大前研一ビジネスジャーナル No.11
日本の地方は世界を見よ! イタリア&世界に学ぶ地方創生

未 読
大前研一ビジネスジャーナル No.11
ジャンル
著者
大前研一(監修) good.book編集部(編)
出版社
masterpeace
定価
1,650円(税込)
出版日
2016年08月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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定価
1,650円(税込)
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2016年08月26日
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4.0
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おすすめポイント

大前研一氏が経営者向けに行ったセミナーの内容を再編集し、世界の最先端の動向や事例をわかりやすく解説した本シリーズ。今回は「日本の地方創生」と「イタリアの研究」という2大テーマが収録されている。

人口減少に歯止めをかけ、GDP増大を実現させるうえで重要な施策とされる「地方創生」。大前氏は日本とイタリアの比較研究を掘り下げ、日本の課題を浮き彫りにする。同時に、日本がめざすべき地方創生のモデルとして「イタリアモデル」を提示する。これは、イタリアのように、地方レベルで「ここぞ」というニッチな強みに磨きをかけ、世界市場を相手にしていくというモデルだ。「町おこしやふるさと創生で、GDP増加につながった事例は一つもない」、「憲法では地方自治体についての明確な定義がなく、地方に権限がないことが、真の地方創生の妨げになっている」。大前氏は核心を突いた指摘や提言を次々と行っていく。

また、「イタリアの研究」では、地方都市が世界展開できている理由や、グッチやプラダ、フェラーリといった世界的人気を誇る高級ファッションや高級車などでブランド力を発揮している秘訣を、余すことなく解説している。

本書で目のつけどころを学び、国際比較から日本の課題を見つめ直すことで、新しいビジネスの種に出合えるにちがいない。同時に、「自分ならどんな地方創生プロジェクトを立ち上げるか?」とシミュレーションすることで、思考力に磨きがかかるはずだ。

ライター画像
松尾美里

著者

大前 研一(おおまえ けんいち)
株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長/ビジネス・ブレークスルー大学学長
1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。以後も世界の大企業、国家レベルのアドバイザーとして活躍するかたわら、グローバルな視点と大胆な発想による活発な提言を続けている。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長及びビジネス・ブレークスルー大学大学院学長(2005年4月に本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラムとして開講)。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開校、学長に就任。日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本の地方創生がうまくいかない背景には、憲法8章の問題がある。産業単位としての行政区分を定義し、権限を委譲するべきだ。日本のめざすべき姿は、国や政府に頼らず、地方の各都市がエンジンとなって国を動かしていく「イタリアモデル」である。
  • 要点
    2
    イタリアでは、地方都市の自立性が高く、それぞれが自前のニッチ商品で世界に冠たるポジションを築いている。また、貿易や産業発展においても、「イタリアのブランドである」ことが重要なポイントになっている。

要約

【必読ポイント!】 地方創生のカギは世界市場攻略にあり

町おこし、ふるさと創生の現実

日本のほとんどの地域において、人口減少に歯止めがかからない。2040年までに896の自治体が消滅する恐れがあるというレポートも発表されている。国を挙げて「地方創生」に挑んでいるが、その効果は出ているのか。

大前氏によると、地方創生の本来の目的を達成した取り組みは、おそらく一つもないという。もちろん、ご当地ブームや一村一品運動、ソーシャル・コミュニティビジネスといった取り組みは各地で実施されている。しかし、その効果は、街づくりや地域のイメージアップなど、きわめて限定的であり、その地域のGDP増加につながったものはないといってよい。

また、「ふるさと創生」や「リゾート法」といった国家主導のプロジェクトが行われたものの、集客できないテーマパークや赤字の第三セクターが増えただけで、成功事例が生まれていないのが現状だ。

世界の「地方創生」成功事例
zimmytws/iStock/Thinkstock

世界の地方創生の事例に目を向けると、様々なタイプがあることがわかる。例えば、シリコンバレーや、合弁企業が1000社以上集っている北京の中関村など、地域でイノベーションを創出する「シリコンバレー型」、海外企業を誘致し、バックオフィス業務を現地の人が担う「企業誘致、BPO型」、地元の食材を活かした「農産物、食型」などが挙げられる。マイクロソフトやアマゾン、イケアなど、1人の起業家が地元で起業し、世界化を果たす「1人の起業家型」も多い。

一方で、なぜ日本の地方創生はうまくいかないのか。その根本には、「地方自治」について書かれた憲法8章の問題が横たわっている。この8章には「地方公共団体」と明記されているだけで、「地方自治体」という言葉も、都道府県の明確な定義も登場しない。つまり、司法・立法・行政の三権を持つのは中央政府だけというわけだ。そのため、都道府県や市町村に、どのような権限を付与すればいいのかが不明確になっている。

本来、地方経済を活性化させるには、その地域に独自の財源と、司法・立法・行政の三権を与えて、地域の自由度を高めることが欠かせない。日本はコミュニティ、産業単位としての行政区分を定義し、権限を委譲する必要がある。行政単位を大きい順に道州、地域・広域連合(県)、自治体(市町村)、コミュニティ(自治体、商店街)」と4つに分類するとしたら、「市町村レベル」で、地域独自の強みを明らかにし、それを活かして世界展開をめざすことが望ましい。

また、地方創生モデルには、地産地消を基本とする「江戸時代の自給自足経済」モデル、連邦制や道州制のように各州が非常に大きな権限を持つ「米国モデル」、そして、小さい町の大半が自前の産業を持ち、グローバル展開することで経済的な自立を図る「イタリアモデル」の3つがある。中でも日本に最適なのは、「イタリアモデル」だ。国や政府に頼らず、地方の各都市がエンジンとなって国を動かしていくことが、一番現実的な選択肢だといえる。

イタリアとの比較で浮き彫りになる日本の課題
haveseen/iStock/Thinkstock

現在、生産額、輸出額ともにイタリアと日本の地方産業では大きな開きがある。イタリアのコモの絹は生産額が約3000億円、輸出額が約1800億円だという。また、1000億円規模ばかりではないものの、イタリアには自前の産業を持つ町が1500も存在する。さらには、顧客ターゲットを「ハイエンド」「アッパーミドル」にすることで、高値を保持し、利幅を確保している。

これに対し、日本の地方には多くの伝統工芸品があるものの、経済規模が100億円を超える町はほとんど存在していない。おまけに、「ロウワーミドル」「ボリューム」ゾーンのセグメントを狙うため、新興国との価格競争により安値で買いたたかれ、利幅をとれなくなっているのが現状だ。

もちろん、イタリアの中小企業も、中国やEU内の低コスト製品との価格競争にさらされていたが、それをクラスター化によって乗り越えてきた。例えば、トスカーナでは

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