すべては1979年から始まった
21世紀を方向づけた反逆者たち

未 読
すべては1979年から始まった
ジャンル
著者
クリスチャン・カリル 北川知子(訳)
出版社
定価
2,484円
出版日
2015年01月21日
評点(5点満点)
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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レビュー

過激なイスラム主義を信奉する人がいまも増え続けているのはなぜか。隣国中国は社会主義と自由主義経済をどう融合し、どのような緊張を抱えているのか。将来、テロの危険性はどのくらい広がるのか。

こうした疑問や不安を抱える現代の人々にとって、本書が刊行されたのは朗報だ。軽妙だが均整のとれたジャーナリストの語り口で、1979年に起源をもち現代につながる重要なファクターが紡がれ、現代の政治、社会、経済の立ち位置が明らかにされている。今後の現実的な課題と展望も語られており、いまの世界情勢理解のための必読書であると言っても過言ではない。

本書を通して、いかに西欧社会や第三世界の近代化推進派が、進歩史観や冷戦構造などの政治イデオロギーや既存の体制に理解を縛られ、根幹の問題や新しい世界の動きを見過ごしてきたかがわかる。同時に現在においても、私たちの世界観、特に世界情勢の中でのイスラム世界への理解が、不完全で断片的な知識に依拠したものであることに愕然とする。「物語はまだ終わりではない」と最後に記されているが、読後我々自身が今後どう「物語」を引き継ぎ、続けていくかも問われていると言えるであろう。

本書の大部分は、著者が2004年からの5年間、ニューズウィーク東京支局長だった時期に執筆したのだそうで、日本語版に寄せて、日本の読者の役に立つことを心から願うと記されている。著者同様、本書から多くの人が役に立つ知見を得られることを期待したい。

著者

クリスチャン・カリル
ジャーナリスト。フォーリン・ポリシー誌寄稿編集者、ニューズウィーク元東京支局長。1984年イェール大学卒業。海外特派員として豊富な経験を持つ。ドイツ語、ロシア語に堪能。

本書の要点

  • 要点
    1
    1979年、イランやアフガニスタン、東欧、イギリスや中国で、それまでの20世紀を席巻していた唯物主義的近代化や社会主義体制に対する反動や反革命の動きがあらわれた。
  • 要点
    2
    以降、それまで長く無視されてきた宗教と市場原理が、共産・社会主義思想や政治体制に替わって、強力なイデオロギーや新たな社会原理として機能していく。
  • 要点
    3
    局地的に起こったかのように見える、時代に抗う1979年の動きは、以後の世界に大きな影響を及ぼし、現代にいたるまで社会体制や経済構造を大きく規定している。

要約

新しいイスラム主義

イスラム革命
Tanuki Photography/iStock/Thinkstock

イランは70年代にシャーの独裁政権下の社会・産業改革で年間成長率平均10%近い経済成長を遂げたが、急激な社会の変化と宗教の弱体化を図る政策に人々は動揺し、様々な立場から体制批判が噴出した。

政権非難で国外追放となった聖職者アーヤトッラー・ルーホッラー・ホメイニーは、15年間の国外生活の間にイスラム教主導の革命と新国家を構想し、それへの確信を深めていった。そして君主制崩壊後イランへ戻ると、若い世代の圧倒的な支持を背景に、イスラム革命を強化し、聖職者の統治を確立させた。

アフガニスタンの共産主義の失敗

近代化を求める第三世界の人々にとって、ソ連がわずか数年で農民の国から強大な産業国家に変わったことは驚異であり、マルクス主義は説得力あるものに思われた。実際にアフリカ、中米、東南アジア、どこを見ても共産国が台頭していた。

険しい山岳地帯に覆われたアフガニスタンでも、73年クーデターで王制が廃止され、まもなく共産主義政党が政権を握った。共産政権は、ほかの第三世界で近代化を推進した人たち同様、自国の後進性を嫌悪し、複雑な人種的・社会的多元性を無視して、共産主義という1種類のテンプレートを当てはめようとした。しかしここでも宗教をないがしろにした急進的な改革プログラムは社会に混乱と反感を招いた。

イスラム主義の復興と拡散

イスラム世界はかつて歴史的に高い文明や科学を誇ったが、19世紀末までに覇権はヨーロッパに移った。このため20世紀に入るとイスラム世界の知識人の間では、西洋近代化が唯一の道と結論づけ、共産主義や急進的民族主義などの欧米イデオロギーを受容する人が増加した。

その一方、問題は宗教ではなく宗教の欠如であり、必要なのはむしろコーランの教えの復活だとし、イスラム教を暴力的な社会変革の勢力と捉える思想も出てきた。このような考えはアフガニスタンでも次第に広がり、特に60年代後半から、自国の独裁者だけでなく、左派勢力や伝統的な宗教支配層にも対抗する若いイスラム教徒が増加した。

70年代にはさらに幅広い政権への抵抗運動が起こり、79年には事実上無政府状態に陥った。これをうけて同年ソ連はアフガニスタンへの直接的軍事介入に踏み切っており、その後武力紛争は長期化している。

欧米では当時、冷戦の対立構造からしか世界を理解しておらず、イスラム教徒が世界秩序を揺るがすなど、ましてアフガニスタンのような遅れた周縁でそれが起こるなど予想していなかった。しかしイスラム革命やイスラム国家構想に熱狂したウサーマ・ビン・ラーディンのような若い世代はアフガン戦争を聖戦とみなし、戦争を世界的に拡大しようとする過激な世界的聖戦理念を拡散していった。

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ジャンル
グローバル 政治・経済 リベラルアーツ
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出版社
定価
2,484円
出版日
2015年01月21日
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