孟子

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孟子
出版社
岩波書店
出版日
1968年02月16日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
5.0
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おすすめポイント

みなさんは、人間は本来的に「善」と考えるだろうか「悪」と考えるだろうか。「善」だと考える人はこの本を読むことをおすすめする。きっと勇気づけられることだろう。そして、これからどのように心を育てていけばよいかもわかるであろう。反対に、「善」だと考えない人もこの本を読んでみてほしい。きっと反対の立場の土台が見えてくるであろう。そして、それを理解してこそ、本当の議論ができるのである。

本書『孟子』は中国における古典中の古典、儒教の基本書である、四書五経の中の一冊である。『論語』や『大学』、『中庸』と並び、宋代に四書として広く読まれるようになった。そこから現代まで読み継がれる、まさに教養の象徴的存在である。

とはいえ、おじけづく必要は全くない。本書には懇切丁寧な現代語訳が付されており、注を参照しなくとも一読して容易に意味が理解できるようにされている。もちろん、原文や読み下し文、そして注を参照することでさらに理解が深まることは間違いないが、それは次のステップで構わない。

この書物はこれまで多くの人々を迷いの淵から救い出してきた。折にふれこの本を開き、「こんな場合に孟子はどう考えるだろうか」と考えをめぐらせば、どんな問題に対しても解決の糸口をつかむことができるだろう。古代中国を代表する知識人の考えがまとめられ、はるかな時の流れによる厳しい選別にも耐えたこの一冊は、よき生涯の友とするに足る奥深さを持っている。ぜひ気楽に長く親しんでほしい。

著者

孟子
(前372頃‐前289頃)
中国古代の思想家。鄒(すう)という小国に生まれた。前半生について詳しいことは分かっていないが、幼少期のエピソードである「孟母三遷の教え」は有名である。その後、戦国時代中期の戦乱の世にあって、孔子の思想を発展させた。人間の本性は善であるという性善説を唱え、仁義に基づく王道政治を理想とした。斉や滕の政治に影響力をもったが、理想の実現は叶わず、晩年は故郷で後進の育成に力を注いだ。

本書の要点

  • 要点
    1
    諸侯や弟子たち、時には違う学派の論客との対話を通して孟子の思想が明らかにされる。国の治め方や自分の修め方についての考えがそこで述べられる。
  • 要点
    2
    孟子の思想の根本にある考えは、人の本質は善であるというものであった。
  • 要点
    3
    国を治めるにせよ、自分を修めるにせよ、大事なことは仁義を大事にすることであると孟子は繰り返し述べている。

要約

国をよく治めるにはどうすれば良いのか

五十歩百歩
photoclicks/iStock/Thinkstock

梁(りょう)という国の恵王(けいおう)が孟子に聞いた。「自分は、国をよく治めるために、飢える人が出ないように食糧を調整して配分するなど、大変な努力をしている。そんなことをしている国は近くに見当たらない。それにも関わらず、他国から我が国へ人が移ってこないのはなぜなのだろう。」

孟子はこんなたとえ話をした。「戦争の大事な局面で、装備をはずして逃げ出したものがいました。ある者は百歩逃げ、別の者は五十歩だけ逃げたのです。この時、五十歩の者が百歩の者を臆病者と言って笑ったら王様はどう感じるでしょうか。」それに対し王は、「どちらも逃げたのだから違いはない。」と答えた。

これを受けて孟子は言った。「それと全く同じことです。王様の政治も、他国と同じように人民のための天下の王者となる政治ではないのです。他を悪く言うのではなく、自分の政治が悪いということを認めることができたとしたら、その時こそ王様の徳を慕った人びとが国に押し寄せてくるでしょう。」

「しない」と「できない」はどう違うか

孟子は斉(せい)の宣王(せんのう)に王者の道を説いた。「天下の王者となるには特別の徳がいるわけではありません。ただ『仁』に基づいた政治を行って人びとの暮らしを安定させることができれば王者となることができるのです。そして王様はその素質をお持ちです。」宣王がその理由を聞くと、孟子はあるエピソードを話した。

「ある日、儀式の供物として使われる牛が引かれて行くのを見た王様が、それをかわいそうに思い助けてあげたことがあったそうですね。この情けの心があれば王者となるに十分なのです。しかし、王様は牛に対しては情けをかけたのに、人びとには情けをかけていません。したがって、王様が王者でないのは、なろうとしないのであって、なることができないのではありません。」

「『しない』と『できない』はどう違うのか。」と、宣王が聞くと、孟子はこう答えた。「大きな山を抱えて海を飛び越えるようなことができないという時、これは本当に『できない』ということです。一方、目上の人にお辞儀をすることができないという時、これは『できない』のではなく『しない』のです。」

そして、孟子は続けた。

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要約公開日 2016.02.22
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