透明マントを求めて

天狗の隠れ蓑からメタマテリアルまで
未読
日本語
透明マントを求めて
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天狗の隠れ蓑からメタマテリアルまで
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透明マントを求めて
ジャンル
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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定価
1,210円(税込)
出版日
2014年06月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

姿が見えなくなる「透明マント」には、SF小説やアニメで、誰しも一度は出会ったことがあるのではないだろうか。21世紀の現代において、それは単なる夢物語ではなくなるかもしれない。

本書は透明マントを実現する素材である「メタマテリアル」の研究者が著した、技術の進歩とロマンの本である。人類が透明マントにたどり着くまでの、文化的背景、「透明になる」ということへの科学的理解、研究者たちの奮闘の歴史を、第一線の研究現場で活躍する若手研究者の視点で書き綴っている。

人間の想像力の中から登場した「透明になる」という命題に対して、人類は科学技術でどう答えを出したのか。本書で描かれている研究者たちの発想力や最先端の科学技術の挑戦には、わくわくすると同時に、日々考え続けることの重要性を感じるだろう。

本書はディスカヴァー・トゥエンティワン社が開催した「リバネス研究費ディスカヴァー・トゥエンティワン賞」にて奨励賞を受賞した研究者の著作だ。同賞は、最先端の科学技術と一般読者に発信する意欲を持った若手研究者を発掘し、研究費の助成と書籍執筆の支援を行っている。

メタマテリアルという未来の技術によって、SF世界の話から「ノーベル賞級の研究」のひとつとなり、もう少しで私達の手の届くところまでにきている透明マントの研究。その最先端の現場と研究者たちのドラマを目の当たりにできる、心踊る一冊だ。

著者

雨宮 智宏
東京工業大学 量子ナノエレクトロニクス研究センター助教
東京大学電子工学専攻博士課程修了。学生時代はワンチップ上に様々な動作を実現する光集積回路に関する研究に従事、現在は光通信において特殊な動作を可能とする光メタマテリアルを研究している。IEEE Photonics Conference Student Paper Award(2007年10月)、IEEE Photonics Society Graduate Student Fellowships(2008年10月)、コニカミノルタ画像科学奨励賞(2013年3月)などを受賞。応用物理学会、IEEE/Photonics Society、Optical Society of America(OSA)、American Physical Society(APS)会員。

本書の要点

  • 要点
    1
    ずっと昔から想像されてきた透明マントは、多くの文学作品に登場している。科学的検証がされたわけではないが、「物体が光の屈折によって視覚に入らない技術」という着眼点は近代の小説にすでに登場していた。
  • 要点
    2
    東西冷戦下の軍需産業の発展によって、透明化の技術は戦闘のために注目された。アメリカのロッキード社は、電波の反射方向をそらすことによりレーダーに「映らない」ステルス機を開発した。
  • 要点
    3
    ソ連の研究者が提唱した「負の屈折率を持つ物質」の理論を実現したのが、透明マントの素材「メタマテリアル」である。

要約

古(いにしえ)から想像力をかきたてる透明マントの魅力

物語の中の透明マント
sellingpix/iStock/Thinkstock

2006年、研究者が研究成果を発表する雑誌、サイエンス誌に、「光をコントロールする」と題された、「透明マントの作り方」を理論的に記した論文が掲載された。そのわずか5か月後、理論をもとに、ガラス繊維の上に細い銅線で細かい幾何学的な模様がある構造物がつくられた。人類が憧れつづけてきた「透明マント」が初めて現実のものとなったのだ(ただし、可視光線ではないマイクロ波にとっての、二次元での透明マントだが)。細い銅線の模様は「メタマテリアル」と呼ばれ、光の屈折率を自在に作り出すことができる物質である。SF小説やアニメでおなじみの透明マントは、科学技術によって、すでに私達の手の届くところにきているのだ。

本書では、このメタマテリアルに行き着くまでに、人々が透明マントをどのように考え、実現させようとしてきたかを、歴史をたどりながら説明している。

第一章では、紀元前9世紀、ギリシャ神話に描かれた、かぶると姿が見えなくなるという「ハデスの兜(かぶと)」にはじまり、「透明マント」がどのように物語や映像に表現されてきたかに触れている。叙事詩「ニーベルンゲンの歌」に描かれた姿を隠す宝具や、日本の平安時代の書物『宝物集』や『保元物語』に出てくる「天狗の隠れ蓑(かくれみの)」など、文学作品への登場の多さに、人々がいかに透明マントに憧れ、想像力を膨らませてきたかがよくわかる。

初めて透明マントの科学的な原理について言及したのは、18世紀から19世紀にかけて活躍したウェルズのSF小説『透明人間』である。彼は、物質の光の屈折率を低めることで、空気と同じように透明にするという原理を考え、肉体を変化させてそれを実現する登場人物を創造した。偶然ながら、彼の「光の屈折率」という着眼点は、メタマテリアルで実現した現在の透明マントの実現方法とかなり近いところにある。

消失マジックにある、透明マントのヒント
chromatika/iStock/Thinkstock

さらに、物語の中だけでなく、現実に透明になれる方法として、「ものが消える」手品のトリックを挙げている。手品のトリックは視覚の錯覚と死角を利用して成り立っている。錯覚とは「対象物に対して誤った感覚や認識を得ること」、死角とは「ある方向からはどうしても見えない範囲」と定義される。

それらを利用して、消失の瞬間に、手品師が隠したい部分に周囲の背景を鏡で映し出し、あたかも同じ背景が続いているように見せるというのだ。周囲が左右対称の風景ならば、鏡を用いて左右の風景を隠したい部分に写し込めば、鏡の中に同じ背景が広がっているように見えるのだ。このトリックを行う装置は、左右対称の舞台という特殊な環境でのみ成り立つ限定的な透明マントだ。そしてこの、隠したいものの真後ろの風景を再現するという概念が、現代の透明マントを理解する上でも大きなヒントになる。

軍需産業から始まった透明化技術開発

レーダーに「映らない」戦闘機
Aquir/iStock/Thinkstock

ここでは、透明ということがどのように科学技術で実現されていったかについて取り上げよう。

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