ピーター・ティール
世界を手にした「反逆の起業家」の野望

未 読
ピーター・ティール
ジャンル
著者
トーマス・ラッポルト 赤坂桃子(訳)
出版社
定価
1,574円 (税抜)
出版日
2018年05月06日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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ピーター・ティール
ピーター・ティール
世界を手にした「反逆の起業家」の野望
著者
トーマス・ラッポルト 赤坂桃子(訳)
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定価
1,574円 (税抜)
出版日
2018年05月06日
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レビュー

「成功の方程式はそもそも存在しない」――そう語るのは、ペイパルの創業者にしてフェイスブックを黎明期から支える超大物投資家、そしてトランプ政権の仕掛人でもあるピーター・ティールだ。

たいていの人は成功者の物語を読むとき、そこになにか成功の秘訣ともいうべき特徴を見出だそうとする。だからすぐれた起業家であり投資家でもあるティールに「そんなものはない」と喝破されると、意気消沈してしまう人もいるかもしれない。だがたとえ成功の方程式はないにせよ、本書から学べることは多い。

とくに「競争は負け犬がするもの」と公言してはばからないティールも、かつては熾烈な競争環境にさらされていたという事実は注目に値する。チームメンバーとの信頼関係と友情をこの上なく重視し、人間関係を築くことにこだわりをもっているのは、そうした過去の経験が根底にあるのだろう。

ティールはテクノロジーをビジネスへ生かすだけにとどまらず、まるで未来が見えているかのごとく巨視的に行動する。それは起業して世の中をよりよくするという「ビジネス」の視点だけにとどまらず、一国あるいは世界の未来まで見通す「政治」の視点もあるからだ。そこにはみずからの経験に裏打ちされた、非常に強固な軸がある。

彼の見通す先になにがあるのか、本書を読めばその一端を伺い知ることができるだろう。読む者の視界を開いてくれる一冊だ。

金井 美穂

著者

トーマス・ラッポルト (Thomas Rappold)
1971年ドイツ生まれ。起業家、投資家、ジャーナリスト。世界有数の保険会社アリアンツにてオンライン金融ポータルの立ち上げに携わったのち、複数のインターネット企業の創業者となる。シリコンバレー通として知られ、同地でさまざまなスタートアップに投資している。シリコンバレーの金融およびテクノロジーに関する専門家として、ドイツのニュース専門チャンネルn-tvおよびN24などで活躍中。他の著書に『Silicon Valley Investing』がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    リバタリアン(自由至上主義)のピーター・ティールは、過去にくぐり抜けてきた競争環境とフランス人哲学者ルネ・ジラールに影響を受け、「競争は負け犬がするもの」という結論にいたる。
  • 要点
    2
    スタートアップでティールが重視するのが人間関係だ。創業仲間とのあいだには信頼と友情がなければならないし、メンバーとは家族のように毎日一緒にいる前提で関係づくりをするべきだ、とティールは考えている。
  • 要点
    3
    ティールは「逆張り思考」で成功を掴んできたが、それは単に人と逆の考え方をするということではない。なにものにも左右されず、他の誰とも見解が一致しない思考でなければならないのである。

要約

ピーター・ティールの原点

リバタリアンへの道筋
firebrandphotography/iStock/Thinkstock

ピーター・ティールはリバタリアン(自由至上主義者)である。その原点はティールが6歳の時にさかのぼる。

ティールはドイツで生まれ、米国に移住したのちに、アフリカの小さな港湾都市に移り住んだ。そこでティールは規則に縛られた、厳格な学校へ通うことになる。生徒に制服を着用させ、答えをまちがえた生徒の手の甲を定規で叩くような学校だ。みずからの意思に反して、画一性と規則のなかにムリやり押しこめられることに、ティールは嫌悪感を覚えたという。

その後ティール一家は米国へ戻り、スタンフォード大学の北にあるフォスターシティに移り住んだ。アップルⅡが大ヒットし、パーソナルコンピュータが誕生したのはこの頃で、ティールが10歳のときだった。当時のシリコンバレーは戦後期の中産階級にとって、出自や宗教にとらわれない平等で快適な場所だったと、のちにジャーナリストのジョージ・パッカーは綴っている。

スタンフォード大学での出会い

ティールはみずからの学歴を「模範的」だと非難めいて話す。まさしくそのとおり、彼は世間一般的なエリートコースをたどった。大学は自宅から近いという理由で、スタンフォード大学へ進学。専攻は哲学である。

スタンフォード大学は当時すでに、コンピュータ科学の分野で世界的に高い評価を得ていた。しかもティールは、チェスの13歳未満の部門で全米7位に入ったことがあるほどの数学的才能の持ち主である。だが彼が選んだのは哲学だった。そしてこの選択が、ティールにとって重要な出会いをもたらした。

そのひとつが、リンクトインの創業者リード・ホフマンとの出会いである。2人はなにが真実かということについて、講義後によく議論した。

もうひとつの出会いは、スタンフォード大学の教授であり、著名なフランス人哲学者でもあるルネ・ジラールだ。ジラールの思想はティールの人生観だけでなく、ビジネスや投資判断にも多大な影響を与えた。それは「人間には他人が欲しがるものを欲しがる傾向があり(模倣理論)、それが競争を生み、競争はさらなる模倣を生む」というものだった。ティールはジラールから、起業家や投資家の本質を学んだのだ。「人は、完全に模倣から逃れることはできないけれど、細やかな神経があれば、それだけでその他大勢の人間より大きく一歩リードできる」とティールは語っている。

競争からの脱出
_jure/iStock/Thinkstock

大学卒業後、スタンフォード・ロースクールに進学し、法務博士号を取得したティール。その最初の職場は連邦控訴裁判所だった。その後ティールは法学部生にとって憧れのポストである連邦最高裁判所事務官への切符を手に入れるものの、残念ながら不採用になってしまう。それは優秀な成績でエリートコースをひた走ってきたティールにとって、青天の霹靂ともいえる結果だった。

それからニューヨークの大手法律事務所に職を得たティールだったが、そこでの日々についてはいまも快く思っていない。昇格のために長時間労働を余儀なくされ、身を粉にして働く環境だ。たしかに誰もがうらやむエリートの世界ではあったが、ひとたび立ち入れば、とたんに脱出したくなる牢獄のようだったという。

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トーマス・ラッポルト 赤坂桃子(訳)
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2018年05月06日
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