宇宙に命はあるのかの表紙

宇宙に命はあるのか

人類が旅した一千億分の八


本書の要点

  • ロケット研究は、第二次世界大戦前後のドイツ、アメリカ、ソ連で競うように進められた。ロケットに爆弾を積めば、ミサイルとして使うことができるため、軍が研究資金の多くを負担した。

  • アポロの歴史的偉業の裏には、斬新な「月への行き方」を提案したハウボルトや、宇宙飛行士の危機を救うプログラムを開発したハミルトンのように、それまでの常識と戦った人々がいた。

  • 1970年代に打ち上げられた探査機「ボイジャー1号」「ボイジャー2号」によって、活火山をもつ衛星や、海がある衛星などが発見された。

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いかに人類は宇宙へ旅立ったのか

ゴダードの2つの功績

宇宙飛行の実現に大きく貢献し、「ロケットの父」と呼ばれるのが、マサチューセッツ州出身のロバート・ゴダードだ。しかし、ロケットを発明したのは彼ではないし、そもそも、彼のロケットは宇宙に届きすらしていない。彼の第一の功績は、ロケットを使えば宇宙に行けると気付いたことだ。当時、ロケットは、600年前の廃れた技術だと認識されていた。そんな前時代的な技術で宇宙に行けるとは、誰も思っていなかったのだ。彼の第二の功績は、ロケットを宇宙へ飛ぶ乗り物に生まれ変わらせたことだ。現代でも採用されている、液体燃料ロケットという形を採用したのはゴダードである。

「V2」を開発したフォン・ブラウン

3DSculptor/iStock/Thinkstock

フォン・ブラウンはドイツに生まれ、ベルリン工科大学に学んだ。彼は、若者たちが結成したアマチュアロケット・グループVfRに加わり、日夜ロケットの開発に取り組んだ。彼らの活動に関心を抱いたのが、ドイツ軍だった。なぜなら、人工衛星を積んで宇宙に打つのではなく、爆弾を積んで敵国へ打てば、ロケットは兵器になるからだ。兵器を作りたい軍と、開発資金を求めるフォン・ブラウンの利害が一致し、彼は陸軍に雇われる。こうして彼は、本格的な液体燃料ロケットの開発に取り掛かることとなる。彼が軍に雇われた翌年、ヒトラーが首相に就任し、やがて世界大戦が始まった。その間もフォン・ブラウンはロケット開発に没頭し、11年をかけて「A4」と呼ばれるロケットを完成させる。これは、高度200kmの宇宙空間に達する能力を持つロケットである一方で、320km離れた標的に1トンの爆弾を命中させられるミサイルでもあった。このとき、ドイツの勝利は絶望的だった。しかし、ロケットこそが戦況を逆転する最終兵器になると確信したヒトラーは、A4に優先的に資金と物資を供給することを約束し、ひと月あたり1800機のA4を製造することを命じたのだった。そしてA4は、「報復兵器2号」を意味するV2という名前を授けられる。終戦を迎えると、フォン・ブラウンは、ロケットの技術をアメリカ軍に売り込んだ。彼は受け入れられ、124人の技術者とともにアメリカへと渡る。

「スプートニク」を生んだコロリョフ

アメリカがフォン・ブラウンを欲しがったのと同様、ソ連もまた、彼の技術を欲しがっていた。結局、ドイツに残されていた部品や書面、図面、技術者はソ連の手に渡ることとなる。

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要約公開日 2018.06.24
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