本書は各章の冒頭で欧米の授業風景から始まる。先生と生徒たちが対話をしながら授業を進めているのだが、欧米では先生と生徒の対話のなかでどのようにして自分で考える力を養っているのかがイメージできることだろう。ハイライトでは対話の光景は割愛させていただくが、本書ではよりイメージを持ちながら理解ができるだろう。
それでは、欧米の学校で当たり前のように教えられている「自分で考えて動ける」ようになる力を、私たちはどう身につければよいのだろうか。著者はそれを「自分の意見の作り方の3ステップ」と呼んでおり、以下の3ステップを指している。
ステップ1:この事態について自分が理解していることは何か、確認する
ステップ2:この事態をもっと理解するために調べなければならないことは何か、を把握する
ステップ3:この事態をどう切り抜けるべきか、という「自分の意見」を持つ
例えば「理想のリーダー像とは何か」というテーマに対してであれば、①自分がリーダーについてどんなことを知っているか確認し、②リーダーに関して疑問に思うこと・知りたいことを調べ、③「理想のリーダー像とは何か」と各自意見を持つというステップを踏む。
上記の3ステップでは、特に「理解する力」が求められる。次章以降はどうすればきちんと理解することができるかについて解説がなされているが、それに入る前に考える力の基礎であるクリティカル・シンキングとは何かを見てみよう。
クリティカル・シンキングとは、情報や意見・主張の是非を吟味し、よりよい答えを模索するための思考法である。簡単に言えば、「他人に流されずに、自分でじっくり考えるための思考法」である。日本語では時々、「批判的思考」と訳されることもあって、相手を批判して自分の主張を通すためのスキルのように誤解されることがあるが、「非難する」のではなく、「物事の是非を慎重に判断する」という解釈が正しい。
クリティカル・シンキングで重要なのは根拠だ。ある主張の根拠に対して、①根拠として述べられている内容は「正しい」のか、②根拠が根拠として成立しうるか検証するのがクリティカル・シンキングだ。
本章ではクリティカル・シンキングを用いたエクササイズ(初級・中級・上級)が紹介されており、実際に考えながらクリティカル・シンキングの素養が得られる。こちらについては是非本書をご参照いただきたい。
「自分の意見を作る」には3つのステップがあり、正しく「理解する」ことが求められるのは前章で触れた通りである。
本章では、理解を養うための7つのTipsが紹介されている。その7つとは以下の通りだ。これらを常に意識しながら考えることで、自然と自分の理解が十分か判断することができるのだろう。
1.情報を5歳児でもわかるように平易な言葉で説明する
2.「パラダイム」「コンプライアンス」といったカタカナ語は正しく理解しておく
3.英語などの外国語に訳して納得感があるかチェックする
4.理解できていないことを一覧化する理解度チェックシートを作成する
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