本書の要点

  • 宅配業界における課題を解決するには、「ラストワンマイル」の一元化が必要だ。

  • 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は破綻が見えている。これを収拾するには、特別なインセンティブによる普及はあきらめ、競争原理に立ち返るしかない。

  • 世界中に広がる「キャッシュレス社会」は消費者ばかりか、企業や国家にとってもメリットが大きい。

  • トランプ大統領の排外的な経済政策は、新たな貿易摩擦の火種となる。個別交渉が増えていけば、日本にとっても深刻な影響が出るだろう。

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【必読ポイント!】 日本の宅配のこれまでとこれから

アマゾンが支配する日本の宅配事情

cybrain/iStock/Thinkstock

宅配便業者の負荷が限界に近づいている。配達員やドライバーの労働環境の劣悪さは深刻で、人手不足によるサービス残業が業界全体で常体化している。

ヤマト運輸も約7万6000人分の未払い残業代の調査に乗りだした。同社は配達時間の変更や再配達の締め切り時刻繰り上げ、27年ぶりとなる基本運賃の値上げなどで、労働環境の改善を図っている。

国土交通省によれば、宅配便の取扱個数(トラック輸送分)は6年連続で過去最高を更新している。その背景にあるのがネット通販の急増だ。なかでもアマゾンの日本事業はずば抜けており、その荷物をほぼ一手に引き受けてきたのがヤマト運輸である。

当日配達や日時指定など、利用者にとって非常に便利な配送サービスがアマゾンの強みだ。しかしこの利便性が、宅配便業者の大きな負担となってのしかかっている。

宅配現場を救うラストワンマイルの「一元化」

ヤマト運輸は「現場の業務を圧迫する」として、アマゾンジャパンなど大口法人顧客との契約内容を見直している。だが仮にそれがうまくいったとしても、宅配源の負担軽減の決定打とはならないだろう。取り扱い総量が増えているうえ、最寄りの配送センターから個人宅に届ける最終行程、いわゆる「ラストワンマイル」に課題があるためだ。

宅配便の約2割は、受取人が不在のために再配達されている。国土交通省の試算によると、再配達に費やされる走行距離は全体の25%に及び、必要な労働力は年間9万人(約1.8億時間)にも相当する。国交省に「社会的損失」といわしめるほど厳しい現実である。喫緊の課題はラストワンマイルのコスト削減なのだ。

著者は20年以上前からひとつの解決策を示してきた。それがラストワンマイルの一元化である。宅配便業者がそれぞれに届けるのではなく、地域ごとに配達公社や協同組合を組織して、一手に配達を担ってもらえばいい。スマホで在宅時間を確認するなど、こまめな対応をすれば、再配達のロスも減らせるはずだ。

宅配業界の変革が求められるいま、ヤマト運輸のような業界大手が主導することで、こうした一元化を実現してもらいたい。

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再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の破綻

最終的な負担は消費者へ

Pogonici/iStock/Thinkstock

風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定めた価格で10~20年という一定期間、電力会社が買い取ることを義務づけた制度がある。それが2012年に始まった「固定価格買い取り制度(FIT)」だ。

FITは2011年の福島原発事故の後、再生可能エネルギーの普及促進策として導入された。買い取り価格は電源ごとに異なる。なかでも破格に高かったのが太陽光発電(10キロワット以上の産業用)の1キロワットアワー当たり40円だ。そのため太陽光発電の設備申請が殺到。約2年で総発電量は約7000万キロワットにまで急増し、再生可能エネルギーの9割以上を太陽光発電が占めるまでになった。

買い取り価格は1年ごとに見直され、徐々に下がっていく仕組みだ。参入インセンティブを高めるため、40円という高額に設定されていた太陽光発電の価格は、2016年には24円になっている。とはいえいまから新規参入しても採算は合う計算だ。

こうした買い取りコストは、電気料金に上乗せされている。高額な買い取り価格を最終的に負担しているのは消費者だ。

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要約公開日 2018.04.26
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