その考え方は、「世界標準」ですか?

失敗をチャンスに変えていく5つの力
未読
その考え方は、「世界標準」ですか?
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失敗をチャンスに変えていく5つの力
未読
その考え方は、「世界標準」ですか?
出版社
大和書房
出版日
2013年12月21日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書(その考え方は「世界標準」ですか?)は、筋金入りのパソコンオタクから世界レベルの起業家になった著者の「挑戦し続ける思考」を中心に、そうした思考をどう培い、どう発揮してきたのかについて、余すところなく書かれた作品である。起業家として成功し、ダボス会議「ヤング・グローバル・リーダー」に選出され、福島原発事故調査委員会にて最高技術責任者を務めた著者。そんな華々しいキャリアの裏には、数々の挑戦と失敗があった。彼が成功をつかむまでの試行錯誤した道のりを追体験しながら、世界で通用する人材になるための力(行動する力・個性を活かす力・自分の考えをつくり、相手に伝える力・違いを活かす力・応用する力)をどう身につけていけばいいのかを知ることができる一冊である。失敗を糧に行動し続ける著者の言葉だからこそ、「失敗は人間に与えられた特権」、「Do(実践)がなければ成長しない」という言葉は説得力に満ちている。

また、彼の体験談には「挑戦し続ける思考」を育てたアメリカの教育現場の事例が豊富に盛り込まれている。アメリカのリアルな教育事情や教育観を知り、教育や人材育成に活かしたいという人にも、うってつけの一冊となっている。「個性の磨き方を間違えるな」という著者の言葉がある。つまり苦手分野を補おうと必死になるよりも、自分の得意分野を磨く方が大切なのだという。

日本の教育現場・企業のどちらにおいても、「個々の強みを伸ばし、多様性を重視する風土をつくる」ことをミッションと掲げる方は皆、本書を一読いただきたいと願う。

ライター画像
松尾美里

著者

齋藤 ウィリアム 浩幸
1971年生まれ。米・ロサンゼルス出身の日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(ULCA)医学部を卒業。10歳の頃からソフトウェアのプログラムの仕事を始め、大学在学中にI/Oソフトウェアを設立。1998年に「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」(アーンスト・アンド・ヤング、ナスダックおよびUSAトゥデイ主催)を受賞。テレビ会議システム開発などで失敗を経験した後、指紋認証など生体認証暗号システムの開発に成功。2005年、株式会社インテカーを設立。2011年12月から、国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会事務局にて最高技術責任者を務めた。同年、世界経済フォーラムから「ヤング・グローバル・リーダー」のメンバーとして選出。2013年12月、内閣府参与(科学技術・IT戦略担当)に就任。

本書の要点

  • 要点
    1
    子どもの頃から失敗を恐れずにチャレンジするマインドを育てておくことが不可欠である。失敗から学ぶ経験を積むことが成功への近道である。
  • 要点
    2
    日本に求められているのは、「ピボット」の発想から、既存の強みをニーズに合わせて応用するイノベーションである。自分と違う考え方や価値観を持つ人に積極的に出会い、多様性を取り入れて新しい価値を生み出すことが必要だ。
  • 要点
    3
    情報を暗記する「What」の教育から、実体験を通じて本当の学びを得ていく「Why」の教育にシフトしていくことが大切である。

要約

オタクの著者がチャンスを手に入れるまでの軌跡

AndreyPopov/iStock/Thinkstock
日本人にチャレンジ精神を伝えたい

アメリカで日本人の両親のもとに育った著者は、幼い頃は言語の習得に苦労していた。しかし、両親のおかげで「数学」という言語に左右されない武器に出会い、みるみる数学が得意になり10歳の頃には中学レベルの問題を解くようになった。アメリカ社会では短所を上回る長所があれば存在を認められるのだ。

パソコンいじりに夢中になった著者に、両親は家を担保にしてパソコンを購入する。同時期に、著者はある企業からのプログラミングの仕事を受注し、プログラマへと成長する。

16歳で大学へ入学後、パソコン売買のビジネスを親友と行っていた著者は2度の失敗を経験することになる。プリンター開発で在庫を余らせるという失敗、そして開発したビデオ会議システムの需要がないという失敗である。だが、こうした失敗を活かして、生み出した生体認証技術をビル・ゲイツにプレゼンし、世界標準にするという夢を実現させる。

会社を売却した著者は、自分をこれまで支えてくれた日本企業に恩返しをしたいと思い、現在は日本の起業家に投資をし、イノベーションやアントレプレナーシップの講義を日本で行っている。著者が挑戦してきた経験をもとに、世界標準の考え方ができる人材になるために不可欠なものを紹介していきたいという。

世界標準の考え方を身につけるために ~チャンスをつかむ~

cnrn/iStock/Thinkstock
失敗を恐れずに行動しよう

著者はあらゆる失敗をチャンスとして捉え続けている。失敗をしても経験は残るし、実践した結果を必ず次へ活かせると考えているからだ。どんな小さな仕事であっても、依頼されたら「もちろんできます」と答えて課題に取り組むうちに、チャンスが訪れる。チャンスが来たときには、思い切って行動することが大切だ。

著者が失敗を恐れないのは「失敗は当然」というアメリカの文化の影響が大きいだろう。アメリカでは、例え何度起業に失敗しても、その経験が認められ、リカバリーできるシステムが整っているのだ。一方、日本人は失敗を怖がる傾向にある。それは、自分の弱みを見せて社会から排除されるのを恐れているからではないだろうか。例えば日本の官僚は前例のないことに取り組むのを躊躇しがちである。リスクを冒して失敗するとキャリアに傷がついてしまうからだ。しかし、本来重要なのはあくまでミッションを成功させることであり、行動を起こさないと現状は変わらない。失敗を挑戦の証拠と捉え、失敗をもっとオープンに共有できる環境をつくることが必要である。

R&D(研究開発)の分野においても、日本には優秀な研究者が多く存在するにもかかわらず、新しい価値を生むイノベーションを生み出すことが得意ではない。日本では研究開発の7割を既存事業の強化に充てているのが現状だが、イノベーションを実現するには新しい発想で物事を考え、新規事業を生み出すための研究にもっと力を注ぐべきである。

個性を正しく磨く
kvkirillov/iStock/Thinkstock

自分の強みや個性をできるだけ早く見つけて、それを活かすことが大切だ。苦手を補うことにばかり力を注いでしまうと、世の中に貢献できる自分の「武器」が何なのかわからなくなってしまう。

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要約公開日 2014.04.08
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