信用の新世紀
ブロックチェーン後の未来

未 読
信用の新世紀
ジャンル
著者
斉藤賢爾
出版社
インプレスR&D 出版社ページへ
定価
1,980円(税込)
出版日
2017年12月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
3.5
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信用の新世紀
信用の新世紀
ブロックチェーン後の未来
著者
斉藤賢爾
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定価
1,980円(税込)
出版日
2017年12月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
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レビュー

「ブロックチェーン技術によって物々交換の経済システムが実現する」。この一文だけ読んでその趣旨に納得できる人は、決して多くはないはずだ。近い将来、物々交換の経済システムが実現するなんて、奇想天外すぎる。そう感じる人もいるかもしれない。

しかしながら、本書を読み進めていくと、その一文の意味するところが、臨場感を伴って理解できるはずだ。近未来の予想を描いたドラマに、思わず引き込まれてしまう。また、ブロックチェーンに精通し、インターネットと社会システムの研究者である著者による説明は、明快で説得力に満ちている。

著者によると、ブロックチェーンは「空中に約束を固定すること」をめざす技術であり、次の2つのことを可能にするという。1つは、「記録の内容も、その存在も、誰にも否定できないように保存・維持する」こと。もう1つは「その確かさを誰でも確認する」ことである。約束を履行させる信用を担保する性質を持ったブロックチェーン技術。この技術は、物々交換を広い範囲で実現させ、ひいては私たちの社会の仕組みを変革していく。

社会システムにも精通している著者は、ブロックチェーンが社会の信用のあり方にどのような影響を与えるのかについて、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』や人類学者デヴィット・グレーバーの『負債論』をひも解いていく。ミステリーを解き明かすような知的興奮を伴う展開が待っている。これまでのブロックチェーン技術に関する本では、自分たちの未来がどう変わるのかを想像しづらかったという方にこそ、本書をお読みいただきたい。

若旦那

著者

斎藤 賢爾(さいとう けんじ)
1993年、コーネル大学より工学修士号(計算機科学)を取得。2000年より慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに在籍。2006年、デジタル通貨の研究で博士号(政策・メディア)を取得。同大学院政策・メディア研究科特任講師等を経て、2014年より同大学SFC研究所上席所員。また、2016年より株式会社ブロックチェーンハブCSO(Chief Science Officer)。2017年より一般社団法人ビヨンドブロックチェーン代表理事。専門はインターネットと社会。慶應義塾大学環境情報学部講師(非常勤)。早稲田大学大学院経営管理研究科講師(非常勤)。一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事。一般社団法人自律分散社会フォーラム副代表理事。主な著書に『不思議の国のNEO』(太郎次郎社エディタス、2009年)、『未来を変える通貨:ビットコイン改革論』(インプレスR&D、2015年)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビットコインは「自分がもっているお金を自分の好きに使うことを、誰にも止めさせないためには?」という問いから生まれた。
  • 要点
    2
    ビットコインの基盤技術のブロックチェーンは、中央ではなくエンドが完全なコントロールをもつことをめざす。
  • 要点
    3
    デジタル通貨が登場し、貨幣が先鋭化するとデフレ傾向が強まる。人々は貨幣を用いない融通のソリューションを選択するようになる。すると個人の万能性、専門未分化を維持しながら、分け合うことが中心となる贈与経済が強化される。そして「狩猟採集社会」のような社会に近づいていく。

要約

ブロックチェーンとは何か

空中に約束を固定する

2017年4月、「ビットコイン」などの「仮想通貨」を定義する法律「(改正資金決済法)」が施行された。そして、家電量販店のビックカメラがビットコインでの支払いを受けつけるようになった。

ビットコインは次のような問いから生まれたと考えられる。「自分がもっているお金を自分の好きに使うことを、誰にも止めさせないためには?」という問いだ。銀行が凍結される。政府の意向により現金が使用できなくなる。こうした現実に対応する形で生まれたのがビットコインである。

ビットコインをはじめとする仮想通貨の基盤技術として使用されているのが、ブロックチェーンだ。ブロックチェーンは、ビットコインの発案者であるサトシ・ナカモトという人物ないしは集団が発明したとされている。

めざすのは、中央ではなくエンド(端っこ)が完全なコントロールをもつことである。権限を包含したデータ構造(=約束を含む記録)を誰もが共有できるように「空中に約束を固定する」のだ。

こうして、約束がいつでも守られる状態にすることで、次の2つのことが可能となる。まずは、記録の内容も、その存在も、誰にも否定できないように保存・維持できる。そして、その確かさを誰でも確認できる。

ブロックチェーンの3つの構成要素
peshkov/iStock/Thinkstock

ブロックチェーンの目的は「空中に約束を固定する」ことだといえる。そのためには次の3つの構成要素が必要となる。

(1)「正当性の保証」:取引が過去の取引記録に照らして矛盾していないことを保証するための仕組みである。内容が提示されたら本人に否認ができないようにする必要がある。そのためにデジタル署名が利用される。

(2)「存在の証明」:取引が存在したことを否定できないようにする仕組みである。ビットコインでは、作業証明つきのハッシュチェーンを用いることで、これを実現する。ブロックには直前のブロックのダイジェストが格納されている。ハッシュチェーンで前後となるブロックチェーンには、論理的に時間の前後関係があることが示されている。そのため、簡単には覆せず、取引を消すことはできない。

(3)「唯一性の合意」:矛盾する2つの約束は存在せず、もし矛盾する2つの約束が現れると、どちらが正しいかは1つに決まるようになっている。また、参加者の間で1つの歴史に合意することが求められ、ビットコインではこの合意の仕組みを「ナカモト・コンセンサス」と呼んでいる。ビットコインなど、物理的資産や貨幣にはこの要素が必要となる。

このような構成要素を含むブロックチェーンや類似する技術は、公に証明が必要な「複数のステークホルダーが関わる」場面での幅広い応用が期待される。

【必読ポイント!】 信用の歴史ー口約束から契約へ、契約からコードへ

原始の約束

文字は石や粘土に刻むなど、記録する媒体とともに誕生したと考えられる。歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』によると、古代メソポタミアの楔形文字を用いた、人類最古の書き言葉で記されていたのは会計上の記録だという。たとえば、「37か月間で29086単位の大麦が受け取られた」と負債が数量化されていた。これは、その当時にはすでに貸しつけの仕組みや、信用のシステムが存在していたことを示している。

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