日本でいちばん大切にしたい会社6

未読
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日本でいちばん大切にしたい会社6
出版社
定価
1,540円(税込)
出版日
2018年03月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
5.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

『日本でいちばん大切にしたい会社』の第1巻が出版されたのは、2008年のことだった。それから早10年が経過したが、「働き方」に関する社会の考え方も、少しずつ変化してきているように思う。

本書はタイトルの通り、『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズの第6巻にあたる。これまで同シリーズで紹介されてきた会社のように、今回取りあげられている会社もすばらしい志を抱き、その実現に邁進している。誰もが知っている会社でなくても、あるいは誰もが知っている会社でないからこそ、ここから得られる学びは大きいはずだ。

とくに今回は、これまで取りあげられてこなかった信用金庫や幼稚園も紹介されており、これが大変興味深い。作家の村上龍氏は「優れた会社は、『共に生きる』という社会の本質を象徴している」と述べているが、これは業界や分野が違えども、共通したことなのだろう。

日本の将来を憂うのは簡単である。しかし本書で紹介されているような会社が、まだまだ日本には残されている。そのことは不透明な未来に立ち向かっていく私たちにとって、力強いエールとなってくれるはずだ。

まさしく「人間讃歌」の一冊である。それぞれの会社のもつ力強さとたくましさを、まずは要約を通して感じてみてほしい。

著者

坂本 光司 (さかもと こうじ)
1947年、静岡県生まれ。
法政大学大学院政策創造研究科教授、同大学院中小企業研究所長、ヒトを大切にする経営学会会長。他に経済産業省やJICA等、国や自治体、団体の委員多数を務める。専門は中小企業経営論、地域経済論、障がい者雇用論。主要著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズ(あさ出版)、『「日本でいちばん大切にしたい会社」がわかる100の指標』(共著、朝日新聞出版)、『理想の会社をつくるたった7つの方法』(あさ出版)、『人を大切にする経営学講義』(PHP研究所)など多数がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    但陽信用金庫は、この厳しい時代に5.8倍の預金量増加を実現させた。それは(1)地域の企業や住民のためを思って行動を起こし、(2)心優しい優秀な職員の確保と育成に力を注ぎ、(3)理事長のリーダーシップで皆の信頼を勝ち取ってきたからである。
  • 要点
    2
    コーケン工業株式会社には、10歳代から80歳代の社員まで在籍している。ここでは高齢者も、重要な戦力として数えられている。
  • 要点
    3
    柿の実幼稚園はハンディキャップのある子どもを積極的に受け入れている。それができるのは、通常の倍以上いるスタッフたちの献身とチームワーク、そして園長の熱い思いがあるからだ。

要約

但陽信用金庫

この厳しい時代に5.8倍の預金量増加を実現
bitontawan/iStock/Thinkstock

民間金融機関にはメガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合などがある。メガバンクや地方銀行とは異なり、地域密着で、個人や中小企業を専門としているのが信用金庫だ。

だがバブル崩壊以降、その業績は思わしくない。バブル経済末期(1991年3月末)の時点では、全国に440庫もの信用金庫が存在した。だが2017年9月の段階では、264庫までその数を減らしている。こうした傾向は、今後も続いていくと見られている。

にもかかわらず兵庫県加古川市にある但陽信用金庫は、1985年から30年間で預金量を5.8倍増加させた。全国信用金庫の預金残高の伸びがこの時期2.6倍だったことからも、但陽信用金庫がいかに大きく成長したかがわかる。

但陽信用金庫がこれほどまでに高い評価を受けている要因は、大きく分けて3つある。(1)創業以来一貫して地域のため、地域の企業や住民のために注力してきたこと、(2)心優しい優秀な職員の確保と育成に力を注いできたこと、そして(3)理事長である桑田純一郎さんのリーダーシップが、地域企業や地域住民をはじめ、役職員の信頼を勝ち取ってきたことだ。それぞれ具体的に紹介していこう。

年間800件近いよろず相談を受けつける

但陽信用金庫が愛される第一の要因は、たぐいまれな地域貢献と社会貢献だ。一民間の金融機関にもかかわらず、地域のまち医者、交番、かけこみ寺として各店舗に「よろず相談室」を設置。取引のあるなしを問わず、暮らしに関するあらゆる相談に乗る。平成28年のよろず相談は7858件だが、そのうち331件は金融にまったく関係ないものだった。また地域のイベントには職員をかならず派遣し、盛り上げ役を買って出たり、裏方の作業を手伝ったりもしている。

同金庫がこれほどまでに地域貢献をするようになったのは、昭和63年の本店移転と平成7年の阪神淡路大震災がきっかけだ。地縁がない場所に移転したことで、地域に認めてもらうための努力を必死に重ねた。加えて阪神淡路大震災を経験し、職員全員が「自分たちもなにかしなければ」と動きだした。

「ボランティア活動を通して、“相手の人に喜んでもらえることをするのが自分の喜び”となるような人間をつくることが、私の仕事」と桑田理事長は語る。だから同金庫では、ボランティア活動が「仕事」の一環として位置づけられているのだ。

職員に高い賃金を払っても十分経営は成り立つ
TakakoWatanabe/iStock/Thinkstock

ボランティアや社会貢献をおこなうには、それに見合う心優しい人財の確保と育成が必要不可欠だ。但陽信用金庫では、桑田理事長みずからが職員採用に関わり、理念に共感する人財を採用している。これが、同金庫がこれほどまでに高い評価を受けている第二の要因だ。理事長が登壇する説明会は、大学の就職活動担当者のあいだで“伝説の会社説明会”と呼ばれ、「但陽に就職しなくてもいいから、理事長の話だけは聞きに行け」と言われるほどだという。

企業にとって顧客はもちろん大切だが、職員はもっと大切である。職員がしっかりとした思いをもっているからこそ、顧客が増えるのだ。とくに金融業界は差別化がしにくい。生き残るには結局、職員の人間性で勝負するしかないのである。

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