砕かれたハリルホジッチ・プラン
日本サッカーにビジョンはあるか?

未 読
砕かれたハリルホジッチ・プラン
ジャンル
著者
五百蔵容
出版社
定価
1,058円
出版日
2018年05月25日
評点(5点満点)
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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レビュー

2018年4月9日、ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の解任が公式に発表された。ロシアW杯まで、残すところわずか2カ月というタイミングにもかかわらず、である。

たしかにハリルホジッチ氏については、毀誉褒貶さまざまであった。「戦術に柔軟性がある」と評価する声がある一方で、「一貫性がない」と批判する声。あるいは若手を積極的に起用したことによる、ベテラン選手の起用が減ったことへの賛否。大舞台で結果を残すことに定評のあるハリルホジッチ氏だったが、実際のところロシアW杯で結果を残せたかどうかは誰にもわからない。その知略を出し尽くす前に、解任されてしまったのだから。W杯本戦出場という結果だけを残して。

ここに日本サッカー最大の問題が見て取れる。本来であれば本戦の結果を踏まえたうえで分析・総括し、その「遺産」を継承したうえで次に繋げていくべきだ。しかしその機会は永遠に失われた。「志半ばに終わった仕事を顧みることなく、『次、次!』とばかりに貴重な教訓をしばしば含む経験を捨て去っていく愚」とは著者の言葉だが、日本サッカーの「これから」を考えるならば、ハリルホジッチ氏がなにを課題として捉え、どう解決しようとしていたのかを正しく把握する必要がある。

未完に終わったハリルホジッチ・プランを、ここまで詳細かつわかりやすくまとめた著者に、一人のサッカーファンとして敬意を表したい。

石渡 翔

著者

五百蔵 容 (いほろい ただし)
サッカー分析家、シナリオライター、プランナー
1969年横浜市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、株式会社センタープライゼス(現株式会社セガゲームス)に入社。プランナー、シナリオライター、ディレクターとして様々なタイトルの開発に携わる。2006年に独立・起業し、有限会社スタジオモナドを設立。ゲームを中心とした企画・シナリオ制作を行うかたわら、『VICTORY SPORTS』『footballista』などにサッカー分析記事を寄稿する。そのサッカーだけにとどまらない該博な知識とユニークな視点に裏打ちされた論考は、サッカーという競技の本質をつくものとして高い評価を集めている。本書が初の単著となる。
Twitter ID: 500zoo

本書の要点

  • 要点
    1
    ハリルホジッチの強みは「エリア戦略」にあった。これまでの日本サッカーの遺産を継承しながらも、「多様なエリアを占有可能な戦略」「状況に応じエリア戦略を変更できる柔軟性」をもたらしつつあった。
  • 要点
    2
    状況が次々と切り替わる現代サッカーでは、どうしてもどこかで1対1の状況が生まれてしまう。ハリルホジッチが「デュエル」を重要視したのは必然だった。
  • 要点
    3
    「コミュニケーション上の問題」で解任されたハリルホジッチだが、もっとも深刻だったのはJFA(日本サッカー協会)との関係だったと考えられる。

要約

日本代表監督・ハリルホジッチの事績

なぜ「デュエル」を強調したのか
anusorn nakdee/iStock/Thinkstock

ヴァイッド・ハリルホジッチが就任直後から重要視していたものは3つ、「メンタル」「タクティクス」そして「デュエル」だ。メンタルを強くもち、タクティカル(戦術的)にデュエルをしかける。そうすれば「どんなに強いチームに対しても、勝つことができる」というのが、ハリルホジッチの考えだった。

ただしこのうち「デュエル」については、日本では正しく理解されていない向きがある。ハリルホジッチのいう「デュエル」とは、単なる1対1を意味しない。それはあくまでも「戦術的」におこなわれなければならない性質のもの(=「戦術的デュエル」)なのだ。

日本代表でこの「戦術的デュエル」がきわめてうまく機能したのが、2017年8月31日のオーストラリア戦だ。この試合でハリルホジッチの率いる日本代表は、オーストラリア代表の戦略を正確に見抜き、それを破壊するための「戦術的デュエル」を実行。戦略的な優位性を得た日本代表は、見事この試合に勝利した。

ハリルホジッチの「エリア戦略」

ハリルホジッチのプランには、「相手の長所や短所に戦術的な対応をおこなう」以上の強みがあった。「フィールド上のどのエリアを、どのような方法で占有するか」「勝敗を決定づけるプレーのため、占有したエリアをどう活用するか」といった、「エリア戦略」の洞察・選択・活用が、非常にうまいのだ。

ハリルホジッチ以前の日本代表は、このエリア戦略に難を抱えていた。たとえば2010年のW杯を戦った岡田武史の場合、結果的には占有をめざすエリアが高いか低いかの「どちらか」に偏っていた。だから取りうる戦術や攻撃手段も「パスワークによる崩しとショートカウンター」か「ロングカウンター」の「どちらか」に限られてしまったわけだ。

その反省を踏まえて就任したアルベルト・ザッケローニは、ミドルゾーンを戦略的に占有するサッカーを志向し、2014年のW杯を戦った。これはある程度うまくいった。だが逆に「ミドルゾーンでインテンシティ(強度)高くボール奪取可能なサッカー」しかできなくなってしまい、ミドルゾーンを専有できる場合は強豪国とも互角に戦えるものの、ミドルゾーンの優位性が得られない場合はその脆弱性が目立つ結果になった。

ハリルホジッチに求められたのは、これまでの日本サッカーの遺産を継承しつつ、「多様なエリアを占有可能な戦略」「状況に応じエリア戦略を変更できる柔軟性」をもたらすことだと分析できる。そしてそれは実現しつつあったのだ。

「ボールゲーム」としてのサッカー

サッカーの特異性
releon8211/iStock/Thinkstock

「戦術的デュエル」と「エリア戦略」の関係を明確にするには、「ボールゲーム」としてのサッカーの構造・特異性について、あらためて考察する必要がある。

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