地方創生大全

未 読
地方創生大全
ジャンル
著者
木下斉
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,620円
出版日
2016年10月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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木下斉
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1,620円
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2016年10月20日
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レビュー

ゆるキャラ、地域ブランド、「道の駅」など、地域活性化に向けた取り組みには様々なものがある。だが、多額の税金が使われているにもかかわらず、そうした地域活性化事業の多くは成果をあげていないと著者は断言する。

本書は、(1)ネタの選び方、(2)モノの使い方、(3)ヒトのとらえ方、(4)カネの流れの見方、(5)組織の活かし方という5つの観点から、地域活性化事業における問題点と解決策を提示している。成功事例だけでなく、失敗事例についても取りあげられているため、どのような視点を持ち、どのような姿勢で取り組めばよいのか、多角的な視点から理解を深められるだろう。

また、著者は地方再生・活性化の問題を、「日本のいたるところで発生している構造問題のひとつ」と位置づけている。つまり、地方再生・活性化事業の問題解決について考えることは、企業や業界団体、自治体などがかかえている構造的な問題を考えることにもつながるというわけである。地方創生の現場で起きている問題は、けっして他人事ではない。

地域活性化事業に自ら投資し、地域の人と共に経営をしながら取り組む「まちビジネス事業家」の著者だからこそ、組織づくりや組織運営についての解説には説得力がある。地方活性化に関わる方にはもちろんのこと、ビジネスの現場に携わる方であればぜひ読んでいただきたい、魂のこもった一冊だといえよう。

河原 レイカ

著者

木下 斉(きのした ひとし)
まちビジネス事業家
1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長に就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学。在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2007年より熊本城東マネジメント株式会社をはじめ、全国各地でまち会社へ投資、経営を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK出版新書)、『まちで闘う方法論』(学芸出版社)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(共著、日経BP社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    地域活性化の先進地域で行われている取り組みを、そのまま自分たちの地域で導入しようとしても失敗するだけである。
  • 要点
    2
    地方だからこそ、他の地域と異なることに取り組んで需要を開拓していくべきだ。そのためには成果重視の評価制度を導入し、新たな取り組みを推奨するべきである。
  • 要点
    3
    都市から地方へ人口を移動させるという発想では、地域活性化には結びつかない。
  • 要点
    4
    地域活性化のために必要なのは、短期的なカネではなく、継続的に稼げる仕組みだ。
  • 要点
    5
    地域の人が自ら考え、実践し、失敗から学んで再挑戦することで、はじめて地域の課題を解決しうる知恵は生まれる。

要約

地方創生における3つの要素

5つの視点から問題点を整理する

地方再生・活性化の取り組みには、「何に取り組むか=事業」、「限りある資源をどう活用するか、足りない資源をどう集めるか=資源(ヒト・モノ・カネ)」、「どう取り組むか=組織」の3つの要素があり、これらがすべて機能して、初めて成立するものであると著者は考えている。

本書では、事業、資源、組織というこれら3つの要素について、5つの観点、つまり(1)ネタの選び方、(2)モノの使い方、(3)ヒトのとらえ方、(4)カネの流れの見方、(5)組織の活かし方から、地域の構造問題を整理し、問題点を指摘している。

【必読ポイント!】 ネタの選び方

先進地域の模倣をしてはならない
Digital Vision./Digital Vision/Thinkstock

地方再生・活性化のネタ選びにおけるありがちな失敗は、地域活性化の先進地域へ視察に行き、同じような取り組みを自分たちの地域でやろうとしてしまうことだと著者はいう。

たとえば、地域活性化のための手段として、ゆるキャラを採用している自治体は少なくない。これは熊本県の「くまモン」、彦根市の「ひこにゃん」などが広く知れわたり、高い経済効果をもたらしたと評価されているからだ。

だが、経済効果というのはそもそも、正しい因果関係の立証が不可能であり、新規商品と既存商品の置き換えの区分がしにくいため、数字が過大になる傾向がある。くわえて、ゆるキャラ商品に押し出され、売れなくなってしまった商品のマイナス効果も加味されていない。

このように、数字の根拠が明確でないにもかかわらず、多くの自治体が一気にゆるキャラ市場に参入したことで互いに潰しあってしまい、ともに尻すぼみに終わることも少なくない。こうした事態を避けるためには、成功事例をたんに模倣するのをやめるべきである。

本当の成功事例を見きわめるために

著者は、数多くある地方創生政策のなかから本当の成功事例を見きわめるための視点として、(1)初期投資が交付金・補助金のような財政中心ではなく、投資・融資を活用しているか、(2)取り組みの中核事業が、商品やサービスを通じて売上を立て、黒字決算となっているか、(3)始まってから5年以上、継続的に成果を出せているか、(4)トップがきれいなストーリーだけでなく数字について語っているか、(5)現地に行って1日定点観測をしてみて変化が感じられるか、という5点を挙げている。

モノの使い方

なぜ問題だらけの経営計画になるのか
bowie15/iStock/Thinkstock

「道の駅」や第3セクターは、地方にあるモノの典型的な問題事例だ。著者によると、地方の特産品などを購入できる商業施設「道の駅」は、1993年に建設省により認定制度がつくられ、2016年5月現在、全国に1093駅が存在している。しかし、「道の駅」のなかには経営不振が続いて赤字を出しているところも少なくない。

行政が出資して、施設運営を民間に委託している「道の駅」が失敗するのは、初期投資が税金で賄われているため、経営計画がずさんになりやすいからだ。また、設備投資が過剰になりやすかったり、民間側が受け身の姿勢になってしまったりといった歪みも生じやすい。

同様に、地方公共団体が何らかの形で出資し、人材を派遣して設立する第3セクターにも問題は多い。第3セクターは2015年3月現在、全国に7604あるが、関わる事業では失敗が続いている。これは、ひとつの事業で複数の政策目標が設定されており、虻蜂取らずの結果になっているためである。

第3セクターにおいては、議会や委員会などにおける合意形成のほうが優先され、国の補助金制度などの制約に則って事業内容が決定されてしまっている。また、計画立案をコンサルタントに外注し、資金調達は役所任せ、失敗しても自治体が救済するというように、責任の所在が不明瞭なことも少なくない。

地方活性化のために必要な「常識破り」

著者は、モノの使い方の失敗事例を踏まえて、地方がしなければならないことを「常識破り」だと主張し、3つの常識破りを推奨している。

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2016年10月20日
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