挑戦

小池百合子伝
未読
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小池百合子伝
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挑戦
出版社
河出書房新社

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出版日
2016年10月30日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

2016年7月31日、東京都知事選の投開票がおこなわれ、小池百合子氏(以下敬称略)が初当選を果たした。291万2628票を獲得し、対立候補に大差をつけての圧勝。全国で7番目、東京都では初めてとなる女性知事が生まれた瞬間だった。

本書は、2008年10月に刊行された『小池百合子の華麗なる挑戦』を増補・改題したもので、あらたに都知事としての小池の描写が追加されている。とはいえ、本書の面白さはやはり2008年以前の小池の素顔に迫ったところにあるだろう。小池本人や小池と関わりのある人々への取材を通して、「小池百合子」という人間がどのように形成されていったのかを追った本書は、現職都知事を理解するための資料として、今なお重要な価値を持っている。

小池が都知事としてどのような活躍を見せてくれるかについて、現時点では評価がむずかしい。しかし、「都民ファースト」を掲げ、都政改革、待機児童対策、都庁の働き方改革、ペットの殺処分ゼロ、海外金融系企業の誘致、そして東京五輪の成功。これらの実現をめざす人物が、どのようなキャラクターの持ち主なのかを知ったうえで、あらためて政治に注目してみると、また別の見え方が生じてくるはずだ。本書を片手に、彼女が今後どのような東京を紡いでいくのか、じっくり見定めていってはいかがだろうか。

著者

大下 英治(おおした えいじ)
1944年広島県生まれ。
著書に『美空ひばり 時代を歌う』『都はるみ――炎の伝説』『太地喜和子伝説』『経世会竹下学校』『宰相・田中角栄と歩んだ女』『激録 総理への道』『闘争! 角栄学校』『石原慎太郎の戦線布告』『小泉純一郎最後の賭け』『小沢一郎の政権奪取戦略』『平沼赳夫の「宣戦布告」』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    両親に独立心や独創性の重要性を叩きこまれた小池百合子は、自らの武器として英語とアラビア語を選び、単身エジプトに渡った。
  • 要点
    2
    小池はキャスターとして務めるかたわら、トルコ風呂改称運動や湾岸危機など、いくつもの交渉に積極的に関わってきた。
  • 要点
    3
    日本をなんとかしなければならないという危機感を抱いた小池は、悩んだ末に日本新党に入党。すぐさま頭角を現していった。
  • 要点
    4
    小池はベンチャーマインドを大切にしており、勝負どころを読みきる力に秀でた人物である。

要約

小池百合子、その生い立ちについて

独立心と独創性を重んじた両親
cacaroot/iStock/Thinkstock

1952年7月15日、兵庫県芦屋市に小池百合子は生まれた。家のまわりの芦屋や神戸には多くの外国人が居住しており、外国の雰囲気を肌で感じることができる環境だったため、百合子は知らず知らずのうちに海外への関心を深めていくこととなった。

また、両親も百合子の人格形成に大きな影響を与えた。母親の恵美子は独立心が強く、いつも「結婚は最終目標ではない」と百合子に言い聞かせていた。自分が若い頃に両親を亡くして苦労したため、手に職を持つことの重要性を誰よりもわかっていたからだった。百合子が中学に入ってからは毎月1万円を渡し、そのなかから授業料、衣服、文房具、交遊費をやりくりさせた。

くわえて、母親も父親の勇二郎も、オリジナルであることを非常に重んじていた。「人と同じことをしてはいけません。もしも、同じことをするのなら、誰よりも極めなさい。中途半端はダメ」「人とやるのは、恥だ。みんなと同じことをやって成功しても、それは当たり前のことで、そんなのはつまらん。みんなが気がつかないことをやるから、意味がある」。こうした両親の思想は、現在の百合子にも確実に受け継がれているといえる。

アラブに学ぶ
efesenko/iStock/Thinkstock

百合子がまず自分の強みとして選び、伸ばしていったのは英語だった。日本が国際的なつながりを強めていくなか、全世界で通用する英語の必要性が高まっていた。一時期は英語で身を立てることを固く決心するほど、百合子は英語の勉強にのめりこんだ。

しかし次第に、自分の英語力ではどうしても限界があると感じるようになった。そこで英語だけでなく、アラビア語も学ぼうと決めた。国連の公用語にアラビア語が加わるという事情にくわえ、アラブ諸国を知る人が日本にはあまりいないことも、アラビア語を選んだ大きな理由だった。「誰もしないことをしなさい」という母親の言葉が脳裏に浮かんだのだ。

アラビア語を最も効率よく勉強するためには、直接エジプトに飛び立ったほうがいいと判断した百合子は、通っていた関西学院大学を思いきって退学した。一見すると向こう見ずな行動ではあるが、危うい状況に立ったときのほうが、むしろプラス思考になる性格だった。

エジプトに着いた百合子は、さっそくカイロ大学に足を運んで文学部長と面会し、社会学科に入らせてほしいと直訴した。しかし、アラビア語ができないことを告げると、学部長は百合子を門前払いした。そこでアラビア語を習得するために、まずカイロ市内にあるアメリカ大学に入学した。朝から晩までアラビア語漬けになり、日本人相手の観光ガイドなどをしていくうちに、言語についても街についても詳しくなっていった。

1972年6月、百合子はカイロ大学を再び訪れ、入学許可を受けた。日本人留学生でカイロ大学を正式に卒業したのは、それまでひとりしかおらず、それも根気よく10年も勉強してのことだった。日本人にかぎらず、アラビア語に精通しているアラブ諸国の学生ですら、2年生にも進級できないのが全体の5分の1を占めていた。それでも百合子は、76年にカイロ大学を無事卒業した。日本人留学生としては、実に2人目のことだった。

【必読ポイント!】 政治家になるまで

通訳として働く

日本に帰った小池は、東京でアラビア語の通訳や講師をしながら生計を立てていた。この間、父親の会社が倒産したことで、取り立て屋の暴力団関係者が実家の芦屋に入り込むようになり、もはや生まれ育った芦屋の家に帰ることはできなくなった。こうした経験を経た百合子は、負け戦の辛さを理解し、<一度負けた人でも、立ち直るチャンスを作ること、希望の道を作ることがわたしの仕事だわ>と考えるようになった。

小池は通訳という仕事を通じて、さまざまな人脈をつくっていった。そのなかには日本の財界人や、エジプトの石油大臣、サダト大統領も含まれている。また、中東和平の鍵をにぎる重要人物であるカダフィ大佐のインタビューを担当することになったときは、3週間ほど粘りに粘って説得にあたった。

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要約公開日 2017.02.22
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