不道徳な見えざる手
自由市場は人間の弱みにつけ込む

未 読
不道徳な見えざる手
ジャンル
著者
ジョージ・A・アカロフ ロバート・J・シラー 山形浩生(訳)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2017年05月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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自由市場は人間の弱みにつけ込む
著者
ジョージ・A・アカロフ ロバート・J・シラー 山形浩生(訳)
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出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2017年05月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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レビュー

本書のテーマは、私たちが日常的に出会うさまざまな「カモ釣り」だ。扱われるトピックは、スーパーマーケットの商品配置、金融市場における株の評価、クレジットカードシステム、自動車、家、医薬品の購入、選挙における広報活動など多岐にわたる。

カモ釣りは、騙す側である「釣り師」と、騙される側である「カモ」の双方がいて、はじめて成り立つ。しかし本書の狙いは、多くの場面でカモ側になってしまう私たちに、釣り師に騙されない方法を提示することだけにとどまらない。ありとあらゆるカモ釣りのシステムがどのように生まれたのか、そしてそこで何が起こっているのかを詳細に説明することで、カモ釣りが人々の生活に与える影響の大きさを示すことにある。本書を読めば、カモ釣りが日常のいたるところで行なわれていることが理解できるだろう。

アダム・スミスが「見えざる手」を提唱した頃と比べて、現代の生活水準は何倍も豊かだ。それは自由市場が機能しているからに他ならない。しかし自由市場には罠がある。私たちは簡単に騙されてしまう生き物だということを認識しなければ、その罠から逃れることは難しい。

ごまかしと詐欺に満ちた市場のなかで、消費者は自分の心とどう付き合い、どのように身を守るべきか。ビジネスパーソンはどう働くべきで、政府関係者はそれをどう規制するべきなのか。

私たちはときに消費者として、ときにビジネスパーソンとして活動している。そんな私たちだからこそ、本書からは多くの刺激が得られるだろう。

山崎華恵

著者

ジョージ・A・アカロフ (George A. Akerlof)
ジョージタウン大学教授。2001年ノーベル経済学賞受賞。著書に『アニマルスピリット』(シラーとの共著)、『アイデンティティ経済学』(レイチェル・クラントンとの共著)など

ロバート・J・シラー (Robert J. Shiller)
イェール大学スターリング経済学教授。2013年ノーベル経済学賞受賞。著書に『アニマルスピリット』(アカロフとの共著)、『それでも金融はすばらしい』『投機バブル 根拠なき熱狂』『新しい金融秩序』『バブルの正しい防ぎかた』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    カモ釣りをうながすシステムは日常に散見される。なかでも自動車や結婚、住宅ローンなどの特別な買い物は、カモ釣りにおける絶好の機会である。
  • 要点
    2
    カモ釣りが成立するのは、「見たいものだけを見て、都合の悪いものを見ない」という特性が人間の脳にあるからだ。しかも私たちは自分にとって都合のいいように物語を接ぎ足す傾向がある。
  • 要点
    3
    自由市場が取引する双方に利益をもたらすのはたしかだ。しかしより重要なのは何を選択するかである。正しい選択はよい商品やメーカーを発展させ、間違った選択は釣りや粗悪品を増やしてしまう。

要約

釣り均衡を考える

誘惑はいたるところにある
andriano_cz/iStock/Thinkstock

アメリカにいるほぼすべてのビジネスパーソンの目標、それは人々にお金を使わせることである。

たとえば卵や牛乳が売場の奥にあるのは、戦略的な理由がある。みんながよく買うものを奥に配置すると、顧客はお目当ての商品を求めて店内を横断する。そのうちに忘れていた別のニーズが喚起され、予定していなかったものを購入してしまう。レジ横にキャンデーや雑誌、あるいはかつてタバコが置かれていたのも偶然ではない。

こうした行動を説明する際、「みんながあまりにも物質主義的だから」と個人に原因が求められることが多い。しかし本当の問題は個人ではなくシステムにある。需要と供給がバランスを保って変動への傾向をみせなくなる状態のことを「均衡」というが、自由市場には、あらゆる人間の弱みにつけこんだ「釣り」が仕掛けられている。そういう意味でこれは「釣り均衡」と呼ぶべきだろう。なかでも自動車購入や結婚、住宅ローンなどの特別な買い物は、カモを釣る絶好の機会として知られている。

金融市場におけるカモ釣り

金融市場で見られるカモ釣りは、「評判マイニング」という手法を用いている。自分たちの評判をマイニング(傷つける)することで、相手をカモにするのだ。

1990年代末から2000年代初頭にかけて、アメリカの格付け機関は債券の格付けだけでなく、住宅ローンから派生する金融派生商品の格付けを行なっていた。ここで問題が発生した。金融派生商品は目新しいうえに複雑だったため、正しく格付けされているか、買い手側からだとわかりにくかったのだ。

その結果、市場には実際の価値より高く格付けされた商品が散見されるようになり、不当に格付けが高い粗悪な商品まで出回るようになった。そしてその価値が本当は高く設定されているとわかったとき、金融バブルは崩壊した。

誠実であることへのインセンティブが損なわれた
Monkey Business Images/Monkey Business/Thinkstock

いつから金融市場はこんなことになってしまったのだろうか。

1970年代における投資銀行の役割は、「大企業の銀行」として顧客に金融のアドバイスをすることだった。だから顧客を集めるために評判がとても重要だった。投資銀行にはよい証券をつくる動機があったし、格付け機関も正しく格付けする動機をもっていた。

しかし2000年以降、状況は一変した。投資銀行が受け取る「預金」は、巨額の流動資産を持った大口投資家からのものとなった。毎晩何十億ドルも投資銀行に預け、投資銀行は翌日に払い戻す。この担保付きの取引にはリスクがないことから、多くの預金が集まった。

また投資銀行は、「機関投資家の銀行」として、大量の株式取引を仲介し転売するようになった。潜在的な利益相反が起こりやすい状態に置かれたことで、「顧客利益最優先」の倫理が失われてしまった。

さらに格付け機関が投資銀行から手数料を取るようになると、のちに高い利息が得られるよう、投資銀行にとって都合のよい格付が生み出されるようになった。

こうして生まれたのが、実際の資産価値とは異なる、誤った格付けだ。実際に何が起きているか理解できた人々は、そうした商品を空売りすることで高い利潤を得ることができた。しかし一方で、一夜にして廃業するほどの損失を抱えた投資銀行もある。

2008年に住宅ローン証券の格付けについて、適切な審査と評価基準が義務付けされるまで、この状態は続いていた。

クレジットカードのカモ釣り

クレジットカードを使っている人は、現金払いのお客より13%も多くのチップを残すという研究結果がある。

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