米中戦争
そのとき日本は

未 読
米中戦争
ジャンル
著者
渡部悦和
出版社
定価
907円
出版日
2016年11月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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そのとき日本は
著者
渡部悦和
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907円
出版日
2016年11月20日
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4.0
明瞭性
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革新性
4.5
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レビュー

急激な経済成長を遂げ、世界第2位の経済大国となった中国。その国防費は急速に増大しており、軍事大国として見ても世界第2位ないし第3位の座に位置するまでになった。

この大国を率いる習近平国家主席の夢は、「偉大なる中華民族の復活」であり、「米国と対等かそれ以上の覇権国家になること」だと、元陸上自衛隊東部方面総監であった著者は考えている。アジアの覇権国家たらんとする中国の姿勢は、尖閣諸島や南沙諸島などの領有権の主張にも表れているという。

また、習近平主席は、2013年6月のオバマ大統領との会談の中で「新たな大国関係」を打ちだし、米中が対等な大国であることを前提に、米中で太平洋を二分することを提案した。この発言の真意は、中国がアジアから米国を追い出し、アジアの覇権を握ることにあるといえる。太平洋の両岸に対峙する2つの大国、すなわち米国と中国が、ふとしたきっかけから戦争状態になるケースは十分に考えられるだろう。

本書は、多くの資料を緻密に読み解いて検討された、米中戦争シミュレーションの成果だ。米中という超大国による戦争は、必然的に日本にも大きな影響を及ぼす。米中戦争という最悪の事態は、無論起こらないことが望ましく、回避するための不断の努力は必要不可欠だ。しかしその努力にもかかわらず、米中戦争が起こったらどうするべきか。

「危機管理の本質は、常に最悪の事態を想定し、万全の備えをしておくことである」と冷静に説く一冊である。この問題から目をそむけることは、許されない。

弘末 春彦

著者

渡部 悦和(わたなべ よしかず)
ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー、元陸上自衛隊東部方面総監。1978年東京大学卒業、陸上自衛隊入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。2013年退職。本書が初の著作となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    中国はアジア西太平洋地域から米国を締め出し、同地域での覇権国家を狙っている。
  • 要点
    2
    米国排除を狙う中国の戦略は「接近阻止/領域拒否(A2/AD)」であり、対する米国の作戦構想は「エア・シー・バトル(ASB)」である。
  • 要点
    3
    実戦経験豊富な米軍だが、陸、海、空、宇宙、サイバーの全ドメインで米軍と拮抗した力を持つ軍隊との戦争経験は乏しく、そうした実力を持ちうる人民解放軍は侮れない存在である。
  • 要点
    4
    今日の日本は、千年に一度の地殻変動と厳しい安全保障環境という内憂外患に苛まれており、しっかりとした備えが必要不可欠だ。

要約

覇権をめぐる中国とアメリカ

ライバルを必ず潰してきた米国
Michael Fitzsimmons/iStock/Thinkstock

米国の外交アナリストであるマイケル・リンドの著書『米国流の戦略』には次のような一節がある。「米国の政治家は〔中略〕、19世紀に大国として台頭して以降、2つの目標を堅持してきた。すなわち、北米における米国の覇権の維持、そして欧州・アジア及び中東における敵対的大国の覇権の予防である」。

実際、グローバル覇権の確立のため、米国には他の有力国の台頭を妨害してきた過去がある。具体的には冷戦期のソ連、日本、ドイツだ。米国にとって冷戦期の最大のライバルはソ連だったが、第二次大戦で敵として戦った日本とドイツにも一定の警戒感を持ち続け、その勢力増大を抑えてきた。ドイツの封じ込めにはNATOが活用されたし、日本とは日米半導体戦争などの激しい経済対立があった。

そして今、米国にとって最も手強い国家が中国なのである。

新たな覇権国の台頭が戦争をもたらす

「トゥキディデスの罠」とは、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスが唱えた、「新たな覇権国の台頭と、それに対峙する既存の覇権国の懸念や対抗心が、戦争を不可避にする」という仮説のことだ。

トゥキディデスは、紀元前5世紀頃、古代ギリシャの覇権国だったスパルタと、新たに台頭しつつあったアテネとの緊張関係が、ペロポネソス戦争を引き起こしたと結論づけた。

同様の例としては、台頭するドイツと既存の覇権国である英国との緊張関係によって、第一次世界大戦が引きおこされたことが挙げられよう。

ハーバード大学ケネディ・スクールのグラハム・アリソン教授によると、過去500年の歴史の中で、台頭する大国が既存の大国に挑戦する場合、16ケース中12ケースで戦争になったという。アリソン教授は、「米国と中国がトゥキディデスの罠を回避できるか否か」が、現代の世界秩序を考える際の焦点になると強調している。

【必読ポイント!】 米中それぞれの戦略と作戦

中国の戦略は接近阻止/領域拒否である
Allexxandar/iStock/Thinkstock

米中の軍事関係を論じる際の最大のキーワードは、中国軍の「接近阻止/領域拒否(A2/AD)戦略」である。A2/ADとは、Anti-Access/Area Denialの略だ。

冷戦期の米軍は「前方展開戦略」を採用し、西ドイツや、日本、韓国に基地を確保していた。だが冷戦終了後、これら前方展開基地からの撤退や要員減が進み、有事の際には米国本土から直接、部隊を展開する戦略へと転換している。A2/ADはこうした米軍の緊急展開を妨害し、米軍を西太平洋地域から排除することを狙ったものである。

中国のA2/ADを支えているのが、中・長距離ミサイルである。米国は冷戦時にソ連と中距離核戦力全廃条約(INF全廃条約)に合意したため、アジア太平洋地域では射程500kmから5500kmの地上発射型ミサイルの開発、取得、実験を自制している。一方、中国は同条約の当事者ではないことから、こうした制約をもたない。そのため、中国の各種ミサイルは、米軍の空母艦隊や在沖縄米軍基地などに対する重大な脅威となっている。

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