習近平が隠す本当は世界3位の中国経済

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習近平が隠す本当は世界3位の中国経済
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習近平が隠す本当は世界3位の中国経済
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出版日
2017年06月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

2017年2月、産経新聞で「中国、GDP47兆円水増し」という記事を目にし、著者は「やはり今年もそうだったか」と心の中でつぶやいた。中国の地方政府が集計したGDP統計の合計値が、国家統計局によるGDPの集計値を上回っていたのである。

著者によると、中国経済をウォッチしている人間にとって、中国の経済統計に偽装が行われていることはもはや常識だという。中国政府は長い間、統計の虚偽を認めてこなかった。ところが、2017年1月に歴史的な出来事が起こる。中国で最も不景気だと言われる遼寧(りょうねい)省で、経済統計の水増しが発覚し、陳求発省長がこれを公式に認めたのである。地域経済の成長が鈍化するなか、地域での税収を実際よりも多く見せかけることが横行している中国。偽装の背後には、経済統計が地方幹部や担当官の評価や出世にも直結している事実や、高度に政治的な要因がある。

世界2位だと言われている中国のGDPは、本当はどの程度の規模なのか。本書を読めば、限りなく真実に近い姿を知ることができるだろう。

現代の戦争は「見えない戦争」である。宇宙空間やサイバー空間における中国軍の侵攻は、世界中で問題になっている。そして、中国共産党とその発表を鵜呑みにしたマスコミによって、日本人の多くが、「中国は世界第2の経済大国」という心理攻撃に晒されているのである。

中国経済はいま音を立てて崩れ去ろうとしている。今こそ中国による「経済洗脳」を解く絶好のチャンスだ。

著者

上念 司 (じょうねん つかさ)
1969年、東京都に生まれる。中央大学法学部法律学科卒業。日本長期信用銀行、臨海セミナーに勤務したあと独立。2007年、勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立し、取締役・共同事業パートナーに就任。2011年の東日本大震災に際しては勝間氏と共に「デフレ脱却国民会議」を設立し、事務局長に就任。震災対策として震災国債を日本銀行の買いオペ対象とすることを要求。白川方明総裁までの日本銀行の政策を強く批判してきた。著書には、ベストセラーになった『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書)、『「日銀貴族」が国を滅ぼす』(光文社新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    中国において、経済成長は地方政府にとってのノルマとなっている。地方幹部などの評価や出世に直結するため、発表されるGDP統計の数値は水増し粉飾されている。
  • 要点
    2
    水増し粉飾分を取り除くと、実際の中国のGDP規模は未だに日本を超えていない。
  • 要点
    3
    過大な投資による過剰な生産能力が、企業業績の悪化を引き起こし、経済低迷の原因となっている。
  • 要点
    4
    中国が経済発展を続けるには、投資主導の経済から消費主導の経済への転換が欠かせない。しかし、中国国民の貯蓄性向は高く、転換はうまく進んでいない。

要約

こんなにおかしい中国GDP

経済成長というノルマ

中国のGDP統計が疑わしいということは、以前から多くの人に指摘されてきた。日本より国土が広く、人口も10倍の規模である中国が、締め日からたった20日でGDPの確報値をまとめあげてしまうのだから。

日本の場合は、確報値を発表するのに1年近い時間を費やす。そのうえ、GDPの統計は内閣府、失業率は総務省統計局、貿易統計は財務省というように、集計の担当が分かれており、それぞれのチェック作用が働く。もちろん、これらの政府機関は、統計の対象となる業界との間に利害関係はない。

他方、中国では各地の地方政府と国家統計局が統計の集計を担っており、これらの機関は所轄地域のGDPと密接な利害関係を持っている。なぜなら中国では、経済成長の目標とは達成しなくてはならないノルマだからだ。

「大躍進」政策という失敗の前例
LIVINUS/iStock/Thinkstock

中国には、経済成長ノルマが大きな社会混乱を招いた前例がある。1957年、毛沢東が打ち出した「大躍進」政策だ。

毛沢東は、鉄鋼や食糧などの生産高について、無茶苦茶に高い生産目標を掲げた。これが絶対に達成できない目標であることに、多くの人は気づいていた。しかし、上からの目標は絶対であり、未達成は「死」を意味する。よって、実際には目標を達成していないのに、各地の幹部は「目標達成」の報告を送った。

農民たちは粗鋼生産量のノルマ達成のために、農機具を溶かして供出した。そのため、それ以降の農作業ができなくなってしまった。これにより、農業生産は壊滅的な打撃を受け、国内には餓死者があふれた。大躍進政策による犠牲者は控えめに見積もっても4500万人にのぼる。さすがに毛沢東は1959年に国家主席を辞任したが、中国共産党の体質は基本的に当時から変わっていない。

ソ連に学んだ統計偽装

第二次世界大戦後、中国は同じ社会主義陣営のソ連から多くのことを学んできた。旧ソ連は自国経済を実際以上に大きく見せることで、長い間アメリカと覇を競った。

ソ連では、経済統計が「アメリカに追いつき追い越せ」という国家のイデオロギーに従属するものとなっていた。そのため、公式統計で発表される経済成長率は、実際の成長率よりもかなり過大なものになったという。

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要約公開日 2017.11.10
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