不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書

未 読
不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書
ジャンル
著者
中谷巌
出版社
集英社インターナショナル 出版社ページへ
定価
1,500円 (税抜)
出版日
2013年02月10日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.0
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不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書
著者
中谷巌
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出版社
集英社インターナショナル 出版社ページへ
定価
1,500円 (税抜)
出版日
2013年02月10日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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レビュー

「不識塾」とは、毎年の受講生が20数名しかいない、きわめて小さな私塾だ。しかし編者であり、不識塾の創始者である中谷 巌氏は、この小さな私塾が、やがて日本の産業界を変える本物のリーダーを輩出すると考えている。

受講生のほとんどは、日本のグローバル大企業から派遣されてくる幹部社員である。彼らが不識塾で学ぶのは、哲学や文化、歴史、宗教といった、一見すると、ビジネスとは何の関係もないようなものばかりだ。しかし、こうしたテーマについて、毎週のように超一流の教授や研究者たちと徹底的に討論を重ねることで、問題の根本に遡って考える力が身についてくる。

「表面的な知識やスキルの習得だけでは、ビジネスはうまくいかない」と中谷氏は主張する。それは、アメリカのMBAで教えられるような知識をそのまま日本に持ちこもうとしても、うまく通用しないことが証明しているという。本当の意味で、世界に通用するビジネスパーソンになるためには、それぞれの文化や価値観についての深い洞察がなければならないというのが、本書に通底したメッセージだ。

本書は、不識塾で用いられている書籍の紹介を主眼として作られた、一種のガイドブックである。不識塾で「師範」として、受講生の指導役を務めている中谷氏たちが、「これは面白い!」と感動した本を厳選し、その本の魅力や読みどころを紹介してくれている。本書を読めば、日本のトップエリートたちが集まる不識塾における、これまでの「知」への歩みの一端に触れることができるはずだ。

石渡翔

著者

不識塾(ふしきじゅく)
グローバル人材として活躍するには「リベラル・アーツ」の習得こそ必須であるというコンセプトのもと、経済学者・中谷巌が塾長を務める経営者育成講座。各企業から1名限定、年間500万円という受講料で、内外の一流講師を招き、徹底的に討論・対話を重ねるというスタイルを貫いて定評を得ている。

本書の要点

  • 要点
    1
    国際的な舞台で日本の存在感が薄いのは、教養が欠如しているからである。リーダーになる者には、本質に根ざした教養や哲学が必要不可欠だ
  • 要点
    2
    民主主義と資本主義をかかげる国々のほとんどが、現在伸び悩んでいる。なぜなら、これらの主義は、経済成長を前提としたものだからである。
  • 要点
    3
    歴史的背景を踏まえると、日本の「中国化」は必然的な流れとは言えない。
  • 要点
    4
    民主主義の本質を理解しようとすることは、コーポレートガバナンスを深いレベルで学ぶことにもつながる。

要約

【必読ポイント!】 なぜ教養が求められるのか

日本人は教養が足りていない
kieferpix/iStock/Thinkstock

現在、日本のサブカルチャーは世界でも人気を博しており、日本文化への愛を語る外国人も増えてきている。しかし、そのほとんどはいわば庶民クラスの人々だ。一方、海外のエリートたちの日本観はそれとは大きく異なっている。彼らは、「日本人は何を考えているのか分からない」と口々にこぼす。

実際、国際会議などにおける日本人の存在感はきわめて薄い。その大きな理由は、日本には欧米のエリートならば誰でも共有している教養(リベラル・アーツ)がないことにある。商談やプレゼンテーション、ビジネストークにおいて最終的に成否を決めるのは、本題に入る前の雑談であるといっても過言ではない。単にコストパフォーマンスの高いものを仕入れるだけでよいのであれば、見積書をメールで送れば済む時代だ。それにもかかわらず、わざわざ会って話をするということは、同じ価値観を共有できるかを確認したいからに他ならない。

だが、日本の「エリート」はそうした話になると、ぐっと言葉を詰まらせてしまう。話の土台となるべき教養を持っていないから、「日本の企業は現場レベルでは強いが、トップの存在感がゼロ」と言われてしまうのである。

戦前の日本のほうが国際的な人材を生み出していた

国際的な場でも通用するコミュニケーション力を身につけるために大事なのは、語学力でもなければ、小手先の交渉術でもない。相互理解の基礎となる教養を身につけること、そして自らの見識を高めることが必要不可欠だ。

世界有数の経済大国となった戦後よりも、むしろ戦前の日本のほうが国際的に通用する人材を輩出できていたのは、教育の力によるところが大きい。明治の元勲の多くは、流暢に英語を話せなかったが、彼らには漢詩や漢文といった、中国の古典に裏打ちされた高い見識と志があった。また、ヨーロッパのリゼやパブリックスクールを真似られて作られた旧制高校でも、古典や哲学といったものを重視するリベラル・アーツ教育が行われていた。

こうした、先進国ならばどこの国でもあるはずのリベラル・アーツ主体の高等教育が戦後の日本からなくなったのは、敗戦後の日本を占領したアメリカの意図によるものである。アメリカは、エリート育成機関としての旧制高校を廃止し、「民主化」させることで、日本の弱体化を図った。その結果、今日の日本はどこの国よりも中間層が充実している一方で、その上に位置するはずのリーダー層が皆無になってしまった。

ビジネスや政治の場において、リーダーに求められるのは、本質に根ざした教養や哲学を持つことである。いかに英語が流暢であっても、それだけではうまくコミュニケーションをとることはできないのだ。

不識塾のもつ役割
KatarzynaBialasiewicz/iStock/Thinkstock

不識塾は、そうした「教養のギャップ」を少しでも是正することで、将来の日本を支えるリーダーたちに、教養を学ぶことの大切さを知ってもらいたいという思いで設立された。毎年、新しく企業から送り込まれる塾生たちは、「なぜ会社の業務もあるのに、歴史や哲学などという浮世離れした『お勉強』をしないといけないのか」と考えながらやってくる。しかし、講義の回数を重ねるたびに、彼らの目はどんどんと輝きを増していき、次第に「欧米や中国とどのように向き合っていくべきなのかが見えてきた」と話すまでになる。

次章からは、不識塾の「師範」にあたる人たちが、課題図書のなかでも「これは面白い!」と感動した本を選び、その本にある魅力や読みどころを解説しつつ、持論を展開していく。

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