌「VIKING」での活動を経て、『廃用身』(幻冬舎)で2003年に作家デビュー。『祝葬』(講談社)、『MR』(幻冬舎)など著作多数。2014年『悪医』(朝日新聞出版)で第3回日本医療小説大賞を受賞。小説以外の作品として『日本人の死に時』『人間の死に方』(いずれも幻冬舎新書)、『健康の分かれ道』(角川新書)、『人はどう死ぬのか』『人はどう老いるのか』(いずれも講談社新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    中高年は「人生の成熟期」であるのと同時に、「老い」を意識させられる時期でもある。人生の折り返し点に立ち、過去を悔やむこともある。
  • 要点
    2
    25歳~45歳の「成人期前期」は、個人の人生が決定する重要な時期だ。中高年になって人生を後悔するか否かは、この時期の過ごし方にかかっている。
  • 要点
    3
    高校卒業から25歳前後の青年期は、就職と結婚という人生の二大決断を迫られる時期である。この時期に生きる意味を探し、自らのアイデンティティを獲得しなければならない。
  • 要点
    4
    悩みから逃れることはできないが、期待値を下げることで悩みを減らすことはできる。

要約

中高年の心の危機

「老い」を意識しはじめる時期

精神保健学において、中高年とは45歳から65歳くらいまでを指す。経験や知識を積み上げた「人生の成熟期」であると同時に、身体の衰えが徐々に進み「老い」を意識させられる時期でもある。

職業人としても成熟期を迎えるが、過去の経験が時代に合わずマイナスになることもある。また、適応力の低下により、社会変化に対応できないことでストレスを溜め、精神の健康を損ねる危険性もある。

中高年がリストラに遭うと、若手以上に辛い状況に立たされやすい。これまでの実績を反故されたショックに加え、転職の選択肢も狭い。また、不採算部門の切り捨てによる部署異動は、これまでの経験が生かせないことから苦労を強いられる。

この世代は愛社精神が強く、会社に縛られた人生を送ってきた。そのため、いざリストラに直面すると損した気分になりやすい。

現代の中高年は、「自分たちは我慢してきたけど、若者たちは自由に振る舞っている」という「はざかい期」にいる。これをポジティブに受け入れるのは難しいことだ。

昇進うつと上昇停止症候群
LordHenriVoton/gettyimages

中高年になると、職場での立場に差が開いてくる。組織人はポスト争いに巻き込まれ、思うような地位を得られないと自信喪失から精神を病むこともある。

ただ、競争を勝ち抜いても安泰とはいえない。役職が上がるとともに仕事や責任の範囲が広がり、人間関係も複雑になる。部下の扱いの気遣いに苦労する人もいるだろう。

中高年になると、心身の機能低下が目立ちはじめる。無理がきかなくなるのに頑張ろうとして、病的疲労から気分が落ち込んだり自責の念が生じたりする。これを精神保健学では「昇進うつ」と呼ぶ。

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要約公開日 2024.12.06
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