事業創造のロジック

ダントツのビジネスを発想する
未読
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事業創造のロジック
出版社
日経BP
出版日
2014年01月27日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

「事業創造のロジック」という本書のテーマには、数多くの関連書籍があろう。エリック・リース著の「リーン・スタートアップ」はその代表例であろうし、クリス・アンダーソン著の「フリー」、クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー著の「イノベーションへの解」も必読書である。そのような中において、本書は持続的な競争優位を築くビジネスモデルの検証を行う方法論を提示しているところが特徴である。

経営課題は数多く存在する中で、多くの経営者は新規事業を考案することが最も難易度が高いと考えられているのではなかろうか。その評価を市場に委ねるアプローチが、昨今のIT業界では主流となりつつあるが、あらかじめ検証できる点に関しては、行うに越したことはない。現在は新しいビジネスを試すための資源は低減する傾向にあり、経営スピードこそが競争優位である。そのスピードを上げる取組みとして、市場に委ねる点は委ねながらも、思案を巡らせることで解決できることは思案しておこうではないか、という思想なのではないか。

本書はあらゆる業界において共通的に考えるべき事項が山盛りであり、参照されている事例の多くは有名かつ経営者として押さえなければならないものと言える。新規事業というものは、考えなければならないと思うときにタイミング良くチャンスが訪れるものではないため、常日頃意識しながら事業運営をすることが望ましい。従って全ての経営者や企画担当者、投資を検証する財務担当者は本書の内容を頭に入れておき、チャンスにおいて適切な検証を行い、事業推進を加速させることが有効ではなかろうか。

ライター画像
大賀康史

著者

根来龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授、同スクールディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長。京都大学文学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、2001年から現職。経営情報学会会長、国際CIO学会副会長、CRM協議会副理事長などを歴任。主な著書に、『CIOのための情報・経営戦略』(編著、中央経済社)、『代替品の戦略』(東洋経済新報社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビジネスモデルには、「仮説性の高さ」に加え、「緻密な計算」による妥当性チェックが必要であり、これらがキンドルの成功に大きく寄与している。
  • 要点
    2
    持続的な競争優位を築くためには、規模の経済、経験の経済、範囲の経済、ネットワークの経済といった原則を押さえておくことが有効だ。
  • 要点
    3
    ビジネスモデル検証の際には、「妥当性」と「正当性」に留意し、決定的な欠陥をあらかじめ排除することが求められる。

要約

【必読ポイント!】ビジネスモデルの発想

Artem Gorokhov/iStock/Thinkstock
キンドルの成功とリブリエの失敗

キンドル1が発売されたのは2007年、当初は著作権切れの本ばかりだったが、2009年のキンドル2の頃には新刊書が発売、売上が一気に拡大する。キンドルを作る際に、ソニーの電子端末(リブリエ)を真似して作れと言ったという話があるほど、技術的にはキンドルは新しくない。

事業的に失敗したリブリエとは何が違ったのか。それは通信モジュールの内蔵だ。キンドルが通信モジュールを内蔵した理由は、電子書籍の価値を見直した点にある。「いつでもどこでも好きな本を読みたい」。これが読書家の願いと捉えたのだ。つまり、「大量に保存したい」「本棚をいらないようにしたい」と日本の電機メーカーが考えた一方で、アマゾンは異なった視点で定義をしたのである。

ソニーの失敗要因は、リブリエのコンテンツがレンタル型だったという点にもあろう。ダウンロードした本を読める期間は60日間、契約は月に3~4冊ダウンロードできるというものだった。このような貸し本屋モデルになったのは、出版社との交渉力が強くなく売れ筋および新刊の許可を得ることが難しかったためかもしれない。しかし、結果として「顧客の価値」に応えられなかったのである。

キンドルの成功要因

このように考えればキンドルの成功は、2つのビジネスモデル革新による。

1つは通信モジュールの内蔵にあり、もう1つはサプライチェーンの制約に打ち勝ち、紙より安い本を大量に取りそろえることに成功したことだ。紙の本から顧客を奪うカニバリゼーションが発生し得るが、そうなっても良いと割り切り、価格面でもインパクトを生み出せたのである。

更にキンドルはキンドルアプリを用いることで、iPhone、iPad、Androidでも読めるようにし、プラットフォームを解放した。そうすることで、ハードを売ることによる収入に頼らず、コンテンツストアの収入により、収益化を図ったのだ。つまり、ソニーのリブリエとは異なるビジネスモデルを有すことになり、最終的に有利に働いたと言える。

「仮説性の高さ」と「緻密な計算」
Evgeny Tomeev/iStock/Thinkstock

キンドルのビジネスモデルは極めて仮説性が高い。27ドルで売れる新刊小説を9ドル99セントで売り出し、爆発的に販売するというような「仮説」に賭けたところに、ベゾス氏の凄さがある。

つまり、ハードの生産コストと通信コストを回収するコンテンツ販売量を「緻密な計算」により算出する。1台ハードを売って、ユーザーがいくつコンテンツを買ってくれるのか、その損益分岐ラインの計算を巧妙に行った。

ビジネスモデルには、「仮説性の高さ」に加え、「緻密な計算」による妥当性チェックが必要であり、これらがキンドルの成功に大きく寄与しているのである。

因果関係

JinYoung Lee/iStock/Thinkstock
玉子屋のビジネスモデル

玉子屋という仕出し弁当のダントツ企業をご存知だろうか。玉子屋の創業は1965年、創業者は菅原勇継氏である。

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要約公開日 2014.03.20
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