「自分で考える力」の授業

世界のエリートが学んできた
未読
「自分で考える力」の授業
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世界のエリートが学んできた
未読
「自分で考える力」の授業
出版社
日本実業出版社
出版日
2013年07月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「日本人は自分の意見を主張することが苦手だ」という話はよく耳にする。確かに日本の教育課程では座って講師の話を聞くのが主流であり、意見の場はない。問題には最初から答えが存在し、正解か不正解かによって成績が決まる。しかし、実社会はそんなにうまくできているだろうか。ビジネスの現場では確実に正解であるといえるケースなどほぼ存在しない。それどころか、問題すら予め設定されているものではない。ビジネスの現場では常に論点を定義し、確からしい根拠に基づいた結論(意見)を見出し突き進むしかない。しかし、残念ながらこの方法論は現在の教育課程ではほとんど教えられていない。

私がかつて所属していたコンサルティング会社では、とにかく上司から「お前の意見はなんだ?」「状況はわかった。それで、お前はどうするべきだと思うんだ?」と問い詰められ続けた。「まずはポジションを取れ」ということである。そうしているうちに自然と自分の意見を持つスキルが身に付いたと思う。

誰かがポジションを取らなければ物事は前には進まない。会議をしても何も決まらず無駄な時間となる。特に組織に減点主義、責任の擦り付け合いが蔓延すると誰もポジションを取らなくなる。わざわざリスクを冒す経済合理性がないからだろう。こういった文化に染まった会社が急に変わることはまずないだろう。「ポジションを取る人を社内で評価しよう」というポジションを取る人がいないからだ。

しかし、自分の意見を主張することは楽しい。議論をすることで新しい発見を得られる快感は何にも代え難い。私はもう座学に耐えられない身体になっている。本書を読み「自分の意見を作る」力を身に着け、主張する楽しみに気付いてしまったら、あなたもきっと座学では満足できなくなることだろう。

著者

狩野 みき
慶應義塾大学、聖心女子大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。グローバル水準の考える力・プレゼン力・作文力を指導するスクール、Wonderful Kids主宰。子どもの考える力教育推進委員会、代表。
20年にわたって、大学等で「考える力」と英語を教える。慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了。

本書の要点

  • 要点
    1
    自分の意見は、①この事態について自分が理解していることは何か、確認する、②この事態をもっと理解するために調べなければならないことは何か、を把握する、③この事態をどう切り抜けるべきか、という「自分の意見」を持つ、の3ステップを踏む。
  • 要点
    2
    的確な意見を言うためには、状況の理解を深め、根拠を重視し、視点を広め、未来を予測する力が求められる。

要約

【必読ポイント!】「自分の意見」の作り方

ハーバード大学も提唱する「自分の意見の作り方」3ステップ
XiXinXing/iStock/Thinkstock

本書は各章の冒頭で欧米の授業風景から始まる。先生と生徒たちが対話をしながら授業を進めているのだが、欧米では先生と生徒の対話のなかでどのようにして自分で考える力を養っているのかがイメージできることだろう。ハイライトでは対話の光景は割愛させていただくが、本書ではよりイメージを持ちながら理解ができるだろう。

それでは、欧米の学校で当たり前のように教えられている「自分で考えて動ける」ようになる力を、私たちはどう身につければよいのだろうか。著者はそれを「自分の意見の作り方の3ステップ」と呼んでおり、以下の3ステップを指している。

ステップ1:この事態について自分が理解していることは何か、確認する

ステップ2:この事態をもっと理解するために調べなければならないことは何か、を把握する

ステップ3:この事態をどう切り抜けるべきか、という「自分の意見」を持つ

例えば「理想のリーダー像とは何か」というテーマに対してであれば、①自分がリーダーについてどんなことを知っているか確認し、②リーダーに関して疑問に思うこと・知りたいことを調べ、③「理想のリーダー像とは何か」と各自意見を持つというステップを踏む。

上記の3ステップでは、特に「理解する力」が求められる。次章以降はどうすればきちんと理解することができるかについて解説がなされているが、それに入る前に考える力の基礎であるクリティカル・シンキングとは何かを見てみよう。

クリティカル・シンキングとは?

クリティカル・シンキングとは、情報や意見・主張の是非を吟味し、よりよい答えを模索するための思考法である。簡単に言えば、「他人に流されずに、自分でじっくり考えるための思考法」である。日本語では時々、「批判的思考」と訳されることもあって、相手を批判して自分の主張を通すためのスキルのように誤解されることがあるが、「非難する」のではなく、「物事の是非を慎重に判断する」という解釈が正しい。

クリティカル・シンキングで重要なのは根拠だ。ある主張の根拠に対して、①根拠として述べられている内容は「正しい」のか、②根拠が根拠として成立しうるか検証するのがクリティカル・シンキングだ。

本章ではクリティカル・シンキングを用いたエクササイズ(初級・中級・上級)が紹介されており、実際に考えながらクリティカル・シンキングの素養が得られる。こちらについては是非本書をご参照いただきたい。

理解を深める

「本当に理解できているのか?」をチェックする7つの方法
violet-blue/iStock/Thinkstock

「自分の意見を作る」には3つのステップがあり、正しく「理解する」ことが求められるのは前章で触れた通りである。

本章では、理解を養うための7つのTipsが紹介されている。その7つとは以下の通りだ。これらを常に意識しながら考えることで、自然と自分の理解が十分か判断することができるのだろう。

1.情報を5歳児でもわかるように平易な言葉で説明する

2.「パラダイム」「コンプライアンス」といったカタカナ語は正しく理解しておく

3.英語などの外国語に訳して納得感があるかチェックする

4.理解できていないことを一覧化する理解度チェックシートを作成する

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要約公開日 2014.03.18
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