東芝解体 電機メーカーが消える日

未 読
東芝解体 電機メーカーが消える日
ジャンル
著者
大西康之
出版社
定価
864円
出版日
2017年05月20日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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大西康之
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864円
出版日
2017年05月20日
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明瞭性
4.0
革新性
4.5
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レビュー

東芝に代表される、日本の経済成長を支えてきた大手電機メーカーが大きな曲がり角を迎えている。かつて世界市場を席巻した日本の電機産業は、新興国の新規参入企業に市場を奪われ、世界の消費者に売れる魅力的な製品を開発できていないのが現状だ。

これは日本経済にとって「敗戦」とも呼べる事態である。長年にわたって日本の電気産業は、電力会社やNTTへの機器納入に依存した経営で収益を確保してきた。その一方で、半導体や家電、携帯電話などのビジネスは「副業」と位置づけられ、真の国際的な競争にさらされてこなかった。

アジアなどの国や地域がまだ工業化を十分に果たしておらず、キャッチアップに時間がかかった時代なら、それでも日本企業の競争優位性は保たれていたかもしれない。しかし、高度成長時代やバブル期の成功体験に酔いしれ、社内の人事抗争に明け暮れていた日本企業は、戦略的な経営戦略を深めてこなかった。これは着々と力を蓄え、戦略的展開を準備していた新興国企業とは対照的だ。日本のメーカーが没落していくのは、なかば必然的だったのである。

これまで営々と築かれてきた業界秩序が崩れていく中、電機各社は過去の失敗から何を学び、再興に向けてどんな手を打つべきなのか。本書はその処方箋を示してくれる一冊だといえよう。

毬谷 実宏

著者

大西 康之 (おおにし やすゆき) 
1965年愛知県生まれ。1988年、早稲田大学法学部卒業後、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日経ビジネス編集委員、日経ビジ経済新聞編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版社)、『三洋電機 井植敏の告白』など著書多数。『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP社)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本の電機メーカーを支え続けたのは、NTTへの機器納入という立場と、電力会社と結びついたことによる安定した需要の存在だった。
  • 要点
    2
    市場競争の激化や原子力発電の退潮によって安定した財政基盤が崩れた今、電機各社は新たな成長モデルを早急に見いだす必要がある。
  • 要点
    3
    東芝は原発を大きな成長事業と見込んだが、東日本大震災の影響により、多額の損失を抱えることになってしまった。
  • 要点
    4
    失敗の教訓を学び、人材と技術と経験で復活の糸口をつかんで生まれ変わるには、ここからが正念場となる。

要約

電機敗戦の年

日本の電機業界の凋落相次ぐ
Stockbyte/Stockbyte/Thinkstock

2017年は「電機敗戦の年」として刻まれることになるだろう。

米国にある東芝の原発子会社であるウェスチングハウスが、米連邦倒産法第11章(チャプターイレブン)の適用を申請し、事実上倒産した。米原発市場で総額1兆円の損失を出した東芝は、すでに白物家電事業を中国の美的集団に売却しており、主力の半導体事業も今後売却する計画だ。

2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、国内の原子力発電所の新設は絶望的になった。東芝は事実上の破綻状態を隠すため、粉飾決算に走ったが、内部告発で露見。解体の道を走ることになる。

東芝のみならず、シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り、三洋電機の白物家電事業は中国のハイアール・グループに買収された。かつて半導体の売上高で世界一を誇ったNECも、2017年3月期の売上高を3兆円以下に減らしており、売上高5兆4000億円を超えた2000年度と比べると、ほぼ半減している。

また、パナソニック(松下電器産業、三洋電機、松下電工)の2014年3月期の売り上げは7兆7365億円だったが、2007年3月期の12兆9908億円と比較すると、こちらも大幅に落ち込んでいる。

負けたのには明確な理由があった

日本の電機大手が、家電や携帯電話のトップの座から転がり落ちた理由を一言でいえば、それが絶対に負けられない「本業」ではなかったからだ。彼らには、「NTTの下請け」という安定した収益を出せる本業があったのである。

国民から集められた何兆円もの電話料金はいったんNTTに集まり、そこから「電電ファミリー」ともいわれる企業に「設備投資」という形で流れるようになっていた。NTTなら値段をたたくこともなければ、発注が突然減ることもない。ファミリー企業にとっては「上客」だったというわけだ。こうした企業はNTTには可愛がられた。しかしその一方で、自分の頭で考え、決断する能力を失ってしまった。

日本の電機産業を弱体化させたもう一つの病巣は、東京電力が「家長」として君臨し、東芝を「正妻」とする「電力ファミリー」だった。旧通産省と電力会社が全体図を描き、東芝、日立、三菱重工業など重電メーカーが設備を作り、それに電線や電力計のメーカーがぶらさがるという構図である。各社は特定の電力会社と結びつき、長年にわたって安定した受注を獲得していた。

産業ピラミッドの崩壊
champja/iStock/Thinkstock

電力設備投資の総額は1980年代初頭、産業界全体の設備投資の約4割を占めたとされる。しかし、日米貿易摩擦や日米構造協議で、日本の総合電機の競争力の源泉となっていた談合構造が問題視されるようになった。自由化が叫ばれ、米国製の半導体や通信機器などを買わせる動きも生まれた。これにより、電電ファミリーは大きな打撃を受けた。

さらに、2008年のリーマン・ショックがその流れに追い打ちをかけ、2011年の東京電福島第一原子力発電所原発事故が、原発の安全神話を支えてきた電力ファミリーの技術面の限界を露呈させた。これにより、巨額の賠償金を背負う東京電力からの「ミルク補給」が受けられなくなった電力ファミリーも崩壊した。

戦後の日本の電機産業を支えてきた、この2つの産業ピラミッドが瓦解したことが、「電機全滅」の最大の要因となった。

ここからが正念場

ただ、日本の電機産業が復活する可能性はある。今、試されているのは「変化する力」だ。

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