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「大発見」の思考法の表紙

「大発見」の思考法

iPS細胞 vs.素粒子


本書の要点

  • 「Vision and Hard work」(明確なビジョンをもちそれに向かって一生懸命に努力すること)。よく言われることだが実践するのは難しい。

  • 「諦める」ということが最も重要な作業だった。物理現象の説明を必死に考え、どうしてもダメだと諦めたとき、条件の縛りから開放されて自由な発想ができるようになった。諦めることが「コロンブスの卵」のきっかけとなった。

  • 一見無駄なものに豊かな芽は隠されている。無駄を省いて全てを合理性で突き詰めた生き方をしているといつかは壁にぶつかるのではないか。

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【必読ポイント!】考えぬくことから生まれた大発見

普通からの逸脱が大発見のきっかけとなった

物質の構成因子となっている「クォーク」が従来予想の4つであるという仮説から6つあると予想した「小林・益川理論」。従来は不可能とされていた細胞の若返りを実現させたiPS細胞作成方法の開発。物理学と生物学で異なる研究を行い、ノーベル賞を受賞された益川博士と山中博士がそれぞれの課題解決のエピソードについて話し合うことから本書は始まる。「細胞って言葉は聞いたことあるけどiPSって何だ?」、「クォークって言われても全くわからないのだけれど」。そう思われた方もご心配なく。本書は科学の解説本ではないので、用語の詳細を知らないからといって「大発見の思考法」のエッセンスが理解出来ないことはないだろう。冒頭の第一章では両博士が取り組まれた課題のポイントを絞り、何を解決したのかが平易にかかれている。では、まずは気になる2つの研究が進展したきっかけについて見てみよう。

1964年に発見された「CP対称性の破れ」と呼ばれる現象がある。この現象がどうして起こるのか、を解明するためのキーワードがクォークだ。あるクォークには対となるもう一つのクォークが存在すること、そして既に3種のクォークが発見されていたことから益川博士がその研究を始めた1970年当時、氏を含む多くの物理学者は「クォークは4種類ある」と考えていたという。そこで、益川博士は4種のクォークでCP対称性の破れを説明しようとする。しかしどうしてもそれが出来ない。ついには「4種のクォークではうまく説明できません」という論文を書こうとまで考えたその時、「4種のクォークで説明しようとするからダメなんだ。6種だったらどうなる?」と着想する。考えぬいた末に答えに辿り着けなかったからこそ、「クォークは4種類」という常識・前提条件の枠からはみ出る思考に辿り着いたのである。

続けて次に山中博士のiPS細胞の話に移る。私たちヒトの体は、「細胞」が60兆個ほど集まってできているが、元々はたった1つの受精卵という細胞が分裂を繰り返して増えたものだ。受精卵は筋肉の細胞、皮膚の細胞、というように体中のあらゆる細胞に変化出来る性質(多能性)をもつ。一方で、例えば、皮膚の細胞になってしまった細胞は再び受精卵に戻ることはできない、といったように一度運命を決められた細胞は多能性を失ってしまうことが知られていた。通常では起こらない細胞の多能性の回復、それを可能にしたのが、山中博士が開発したiPS細胞作成方法の発見である。詳細は別所に譲るが、カギは「組合せ」だ。山中博士は研究の途中段階で多能性の回復に必要そうな24個の遺伝子を突き止めた。しかしその24個の遺伝子のうち、いくつの遺伝子の組合せが必要かは、わからない。1個かもしれないし10個かもしれない。「(考えられる)組合せごとにまともに実験を繰り返しとったら、こっちの寿命が終わってしまうで」と言うほどの膨大な量の実験が必要だった。しかしそれが教え子の言葉で一変する。「24個の中から遺伝子を一つずつ減らしてみたらどうですか?」。順当にやれば何千万回も繰り返す必要があるかもしれない実験が、たった24回に減った瞬間だ。それは一人の研究者が数年もあれば可能な現実的な数字だった。

どんなに簡単なことでも、それを最初に成し遂げるのは難しいという意味で使われるコロンブスの卵という言葉がある。益川博士、山中博士もご自身の研究がまさしくそれだったと語る。

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要約公開日 2014.03.28
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