大前研一 日本の論点 2015~16

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出版社
プレジデント社

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定価
1,760円(税込)
出版日
2014年11月14日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

オリンピックバブル、給与格差、エネルギー危機、集団的自衛権。日本に山積した課題と正面から向き合い、自分なりの意見や考えを述べられるビジネスパーソンはどれだけいるだろうか。

各国の経済アドバイザーとして活躍し、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権の国家実現のために、新しい提案をし続けている大前研一氏。本書では、グローバルな視点から、「日本の政治や経済の論点」を鮮やかに導き出し、物事の表層しかとらえていない巷の議論を一刀両断する。課題にひそむ「問題の本質」を炙り出し、実現可能かつ独自の処方箋を提示しているという点で、時事問題の解説書とは一線を画している。ドイツ視察など、現地での調査をもとにした鋭い意見は説得力にあふれており、読みごたえがある。

「啓発された市民を育成するために、読者に日本や世界の課題について考えてもらいたい」という大前氏の使命感が、本書の随所からにじみ出ている。日本や世界の問題点を俯瞰的に、かつ掘り下げて分析し、自分なりの考えを用意しておくことは、あらゆる業種のビジネスパーソンに必要とされることだろう。玉石混交の情報を取捨選択することも難しい昨今であるが、良質なインプットと思考訓練を求める人にとって、本書は心強い羅針盤になってくれるはずだ。日本の未来を切り拓くみなさまに、ぜひ読んでいただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

大前 研一
早稲田大学卒業後、東京工業大学で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インクを経て、現在株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役、ビジネス・ブレークスルー大学学長、ボンド大学経営学部教授。著書に『稼ぐ力』(小学館)、『新装版企業参謀』(プレジデント社)ほか多数。
「ボーダレス経済学と地域国家論」提唱者。マッキンゼー時代にはウォールストリート・ジャーナル紙のコントリビューティング・エディターとして、また、ハーバード・ビジネスレビュー誌では経済のボーダレス化に伴う企業の国際化の問題、都市の発展を中心として拡がっていく新しい地域国家の概念などについて継続的に論文を発表していた。
この功績により1987年にイタリア大統領よりピオマンズ賞を、1995年にはアメリカのノートルダム大学で名誉法学博士号を授与された。
2005年の「Thinkers50」では、アジア人として唯一、トップに名を連ねている。

本書の要点

  • 要点
    1
    働き手不足を解消するには、移民政策が切り札となる。日本の課題解決のために「どういう人材がどれくらい必要なのか」を見定めて、計画的に施策を打つことが大切だ。
  • 要点
    2
    日本のエネルギー危機を救う策は、①原発事故の徹底検証を前提とした原発の再稼働、②再生エネルギーに依存しない節電の実施、③従来にない調達法での多角的な「電力の輸入」の3つである。
  • 要点
    3
    ドイツが繁栄と世界からの尊敬を勝ち得ている理由は、連邦制を統治機構に取り入れたことと、欧州の繁栄をドイツの繁栄と位置づけた教育や職業教育を徹底させていることの2つにある。

要約

【必読ポイント!】 日本復活への秘策

オリンピックバブルに騙されてはいけない
somchaij/iStock/Thinkstock

日本の大都市の特徴として、都市の西側の方が東側よりも地価が高くなるという傾向があり、東京もその例外ではない。しかし、都心への通勤の利便性を考えると、東京の東側や湾岸エリアは最高の大規模再開発エリアだといえる。

2020年夏季オリンピックの東京開催が決まってから、湾岸エリア、特に築地、勝鬨、晴海辺りのウォーターフロントの、新築マンションの購入検討者が増えているという。「今のうちに買っておけば、オリンピックまでに資産価値が上がるかも」という声もあるが、液状化のリスクも解決されていないし、人口減社会の日本では不動産価格が持続的に上昇するとは考えづらいので慎重になるべきだ。

日本人には、売るべきときに買って、買うべきときに売るという不思議な行動特性がある。「日本人が飛びつくときは売り」という経験則に照らせば、ウォーターフロントの不動産は実は売りどきだろう。

大前氏は東京湾岸一帯を再開発して、ウォーターフロント100万人都市を誕生させる構想を提唱している。住宅街とビジネス街、商業施設が揃った職住近接の24時間タウンをつくり、企業家やインキュベーター、学生が気軽に出会える環境を整えるのだ。この構想は、東京五輪招致による一時的な活性化とは違って、毎日世界中からヒト・モノ・カネを呼び込もうという話だ。オリンピックとは桁違いの繁栄をもたらしてくれる。

オリンピックのような国家的イベントが成長を促すのは、途上国においてであって、今の日本には当てはまらない。真に日本を活性化できるのは東京の「西高東低」を是正する大規模開発だ。

移民政策 ~長期衰退を止める切り札~
kosmos111/iStock/Thinkstock

2040年には日本の人口は、現状より2100万人(約16%)減少すると言う。人口減社会の最大の問題は、国を支える働き手がいなくなることだ。

毎年50万人ずつ労働力が失われると、現状のGDPを維持できないだけでなく、警察、消防、自衛隊など国の安全や治安を守るための組織すら機能しなくなる。こうした日本の長期衰退を回避できるのは「移民政策」である。

白豪主義が撤廃されたオーストラリアは、大量の優秀な移民を受け入れたことで、新興国と同じデモグラフィ(人口動態)になり、経済が活性化している。

こうした事例をふまえて提案したいのは「グリーンカード制」だ。母国で優秀な成績を修めた人や資格を持った人を積極的に受け入れ、日本語や日本の慣習、法律などの教育を無料で行う。その上で、成績優秀者には永住と勤労を保証するグリーンカードを発行し、日本人と同条件で働けるようにする。5年が経過して日本に残りたいなら、市民権を与えてもいい。

高校の授業料無償化よりも、移民教育の無償化の方が日本の成長には意味がある。教育には、少子化で余った学校施設や教師を活用したらいい。移民政策で重要なのは、日本の課題解決のために「どういう人材がどれくらい必要なのか」を見定めて、計画的に施策を打つことである。

エネルギー危機を救うわが私案
vencavolrab/iStock/Thinkstock

福島第一原発事故後、日本政府のエネルギー政策は迷走している。電源構成の37%を占めていた原子力がほとんど使えなくなり、火力中心のエネルギー構造に変換したため、燃料輸入にともなう支出が大幅に増加している。さらには、電力不足と電力コスト高のリスクが、企業の海外流出に拍車をかけている。こうしたエネルギー問題をどうすれば解消できるのか?

数年前まで、日本は石油の調達国を分散させ、原子力やLNG(液化天然ガス)などの新エネルギーの開発に注力し、エネルギーソースを分散化させて、安定した状況を保っていた。しかし、震災と津波が、そのように綿密に組み立てられたエネルギー政策を叩き壊してしまったのである。

エネルギー政策では、高度な専門知識と長期的な視野が求められる。議論を進めるには、現在のエネルギー需給状況や、将来に向けての選択肢、原子力の果たす役割を国民に開示していくことが大前提だ。安部政権は「遅くとも10年以内には持続可能な『電源構成のベストミックス』を確立する」という公約を掲げたが、具体策は見えていない。

原子力を抜きに政権公約を実現することは非常に困難だと大前氏は考えている。日本のベースロード電源(一定の電気を安定的に供給する電源)は、全電力の3~4割を占めるのが望ましいが、その役割を担ってきたのは原発である。「3・11」後は石炭火力やLNG火力がそれを代替してきたが、燃料コストの増大やCO2排出量の増大によって代替を長期的に続けるのは厳しい。

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、ベースロード電源になりえない。全電力のうち新規開発の余地のない水力が約10%を占めるとしても、残り20%を風力や太陽光、地熱で賄うには、現存施設をフル稼働させても電力量は足りないのが現状だ。風力も太陽光も自然の状況次第のため、ガスや石油火力でバックアップ電源を別途確保しなくてはいけない。バイオマスや地熱を組み込んだとしても、トータルで電力の10%が関の山だ。

そこで、日本のエネルギー問題の解決策として、大前氏は次の3つを提案する。

1つ目は原発を再稼働すること。ただし、福島第一原発事故の徹底検証により安全対策の実行、再稼働の条件の明確化、事故対応の指揮系統の確立を行うことが前提である。

2つ目は、再生エネルギーに依存しない徹底した節電を実施することだ。「5年以内に電力使用量を50%削減する」目標を国策として推進すれば、原発依存度をゼロにできる。

3つ目は、従来にない調達法で、多角的な「電力の輸入」に取り組むことだ。LNG(液化天然ガス)を現状の液化での輸送ではなく、ガス状態のまま輸入できるよう、ガスパイプラインやインフラ整備をすれば、廉価かつ安定的に電力が供給できるようになる。

世界の視点

「集団的自衛権」容認の危うさ
Casper1774Studio/iStock/Thinkstock

安倍晋三首相の再登板により、集団的自衛権の行使容認に向けた動きが活発化している。これまで日本政府は「集団的自衛権の行使は、憲法第九条が容認する自衛権の限界を超える」という立場を取ってきた。ところが、安部首相は憲法解釈での集団的自衛権の行使容認を目指している。

アメリカは、日本が「人的支援よりも金」を出してくれる方が好都合だと考えていたが、「シリア問題(アサド政権の化学兵器使用の疑惑に対し、アメリカが同盟国に武力行使を呼びかけている問題)」では例外的に、日本に派兵要請をする可能性が高い。日本が集団的自衛権を認めれば、要請に逆らえなくなるだろう。日本と縁のないシリアに、直接攻撃を受けたわけでもない同盟国のアメリカが武力行使をしようとしているとき、集団的自衛権の発動が本当に必要なのかを考えなくてはいけない。

集団的自衛権の議論が迷走している理由は、「アメリカの軍事負担を減らすため」という本音を日本政府が押し隠して、「普通の国になるための集団的自衛権」という建前に終始しているからである。本音を明らかにした上で、アメリカの個別具体的な要望に対して集団的自衛権を行使できるかどうかを議会で議論することが第一歩である。

さらには、国連の平和維持活動(PKO)との兼ね合いにも検討がいる。現行のPKO協力法では自衛隊に許されるのは後方支援のみで、武力行使は認められていない。集団的自衛権が解禁された場合、自衛隊がどこまでPKOに従事できるかを決める必要がある。大事なのは、集団的自衛権の定義を国民の目の前できちんと議論することだ。

世界から尊敬されるドイツ、警戒される日本
Enrique Ramos Lopez/iStock/Thinkstock

ドイツが、BBC(英国放送協会)の国際世論調査で「好感度が最も高い国」に選ばれた。「失われた20年」で国際的なプレゼンスが低下の一途を辿る日本とは対照的である。敗戦国から経済大国へと戦後同じような軌跡を描いてきた二国だが、この20年で大きく差が開いてしまった。ドイツが繁栄と世界からの尊敬を勝ち得ている理由は何だろうか?

大前氏は次の2つによるところが大きいと考えている。

(1)アメリカ型の連邦制を統治機構に取り入れたこと。

(2)欧州の繁栄・周辺国との融和がドイツの繁栄の道だという教育を行い、職業教育を徹底させていること。

(1)の連邦制においては、ドイツの各州が立法権・行政権・司法権などの主権をもち、中央(連邦政府)から独立して財政運営から雇用の創出までを行っている。そのため、州政府に強い責任感が生じ、近隣の州との競争原理が働くため、活力が生まれている。州がそれぞれ独自の産業政策を行える一方で、KfW(ドイツ復興金融金庫)という金融機関が国家単位の産業育成やインフラ整備を担い、注力したい産業に傾斜配分できるようになっているのもドイツの強みである。

(2)のドイツ独自の教育においては、二度の敗戦とナチスの反ユダヤ主義への反省を徹底しているのが特徴的だ。領土問題を蒸し返すことはなく、ドイツの指導者(首相や大統領)が自らヨーロッパ連帯の大切さを行動で示し、経済的な負担をEUのどの国よりも進んで引き受けている。また、ドイツには独自の職業教育「デュアルシステム」が存在する。職業学校に通いながら理論を学びつつ、民間企業などの現場で職業訓練生として働きながら実践的に学ぶという仕組みだ。実際、実地訓練した若者の約6割が訓練先の企業に就職するという。こうした職業教育がドイツの雇用の安定化に役立っている。

日本では天皇制と官僚制度という、中央集権のコアな部分が生き残ったため、地方に自立を促す仕掛けがなく、今日の「地方自治の不毛」につながっている。復興と高度経済成長時に機能していた日本の中央集権体制は、経済成熟期の現在では改革の足枷になっている。自治体同士での予算の取り合いに終始し、成長政策や経済政策で発展的な競争に向かうことはないのが現状だ。日本の統治機構を抜本的に改めない限り、ドイツの州のようなエネルギーが地方から出てくることはないだろう。

日本人は、また、最近の20年間の閉塞状況の裏返しのように、右傾化が目立っている。アジアにおける日本の将来像を描けるような指導者も登場していない。「能ある鷹は爪を隠す」を実践するドイツに対し、日本は国際的な劣等感から爪をむき出しにしているのではないか、と大前氏は語る。

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