リーダーに必要なことはすべて「オーケストラ」で学んだ

プロ指揮者の"最強チームマネジメント"
未読
リーダーに必要なことはすべて「オーケストラ」で学んだ
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プロ指揮者の"最強チームマネジメント"
未読
リーダーに必要なことはすべて「オーケストラ」で学んだ
出版社
日本実業出版社
出版日
2013年12月19日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

最高の組織とはどのようなものだろうか。本書に触れる前でも、元来オーケストラに魅力を感じている読者は多いことだろう。オーケストラの演奏家はそれぞれが一流でありながら、一つのパートを求められるように全うし、全体の演奏を美しいものに構成する役割を担う。そのようなプロフェッショナルをまとめ上げるのが指揮者だ。どのような世界でも、一流の方法論には唸らされるものがある。プロ野球の監督であれ、NPOの指導者であれ、政治家であれ、ビジネス以外の領域で活躍する一流の技法は、ビジネスパーソンも大いに唸らされるものだ。

本書はオーケストラや指揮者という誰でも一度は憧れた職業の美学が凝縮されており、音楽の素人にもわかりやすく解説された興味深い書である。オーケストラのように、ビジネスにおいてもスキルとプライドの高い一流のプロフェッショナル達をまとめ上げることは、ある意味では有能でない人をマネジメントすることよりも難しい。組織は強みによってマネジメントすべきなのだから、自分より(部分的にでも)有能な人とも協業することができなければ、ビジネスにおいてもさしたる業績は上げられないと言えるだろう。本書はオーケストラに興味を持つ方だけでなく、一流のリーダーシップを直感的に理解したいビジネスパーソンの多くに向けられた書籍である。クラシック音楽でも聞きながら読むことができれば、より世界観が膨らみ豊かな一時となろう。

ライター画像
大賀康史

著者

桜井 優徳
日本指揮者協会執行部・事務局長補佐。東京アーバンシンフォニエッタ音楽監督・首席指揮者。1959年生まれ。豊島区立第十中学校、東京音楽大学付属高等学校を経て、桐朋学園大学音楽学部オーケストラ研究科へ進む。17歳で指揮者デビュー。現在、日本フィルハーモニー交響楽団を中心に、九州交響楽団、広島交響楽団などのプロオケの指揮台に立つほか、全国のアマチュア団体の指揮指導も行なう。また、指揮者としての活動のかたわら、日産自動車、NTTデータグループなどで管理職向け研修の講師を務める。2007年より、早稲田大学大学院商学研究科MBAの招聘講師。

本書の要点

  • 要点
    1
    オーケストラは理想の組織と言われるが、その要因は次の5つである。①オーケストラは多彩な職能の専門家集団、②オーケストラには上下関係がない、③臨機応変に役割を分担する、④楽譜という「絶対的唯一無二の総合計画書」を共有する、⑤達成すべきミッションが明確である。
  • 要点
    2
    リーダーは、常に想定外の事象まで想定し、非常事態に備えておかなければいけない。そして、失敗の責任はリーダーにあっても功績はメンバーのものとし、順調なときにはチームメンバーを信じて一歩引くような心構えも必要である。

要約

なぜ、オーケストラは「理想のチーム」なのか?

オーケストラが「理想のチーム」と言われる理由
iStock/Thinkstock

本書はまずオーケストラおよび指揮者の特徴を解説した上で、オーケストラの指揮者のリーダーシップとビジネスリーダーの共通点に関して考察される構成となっている。特に指揮者として功績を上げた著者のオーケストラに対する洞察は、大変興味深く多方面に応用が利くことであろう。

オーケストラの応募というものは毎年行われるものではなく、欠員が発生した際などに、応募を行うものである。その競争率は苛烈であり、1つの席に数百人が応募することもあるという。だからこそ、オーケストラの演奏家は「極めつけのプロの演奏家」として認知されている。

そのようなプロの演奏家の集団であるオーケストラが、理想のチームたる理由は以下の5つである。

理由① オーケストラは多彩な職能の専門家集団

オーケストラは、担当する楽器の種類により、木管楽器・金管楽器・弦楽器・打楽器のセクションに分けられる。オーケストラの各セクションや各楽器には、役割分担があり、花形から縁の下の力持ちなど、様々な個性を持っている。

そしてオーケストラのメンバーは、担当以外の楽器を演奏することはない。専門の分野に関する高い音楽的な技術を持ち、自発的に高度なタスクを遂行している、ということがチームの基盤となる重要なポテンシャルとなるのだ。

理由② オーケストラには上下関係がない

オーケストラの特徴のひとつとして、首席奏者やパートリーダーはいるが、明確な上下関係がないということが挙げられる。もちろん、楽器による優劣も一切ない。花形の第1バイオリンではなく、ビオラが華々しいパートソロを奏でて主役になるということもある。

つまり、オーケストラのメンバーは全員が平等・対等である代わりに、それぞれ違った役割と責任があるのだ。

理由③ 臨機応変に役割を分担する

クラシック音楽は、主旋律を奏でる人と、伴奏を担う人が、場面に応じて交代することにも特徴がある。メンバーは主役として目立つ場面と、伴奏として脇役に回る場面が、阿吽の呼吸でできるように訓練を積んでいる。

指揮者はそのようなプロの演奏家集団を相手にしながらも、アクシデントによる非常事態には臨機応変な対応も求められるのだ。

理由④ 楽譜という「絶対的唯一無二の総合計画書」を共有する
Photodisc/Thinkstock

オーケストラでは、指揮者も演奏者も万国共通の楽譜をもとに演奏する。楽譜とは、「良質な演奏」を遂行するための「絶対的唯一無二の総合計画書」だ。つまり、企業にとっての就業規則や事業計画書にあたるものである。

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要約公開日 2014.01.08
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