伊藤元重が警告する日本の未来

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出版社
東洋経済新報社

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定価
1,650円(税込)
出版日
2017年06月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

日本を代表する経済学者である伊藤元重氏が、2025年に向けた世界経済や日本経済の変化についてまとめた一冊とあれば、読まずにはいられまい。著者によると、「経済の流れ」を捉えることで今後の経済動向を見通すことができるという。

本書の構成はこうだ。最初に著者は、AIやIoTなどの技術革新が世界経済やビジネスシーンにどのようなインパクトを与えるかを端的に解説する。例えば、金融業界の既存の枠組みの解体・再構築を促すフィンテックといった、ビジネスとテクノロジーの最前線を概観しながら、世界経済停滞の真因に迫っていく。

つづいて、世界の通商政策の変化を中心に、グローバル経済の流れを俯瞰し、その背景を読み解いていく。グローバリゼーションにより、多国間で協定を結び自由化を進めてきたが、その流れに大きな変化が生まれている。先進国では、自国の雇用に打撃を与え、移民との摩擦も生じていることで、「保護主義化」が進もうとしているという。

最後に、デフレ脱却に向けた政策や働き方改革、社会保障改革などの動向とともに、今後対処すべき課題がわかりやすく、包括的に提示されていく。著者の鋭い分析に目を見開かされることは間違いない。

経済の動向をつかみ、今後の未来を見通すうえで、あらゆる業種のビジネスパーソンにとって頼りになる一冊だ。社会の課題を捉え直す新たなレンズを手に入れ、自分や自社のとるべき選択について思いを馳せていただきたい。

ライター画像
山田雄一郎

著者

伊藤 元重(いとう もとしげ)
東京大学名誉教授。学習院大学国際社会科学部教授。
1951年静岡県生まれ。東京大学経済学部卒。1979年米国ロチェスター大学大学院経済学博士号(Ph.D.)取得。東京大学大学院経済学研究科教授を経て、2016年より現職。専門は国際経済学、ミクロ経済学。復興推進委員会委員長、安倍政権の経済財政諮問会議議員、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)社外取締役も務める。『東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと』(東洋経済新報社)、『経済大変動――「日本と世界の新潮流」を読み解く60の視点』(PHPビジネス新書)、『きもの文化と日本』(共著、日経プレミアシリーズ)、『どうなる世界経済――入門 国際経済学』(光文社新書)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    経済の長期停滞の原因は需要の落ち込みではなく、技術革新が減り、生産性が向上しないことである。今後はAIやIoTなどの技術革新が、電力革命以上のインパクトを世界経済に与える可能性が高い。
  • 要点
    2
    通商政策は、アメリカを中心に多国間協議を重視する「マルチ」から、二国間協議を重視する「バイ」へと変化している。また、移民の流入などによって、先進諸国で「保護主義化」と国内の分断が進んでいる。
  • 要点
    3
    デフレ脱却の解決策として、働き方改革による労働生産性の向上が急務である。

要約

世界経済を劇的に変える、新技術の可能性

AIやIoTの予想を超えるダイナミズム

社会を大きく変えるものは著者によると次の2つである。それは「技術」と「社会の要請」であり、それぞれシーズとニーズと言い換えてもよい。

AIやIoT、ビッグデータ、情報のデジタル化。こうした技術革新がここ5年から10年で、世の中のあり方を大きく変えると著者は予測している。19世紀の電力革命の例を考えてみるとわかりやすい。発電機が発明され、電力会社が設立され、発電所から消費地へ送電線がつながることは、電力という新技術が起こした巨大なイノベーションの必要条件だった。しかし真に世界を変えたのは、敷かれた送電線から、電気を利用した新しい機械などを考案し、実行した人たちだ。

そして、今まさにこうした大きな変革が、AIやIoTなどの領域で起ころうとしている。電力革命に匹敵する、もしくはそれ以上のインパクトを社会に与えるかもしれない。

人口減少でも経済成長は可能
scyther5/iStock/Thinkstock

著者は、人口が減少しても、経済は成長できると主張している。なぜなら、生産要素が増えなくても、技術革新やビジネスのやり方の変化により、生産性が向上するケースも考えられるからだ。つまり、新たなイノベーションが人口減少というマイナス要因を跳ね返すというわけだ。

実際のところ、アメリカの「黄金の100年間」は、技術革新によってもたらされたといえる。電力が供給され、様々な家電製品が普及し、自動車の利用が増えることで、社会全体にダイナミックな変化が起きた。しかし、マクロ経済学者のゴードンによると、これほどの影響力のある技術革新は現在では減ってきているという。

著者は、経済の長期停滞の原因は需要の落ち込みではなく、技術革新が起こらず生産性の向上が実現できないためだと考えている。となると、金融緩和や財政支出で経済を回復軌道に乗せるのは限界があるという見方もできる。そこで、日本企業に対し、日本の市場が縮小するというイメージを捨て、生産性向上のために日本国内への投資を増やすことを、著者は提唱している。

技術革新を論ずるうえで大事な5つの視点

著者は、技術革新によってどのように産業やビジネスモデル、人々の働き方が変わっていくかについて、次の5つの視点を提示している。

1つ目は、技術革新によって、モノやサービスの流れが短くなることだ。アマゾンなどのECサイトの登場や、フィンテックの登場はこれにあたる。

2つ目は、財やサービスを提供する側とそれを利用する側の関係が、より継続的な形に変わってくることである。定額会費制などの「サブスクリプションビジネス」と呼ばれるものがこれにあたる。

3つ目は、既存のビッグビジネスが破壊の脅威にさらされていくということだ。金融機関にとってのフィンテックの存在は、まさにその典型である。

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