研究者としてうまくやっていくには
組織の力を研究に活かす

未 読
研究者としてうまくやっていくには
ジャンル
著者
長谷川修司
出版社
定価
990円(税込)
出版日
2015年12月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.5
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研究者としてうまくやっていくには
組織の力を研究に活かす
著者
長谷川修司
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定価
990円(税込)
出版日
2015年12月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.5
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レビュー

「研究者」というと、どのようなイメージを持つだろうか。理屈っぽい奇人変人を想像する人もいるだろうし、研究室に引きこもっていて世間の事情にうとい人物を思いうかべる人もいるかもしれない。

しかし著者によれば、こうしたイメージは、実際の研究者にはあてはまらない。研究者として第一線で活躍している人たちのほとんどは、いたって「普通」の人々というのが著者の見解だ。研究者以外の人とうまくコミュニケーションがとれなかったり、自分の専門分野のことだけしか語れなかったりというのでは、社会人として失格であり、それは同時に研究者として失格ということも意味するのだという。どんな種類の研究を行なっていたとしても、指導者や先輩、同僚や共同研究者、後輩や学生、ときには競争相手ともうまくつきあっていかなければならない。研究者も、他の職業と同様に社会性がなければやっていけない職業なのだ。

本書では、研究者になり、うまくやっていくために必要な「研究以外」のノウハウやスキルがまとめられている。「研究」と「勉強」の違いという基礎的なところから、研究者という職業の魅力、学会で発表するときに印象を良くする方法、「通る」研究費申請書の書き方まで、具体的に紹介されているのが嬉しいところ。

仕事としての「科学」と誠実に向きあいたい人、そしてなによりも研究することの楽しさに触れてみたい人に、ぜひお薦めしたい一冊だ。

池田明季哉

著者

長谷川 修司(はせがわ しゅうじ)
1960年栃木県に生まれる。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。理学博士。日立製作所基礎研究所研究員、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻助手、同助教授、同准教授を経て、現在、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。専門は表面物理学、とくに固体表面およびナノスケール構造の物性。著書に『見えないものを見る ナノワールドと量子力学』(東京大学出版会)、『振動・波動』(講談社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「研究」と「勉強」は違う。勉強は答えのわかっている課題を学ぶことだが、研究とは、答えのわかっていない課題を考えることである。
  • 要点
    2
    研究とは、その研究者の個性や価値観が反映された、自己表現のひとつだといえる。
  • 要点
    3
    良いプレゼンは情熱的である。聴衆に「わかってほしい」という気持ちが発表にあらわれているかどうかでプレゼンの質は決まる。
  • 要点
    4
    学会は「研究者オーディション」である。会場に来ている教授たちに良い印象をあたえる立ちふるまいを心がけるべきだ。

要約

【必読ポイント!】 「研究者」という職業

「研究」と「勉強」はまったく違う
AzmanJaka/iStock/Thinkstock

大学院は実際に研究を始める場所として最も身近な場所だが、「大学院で何をやるのか」を正しくイメージできる人は少ない。「たくさん知識を身につけ、『博識』になること」だと漠然と想像する人も多いだろうが、実際にはまったく違う。大学院は「勉強」するところではなく、「研究」するところなのである。

勉強とは答えのわかっている問題や課題を考え、先人たちがすでに考えた課題や解いた問題をもう一度自分でやってみて、知識体系を学ぶことだ。これに対して研究とは、答えのわかっていない課題を考えることである。ときには答えがあるのかどうかさえわかっていない課題、あるいは考える意味があるのかどうかさえわからない課題さえも考えなければならない。価値ある謎や課題を見つけること自体が、研究の大きな部分を占めているのだ。

研究の結果、意味のある成果が得られたら、それが学問体系の中に組みこまれて蓄積されていく。そしてその知識体系を大学生が「勉強」するというわけである。研究とは、その知識体系の「最前線の先」を探っていく営みだといえよう。

研究は非効率的なもの

学部までの勉強のやり方をむやみに続けていても、創造的なものは生みだせない。自分の研究に合わせて、既知の知識を今までにないやり方で組みあわせることが、独創性を生みだすことにつながる。

とはいえ、自分の研究に関連する分野の知識を全部勉強したあとでないと、新発見するための研究ができないというわけではない。とりあえずはあまり大きな心配をせずに、自分の研究に関係する狭い範囲の勉強だけして、研究をどんどん進めたほうがいい。

また、自分と同様の研究を過去に誰かがやっていたとしても、同じ結論にならないこともある。先行研究にあまりとらわれずに、自分のアイディアにもとづいて、やってみることが重要だ。

断片的で系統的でない発見や発明の積み重ねによって、科学や技術、学問は発展していく。研究とは基本的に非効率的なものなのである。

研究は自己表現

研究者の日常は、ほとんど毎日、研究がうまくいかなくて悶々と悩むことばかりだ。研究費の申請書を書いたり、研究の報告書を書いたりと、けっして楽しいとはいえない仕事も多い。

しかし、研究者の多くは飽きもせず、毎日黙々と自分の研究に向かいあっている。新しいことを発見したり、自作の装置がうまく働いたりしたときの嬉しさは格別だからだ。

研究者の個性や価値観によって、研究成果や研究スタイルは大きく異なる。芸術家は自分の作った作品によって自己表現をするが、ある意味で研究者は自分のやった研究によって自己表現をするともいえる。研究は、自分らしさの表現でもあるのだ。

研究者への助走

教養はあとから効いてくる
JackF/iStock/Thinkstock

大学1、2年生では、まだ専門教育が本格的に始まらない大学が多い。しかし、教育課程のときこそ、たとえ自分の進むべき専門分野が決まっていたとしても、幅広い分野の本を読んだり、講演会に出てみたりすることをお薦めしたい。

研究者は、「井の中の蛙」あるいは「たこつぼ」状態になってしまうことが多い職業である。もちろん、特定の専門分野の最先端を研究するには、深い「井の中」に潜ってひとつの研究テーマに集中するべきだ。しかし、ときどき「井の中」から這いでて、周りを見わたす心の余裕と見識を持っておくべきである。

大学前期の教養課程での勉強は、その素養を身につけるきっかけになる。教養とは、自分の専門や考え方を相対化できる能力なのである。

博士は修士の延長ではない

大学院では必修の講義の数は少ないため、ほとんどの時間を研究に費やすのが常だ。学部生とは違い、研究の準備からすべて自分でやらなければならないため、より主体的な活動が求められることになる。

とくに、

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