正しい本の読み方

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正しい本の読み方
出版社
定価
858円(税込)
出版日
2017年09月20日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

本は娯楽と割り切ってしまう。あるいは、本は読まないと決めてしまう。それはその人の自由であり、良いも悪いもない。一方で、本から少しでも多くの事を学び取り、何とか実社会で活かしたいと願う人もいる。そのような人にこそ本書は最適である。

本書は、本を読む理由に始まり、本の選び方、本の読み方と展開されていく。世の中には無数の本があり、手あたり次第読んでいたら人生がいくつあっても足りない。だからこそ、自分はどの本を読むべきなのか、その見極め方を学ぶことは大切だ。さらに、自分の人生を生きるため、自分の頭で考えるために本をどう使うのかということまで、本書はつきつめていく。親しみやすい語り口ながら、本書が目指すべき到達点は高い。

また、「本は単なる情報の集合体ではなく、1人の人間が相当な時間と労力をかけてでも伝えたいメッセージが詰まった、いわば生命そのものなのだ」という著者の見解もたいへん印象的である。インターネットがこれだけ隆盛している現代でも色あせない、本の価値を改めて認識させられるだろう。

本を読むことはすなわち生身の人間と付き合うことだといえる。本を読むとは著者と友人関係になること。様々な意見を持つ人々を自分の頭の中に住まわせ、共に生きていくこと。本書は、そんな血の通った読書方法を教えてくれる1冊だ。

ライター画像
二村英仁

著者

橋爪 大三郎 (はしづめ だいさぶろう)
一九四八年生まれ。社会学者。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。東京工業大学名誉教授。著書に『はじめての構造主義』『はじめての言語ゲーム』(ともに講談社現代新書)、『ほんとうの法華経』(ちくま新書)、『戦争の社会学』(光文社新書)、『丸山眞男の憂鬱』(講談社選書メチエ)など。社会学者・大澤真幸氏との共著に、『ふしぎなキリスト教』(新書大賞2012を受賞)、『げんきな日本論』(ともに講談社現代新書)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人の個性は半分以上言葉づかいでできている。自分なりの生き方をするには、言葉の能力が必要だ。言葉の能力を高めるために、本を読み他者の生き方に学ぶことが大切である。
  • 要点
    2
    本には別の本との関連性、ネットワークが存在する。本を選ぶときはまずその本のネットワークの構造を理解し、節目となる本を読むことだ。
  • 要点
    3
    本を読むときは、感情や予断を抜きにして「素直に」読む。すると、頭の中に様々な意見を持った著者が住むようになり、人間的能力が高まる。

要約

なぜ本を読むのか

人間はいつも未完成

学ぶことと生きることはほぼ同じだといえる。赤ん坊として生まれてきて、身の周りのことをできるようになり、言葉を話せるようになる。学校に通うようになると、読み書きを習い、本や情報に書かれている内容も読めるようになる。やがて、個性ある人間として自分らしく生きることを始める。

人生は、それまでの選択の繰り返しで作られる。変化には切れ目がないため、今の自分は何か必然的な道をたどってきた確固たる存在のように感じるかもしれないが、実際には偶然が重なって今が形作られている。自分という人間は選択によって作られるのであり、この先の未来も同じである。つまり、人間の個性にはあまり根拠がなく、いつでも未完成だということだ。

人間にとって「言葉」とは

人間はいつでも未完成だということは、逆の見方をすれば、人間はいつでも完成形ということでもある。できかけのプロセスはその都度の完成形であって、どの時点であるにせよ、その人はその人として暫定的に完成している。

人を完成させる要素は、その人の経験、持って生まれた素質、そして言語である。人の個性、すなわち人の人生は半分以言葉づかいでできている。たとえば、自分が生きる意味や自分らしさ、大切な人々との関係の行く末、その人々にどう感謝の気持ちを伝えればよいのかなどは、言葉の存在なしに考えることはできない。

このような考えは、ある種のパターンの繰り返しである。そうしたパターンを学んでこそ、自分独自のユニークなところをみつけられる。そして言葉は、人生のパターンをとらえるようにできていて、言葉以外に自分をつかまえる方法はない。だからこそ、自分なりの人生の像を結び、生きていくためには、言葉の能力を高めることが必要なのだ。

それでは、どのように言葉の能力を高めるか。そのために有効なのは、過去の誰かの似たような経験を参考にすることだ。それは、本に書いてある。本をみつけて読めば、学べるのだ。

どんな本を選べばよいのか

本はネットワークを築く
ConstantinosZ/iStock/Thinkstock

それでは、どんな本を読めばいいのか。

人が初めて目にする本は、絵本など親に買い与えてもらった本である。そして小学校に入学すると、今度は読むべき本として教科書が配られる。教科書とは、中学も、高校も、大学まで付き合うことになる。しかし、一旦学校を卒業してしまえば、その後どのような本を読むかは自分次第である。

どの本を選んだとしても、正しいも間違いもないが、読んで面白くなかった、役に立たなかったと後悔するような本はできれば避けたい。

そこで、本の選び方としてまず知っておく必要があるのは、本にはネットワークがあるということだ。人と人との繋がりがあるのと同じように、1冊の本にはその本を生み出した別の本がある。さらに、その別の本を生み出したまた別の本も存在する。このように、本と本はネットワークを築いている。これは、本の書き手というのは同時に読み手でもあり、本を書く際は多くの場合、別の本を読んでから執筆に取り組むからである。

したがって、本を選ぶときはまずその本のネットワークの構造を理解することがポイントだ。そしてその構造がわかれば、「ネットワークの節目」となる本を読む。そのほかの本は読まなくてもよい。

人生で読むべき本

教科書卒業後の大事な本のジャンルにクラシックス(古典)がある。クラシックスとは、みんなが読むべき定番となっている本で、大事なことがらを世界で最初に書いた本である。原典を読むのが一番良いが、時代や言語の問題でなかなか難しい。しかし、本のシステム(相互関係)を理解するために、おおよその内容は知っておきたい。

そこで役に立つのが「入門書」だ。入門書はクラシックスの系統樹のダイジェストなので、最初の古典からそれ以降に生まれた古典全ての見取り図を一度に理解することができる。ただし、

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要約公開日 2018.04.22
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