未来を切り拓くための5ステップ

起業を目指す君たちへ
未読
未来を切り拓くための5ステップ
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起業を目指す君たちへ
著者
未読
未来を切り拓くための5ステップ
著者
出版社
新潮社
出版日
2014年04月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

起業や経営のノウハウについて書かれた書籍は多い。だが本書の著者、加藤崇氏のように複数の会社の経営者を歴任し、結果を出してきた人物が著した本は極めて少ないだろう。2013年11月には、加藤氏が共同創業者兼取締役CFOを務めたヒト型ロボットのベンチャーであるSCHAFT(シャフト)を、日本企業で初めて米Googleに売却したことで話題になった。自分たちが始めたベンチャーが最終的にGoogleやアップル、マイクロソフトに買収されることは、米国においては最高の名誉なのだという。

本書は起業家であると同時に投資家でもある加藤氏が、起業するためのノウハウや心構えについて述べた一冊だ。このように書くと「そんな本は今までも何冊も読んできた」とおっしゃる方もいるかもしれない。だが、そういった本の多くは「こうすれば上手くいく」といった小手先のテクニックを紹介するものが多かったのではないだろうか。

加藤氏がつむぐ言葉は紛れもないリアルだ。正面からぶつかっていかなくてはいけない所は正直に語り、一方で起業について勘違いされやすいリスクについては「大丈夫だ」と背中を押してくれる。その中でも、「いかにものを売ることが難しいか」というリアリティは有名企業では実感できないとか、ベンチャーには多数決では決められない局面がある、というのは私自身、起業した経験から非常にうなずける主張である。

起業を通じて世の中に良い影響を与えたいと思う方にはぜひ手に取って読んでいただきたい。

ライター画像
苅田明史

著者

加藤 崇
246キャピタル株式会社 代表取締役
株式会社加藤崇事務所 代表取締役
1978年東京都武蔵野市生まれ。早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。オーストラリア国立大学経営学修士(MBA)。
株式会社東京三菱銀行、KPMG日本法人を経て、技術系ベンチャー企業の代表取締役(社長)、高級スーパー「成城石井」と焼肉の「牛角」の持株会社役員などを歴任し、株式会社加藤崇事務所を設立。その後、2名の東大助教と共にヒト型ロボットベンチャーの株式会社SCHAFTを共同創業、取締役CFOとして米国Google, Incへの売却に成功。2014年1月、日本の大学・研究機関に埋もれる技術をベンチャー企業として切り出すことを目的とした投資会社、246キャピタル株式会社を設立。

本書の要点

  • 要点
    1
    起業家になるためには、学歴も職歴もカネもコネも、起業した分野での経験すら必要ない。成功を確信するまで待つのではなく、早く起業して、将来成功を掴むために多くの失敗と挫折を経験したほうが良い。
  • 要点
    2
    ビジネスの「アイデア」を思いつくためには「問題意識を持って世の中を観察(経験)する」ことだ。良いアイデアとは万人にウケるものではなく、熱狂的なファンとそれを心底嫌う人を生み出すものである。
  • 要点
    3
    製品やサービスを売る際には、何度も断られることを想定しておくべきだ。最初のお客さんは具体的に想像できるくらいのニッチ市場で探す方が、そのメッセージが鋭く刺さる。

要約

ヒト型ロボットベンチャー、SCHAFT(シャフト)

日本の技術者に舞い降りたシンデレラ・ストーリー
maxuser/iStock/Thinkstock

本書はまず、SCHAFTを立ち上げるにあたっての資金調達の場面からスタートする。ロボット開発に携わる中西氏と浦田氏という二人の東大助教は大学からスピンアウトしてベンチャー企業を始めることを決意。だが交渉は難航し、ベンチャーキャピタルはSCHAFTに対してヒト型ロボットの実用化開発に着手する前に、まずは要素技術を切り売りしてお金を稼ぐべきだと主張する。

ベンチャーキャピタルの言い分はもっともだったが、加藤氏は二人の技術力の高さとこの事業にかける情熱を前に覚悟を決め、ヒト型ロボット事業に賭けることにした。3年経っても芽が出なければ要素技術を使ったビジネスを始めることを二人と約束する代わりに、自らアドバイザーを務めるベンチャーキャピタルから出資を取りつけることに決めたのだ。

2012年5月に設立された株式会社SCHAFTが米Googleに買収されたのはわずか1年半後のことだった。中西氏と浦田氏は大金持ちになると同時に、Googleの潤沢な予算のもとで好きなだけヒト型ロボットを開発できる環境を手に入れた。出資したベンチャーキャピタルとエンジェル投資家は高いリターンを手にし、SCHAFTに関わった全ての人が満足する結果となった。

本書はSCHAFTを成功に導いた具体的なノウハウが詰まった一冊である。起業によって「世界に勝てる若者」を生み出すための教科書となるはずだ。

本書は起業成功への5ステップを説明した第1章から5章までの本編と、ヒト型ロボットのベンチャー企業である「SCHAFT」の創業からGoogleに売却するまでを描いた第0章、あとがきとしての最終章を加えた7章構成となっている。

著者自身の経験を踏まえた洞察に加え、米シリコンバレーでの起業家の成功事例やスピーチが満載だ。

【必読ポイント!】 いつ始めるのか? なぜ始めるのか?

起業家の3パターン

加藤氏は自身がベンチャー企業を経営した経験や、色々な起業家を見たり調べたりするなかで、起業家が起業するに至った理由を次の3つのパターンに分類できることを見出した。

一つ目は「オタク型」。あまりにある事が好きなので、毎日そればかりやっていたい、もしくは自分が好きな事を周りの人にも分かってもらいたくて、それをビジネスにしてしまった人たちのことだ。スティーブ・ジョブズが自宅のガレージで友人とコンピュータを作って楽しんでいるうちに会社をスタートしたのはオタク型の典型だ。

二つ目の「生活型」は日々の生活を成り立たせるためにビジネスを始めている。これには生活費を稼ぐために起業する人もいれば、金持ちになりたいと願う人も含まれる。

三つ目の「使命型」というのは、そのビジネスが好きかどうかや、そのビジネスで手に入るお金の大小とは関係なく、ある使命感に導かれてビジネスをスタートする人達のことだ。

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要約公開日 2014.05.01
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