「全世界史」講義 Ⅰ

教養に効く!人類5000年史 古代・中世 編
未読
「全世界史」講義 Ⅰ
「全世界史」講義 Ⅰ
教養に効く!人類5000年史 古代・中世 編
未読
「全世界史」講義 Ⅰ
出版社
新潮社
出版日
2016年01月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

世界史を学ぶのは難しい。情報量が膨大過ぎるというのもその一つの原因だと思われるが、その他にも一つの国や集合体にとどまらず同時並行で時が流れ、様々な事象が史実として各地で記録されていること、それも国ならば一つの国で進んでくれればよいものを、戦いなどで次から次へと国が分離しては統合され、領土も変われば国名も変わる……このような諸々のことが学習者を悩ませるのではないだろうか。

そうした点本書は、その副題にある通り、「教養に効く」ことを目指しているため、年表的にこの年に何があって……といった書き方は一切されていない。時系列に沿って進められているのだが、むしろ世界の各地で起きていた事象がどのようなつながりを持ち、どのような因果関係で生じたのか、また歴史的に俯瞰した際にそれがどういった意味を持ちうるのか、といったことに焦点が当てられている。

また、教科書をはじめ歴史を記述する際にありがちなのが、それが史実であるのか、それとも簡潔さのために曲げられたものなのか、はたまた記述者の願望であるのかきちんと明記されず、ごちゃまぜにされるという問題である。絶対的に正しい史実というものはあり得ないが、それが学問的にほとんど認められているものなのか、それとも記述者の個人的考えであるのかをはっきりさせるのは非常に重要である。本書では、終始それがきちんと読み手にわかるような書き方をされている。また筆者の歴史観自体も非常に面白いので、そんな見方もあったのかと嬉しい驚きを感じながら読み進められることだろう。

ライター画像
和田有紀子

著者

出口 治明
ライフネット生命保険株式会社、会長兼CEO。1948年、三重県美杉村生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴い現社名に変更。2013年より現職。旅と読書をこよなく愛し、訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は1万冊を超える。歴史への造詣が深く、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では歴史の講義を受け持った。著書に『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社)、『仕事に効く教養としての「世界史」』(祥伝社)、『「働き方」の教科書』(新潮社)、『人生を面白くする本物の教養』(幻冬舎新書)。『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    世界最古の文明メソポタミアの影響を受けながら、エジプト、インダス、果ては遠く離れた黄河文明が勃興した。これら四大文明は相互に密接な関係を持っていたと考えられる。
  • 要点
    2
    紀元前、そして紀元後数世紀もの間、西部ではローマ帝国が圧倒的強さを誇っていたが、7世紀にはイスラム教が興り一気にイスラム圏が拡大した。同じころ東では唐が大帝国を築き繁栄を極めていた。
  • 要点
    3
    11世紀から14世紀初頭にかけてのユーラシアの長期的な温暖化により世界人口が大幅に増大したが、その後に続く寒冷化でペストが大流行し、ヨーロッパでは人口が7割に減少した。

要約

【必読ポイント!】有史の幕開け

文明の夜明け
itskatjas/iStock/Thinkstock

BC3500年ごろにシュメール人により世界最古の文字が発明された。

まだ貨幣が存在しないこの時代には、物々交換により商取引を行っていたのだが、交換できるものまたは相手が欲しがるものが常に手元にあるわけではなかったため、粘土製のボールの数を用いて取引物を記録していた。しかし、取引相手が複数人になってくると、一様なボールでは誰に何個対応しているのか見分けがつかなくなってしまうため、それぞれのボールに取引相手がわかる印を書き込むことにした。

この印がついたボールを「トークン」と呼び、トークンの絵文字を粘土板に刻み込んだのが、楔形文字と呼ばれる世界最古の文字である。そしてシュメール人は楔形文字の発明により、ギリシャ語で「ふたつの川の間」を意味するメソポタミアという世界最古の高度な文明を築き上げるに至った。ティグリス、ユーフラテスという2つの川の流域は、穀物や植物を栽培しやすく交通にも便利であるなど、地の利に恵まれていたことも大きな要因であろう。

同様のことがエジプトのナイル川流域にも言え、上流から肥沃な土をもたらす雨季の氾濫は「ナイルの賜物」と呼ばれるほど、人々に恵みを与えていた。また、メソポタミアから刺激を受けたエジプト人は同じく文字を発明し、象形文字と呼ばれる独自の文字はパピルスの繊維や石板に刻まれ今に残っている。

この2つの文明に遅れること500年、ペルシャ湾を経由しインドまでたどり着いた文明がインダス川流域でも勃興し、それぞれの文明は交易や人の行き来を通じ、相互に刺激を与え合いながら発展していったのである。

国家分裂と第一次軍事革命

BC1000年代に入るころには、アムル人のバビロニア王国が力を増してきており、「ハンムラビ法典」で有名な王ハンムラビの治世にメソポタミア全域が統一された。ところがハンムラビが死去するとバビロニア王国も衰退し、またしても群雄割拠の状況に逆戻りしてしまったのである。

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要約公開日 2016.03.28
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