中央銀行が終わる日
ビットコインと通貨の未来

未 読
中央銀行が終わる日
ジャンル
著者
岩村充
出版社
定価
1,400円 (税抜)
出版日
2016年03月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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中央銀行が終わる日
中央銀行が終わる日
ビットコインと通貨の未来
著者
岩村充
未 読
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ジャンル
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定価
1,400円 (税抜)
出版日
2016年03月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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レビュー

2014年にマウントゴックスが経営破綻したニュースを聞いて、はじめてビットコインという言葉を知った人も少なくないだろう。ビットコインとは、ネットワーク上で生成される暗号通貨のことだ。現状では、ほとんどの人は中央銀行券こそが「お金」だととらえているが、本書によれば、今後はビットコインが、より一般的に用いられることになるという。

これまでの中央銀行は、金利の利率を変化させることで、通貨供給量を増減する金融政策を主軸としてきた。実際、経済成長の時代では、この政策で経済はうまく回っていたのは事実だ。だが、著者によれば、金融政策は将来の「豊かさ」を現在に持ってくるということに他ならないという。将来の成長が見込めず、金利がゼロ近くで低迷しているなかでは、金融政策が効果を発揮するのは難しく、当然の結果として景気回復の糸口がつかめないというわけだ。

そこでビットコインの出番である。ビットコインでは、「ブロックチェーン」という技術を使って、資金の移動を行っている。この仕組みを中央銀行も採用し、デジタル技術で利子をつけた「デジタル銀行券」を発行して流通させることで、金融政策の選択肢の幅を広げることができる。中央銀行が独占発行してきた貨幣が、今後は民間の仮想通貨との競争にさらされる未来が来るかもしれない。貨幣というものが、今どこにいて、どこへ向かおうとしているのか、本書はその未来図を巧みに描き出している。

平賀妙子

著者

岩村 充(いわむら みつる)
1950年、東京生まれ。東京大学経済学部卒業。日本銀行企画局兼信用機構局参事を経て、1998年より早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授。著書に『電子マネー入門』『サイバーエコノミー』『貨幣の経済学』など。2010年に刊行した『貨幣進化論 「成長なき時代」の通貨システム』で注目を集める。

本書の要点

  • 要点
    1
    豊かな未来が展望できない時代において、中央銀行の金融政策はもはや機能しない。中央銀行がこれから歩むべき道のヒントは、ビットコインにある。
  • 要点
    2
    たとえば1兆円のビットコインを作り出すにはほぼ同額のコストがかかってしまう。一方、中央銀行券は国の徴税能力にただ乗りができるため、低コストに抑えられるというメリットがある。
  • 要点
    3
    自分の用いる貨幣を自由に選択できる未来がやってきたとしても、通貨の安定した価値尺度を提供する存在として、中央銀行は残りつづけるだろう。

要約

金融緩和の是非

中央銀行が主役なのは錯覚だった

第二次大戦後、西洋諸国における経済政策モデルを築いたのは、経済学者であるケインズの後継者たちである。彼らが景気対策で重視したのは、中央銀行の行う金融政策ではなく、政府自体が裁量する財政政策の役割であった。これは、1930年代の世界大不況の際に、金融を緩和して金利を引き下げすぎた結果、金利がゼロになってしまい、それ以上の金融緩和が意味をなさなくなる状況に行きついたという経験があるためである。ケインジアンたちは、そのような状況を「流動性の罠」と呼び、その罠にかからないようにするための財政政策が必要不可欠だと主張した。

しかし、そうした財政政策重視の経済政策運営はやがて行き詰まりを見せる。ケインジアン的な政策運営を行っていた米国で、不況とインフレーションが同時に発生する「スタグフレーション」が起きてしまったことは、その象徴的な出来事である。こうして、大戦後の経済政策の主役であった財政政策はその座から降ろされ、再び金融政策が脚光を浴びはじめた。

フィリップス曲線の「発見」も、この流れを後押しした。フィリップス曲線とは、賃金上昇率と失業率との負の相関に関する経験的な事実を表したものだが、この賃金上昇率を「インフレ率」に読み替え、失業率を「景気」と読み替えると、「高めのインフレ率を許容した方が景気は良くなる」とも解釈できる。そのため、金融政策をつかさどる中央銀行こそが、物価と雇用を調整するカギを握っているという雰囲気が次第に生まれていった。

だが、それは錯覚にすぎなかった。中央銀行は結局のところ、「流動性の罠」の問題からは解放されていなかったのである。そのことを最初に明らかにしたのが、1990年代半ばの日本であった。

「流動性の罠」が帰ってきた!

当時、日本はバブル経済後の急速な景気の落ち込みに悩まされていた。この手詰まりの状況を「流動性の罠」の再来と指摘したのが、経済学者であるポール・クルーグマンである。クルーグマンは、「流動性の罠」から脱出するための方策として、日銀が金融政策運営において許容するインフレ率について、より長期的な視野から柔軟な態度を取るべきだと主張した。「流動性の罠」はそもそも、名目金利の世界で起こっている問題なのだから、世の中のインフレ期待が上振れすれば、自然と解決されるというわけである。

実際、日銀がその後にとった「時間軸政策」は、クルーグマンの提案に近いものであった。これは、将来から豊かさを借りてくることで、インフレ期待を高めようとする政策だったといえる。しかし、そもそも未来は豊かになると人々が信じていなければ、大きな成果など期待できるはずもない。いくらやり方を工夫したところで、日本が経験したようなデフレの場合、金融政策では限界があるわけだ。

しかし、金融緩和策が効かないのは日銀の姿勢が中途半端なためであり、もっと数字を大きく掲げて世間に訴えれば、インフレ期待を起こすことができると考える人も少なくなかった。2013年に打ち出された「異次元緩和」は、そうした背景のもと支持され、実行された金融政策だ。ほとんどゼロである金利のわずかな動きを追いながら政策を実行するのではなく、日銀の貨幣供給量を金融政策の中核に据えることで、「流動性の罠」のような面倒な議論を迂回し、金融緩和を進める中央銀行の決意の固さをアピールできるというわけである。

第3の選択肢の登場

「異次元緩和」が実行されたことにより、たしかに人々の心理は大きく変わったし、株式市場にも活気が戻ってきている。だが、肝心の物価目標はまったく達成できていないのも事実だ。

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