大前研一ビジネスジャーナル No.7 の表紙

大前研一ビジネスジャーナル No.7

バルト三国・ベラルーシの研究~今、日本が学ぶべき“小国家戦略”~


本書の要点

  • エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国やベラルーシは、小国ながらも特定の産業に力を入れて発展を遂げ、周辺の大国とうまく渡り合っている。この四カ国のあり方から、日本が参考にすべきポイントが多くある。

  • 特にIT関連産業の発展にはめざましいものがあり、エストニアの電子政府や国民IDカードの進展のしかたやサイバー防衛を、日本も学ぶべきだ。

  • 四カ国は、ロシアや欧州への貿易中継地点、物流の拠点としても大きな可能性を秘めており、日本にもビジネス参入の機会があるといえる。

1 / 3

なぜ今、バルト三国を学ぶのか?

バルト三国の現状

ソ連の崩壊により独立した国々の中でも、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国は、それぞれ小国家ながらも強みを活かし、質の高い国家運営をしている。エストニアはとりわけICT分野に強く、世界に先駆けて電子政府のモデルを作り上げている。また、ラトビアはロシアとの関係をうまく築きながら物流の拠点として栄えており、リトアニアは経済回復を遂げて債務の少ない運営を行っている。

どの国も独立当初から順風満帆だったわけではない。一時は貧困に苦しんでいたが、苦難の時代を乗り越えて現在に至る。現在でも、ロシアが侵攻してくる可能性はゼロではない。そんな状況下で、エストニアは、たとえ再び国が占領されても国民としての団結を保つために、ICT化を急速に進め、バーチャル国家の運営を継続しようとしている。

本書では、「強い小国家」の運営に成功しているバルト三国から、日本が参考にすべき点を紹介していく。

日本のエンジニアの未来

世界のエンジニアの市場を見ると、日本のエンジニアの人件費も低額化を免れないだろう。世界中をつなぐサイバープラットフォームが構築されたことにより、安くて優秀なエンジニアを海外から集められるようになったからだ。

そこで、企業とエンジニアの間に入ってIT分野の代理店のような役割を果たす「サイバーコンシェルジュ」としての活路を見出すなど、生き残る新たな方法を見出す必要がある。今、世界で何が起きているのかを知り、どこに需要があるのか見極めることが大切なのだ。

2 / 3

【必読ポイント!】 バルト三国・ベラルーシの小国家戦略

歴史的背景を紐解く

mihtiander/iStock/Thinkstock

バルト三国とベラルーシは、欧州連合(EU)とロシアに挟まれる位置にあり、周辺諸国からの侵略や支配を何度も受けてきたという歴史的経緯がある。1940~90年代にかけてソ連に併合・編入されていた際はITや流通を担当していたため、1991年に独立した後もそれらを強みとして発展している。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2838/3664文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2016.03.30
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

大前研一ビジネスジャーナル No.8
大前研一ビジネスジャーナル No.8
大前研一(監修)good.book編集部(編)
企業家としての国家
企業家としての国家
マリアナ・マッツカート大村昭人(訳)
安倍官邸vs.習近平  激化する日中外交戦争
安倍官邸vs.習近平 激化する日中外交戦争
読売新聞政治部
中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれる男
中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれる男
陳潤永井麻生子(訳)
会社を立て直す仕事
会社を立て直す仕事
小森哲郎
国宝消滅
国宝消滅
デービッド・アトキンソン
ヒップな生活革命
ヒップな生活革命
佐久間裕美子
働く力を君に
働く力を君に
鈴木敏文勝見明

同じカテゴリーの要約

経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
サピエンス全史(上)
サピエンス全史(上)
ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之(訳)
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
リンダ・グラットンアンドリュー・スコット池村千秋(訳)
無料
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
河原千賀
FACTFULNESS
FACTFULNESS
ハンス・ロスリングオーラ・ロスリングアンナ・ロスリング・ロンランド上杉周作(訳)関美和(訳)
無料
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
針貝有佳
サピエンス全史(下)
サピエンス全史(下)
ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之(訳)
となりの陰謀論
となりの陰謀論
烏谷昌幸
2050年の世界
2050年の世界
ヘイミシュ・マクレイ遠藤真美(訳)