ソーシャル物理学
「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学

未 読
ソーシャル物理学
ジャンル
著者
アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳)
出版社
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2015年09月24日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学
著者
アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳)
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出版社
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2015年09月24日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
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レビュー

著者は、MIT(マサチューセッツ工科大学)教授でビッグデータ研究の第一人者として知られる人物である。アイデアはどのように生まれ、行動となり、集団へと広がっていくのか。本書では、その法則性を、高度な数学モデルとビッグデータの活用によって明らかにし、個人や企業における生産性や創造性の改善に生かす方法論など、社会物理学の新たな成果を余すことなく紹介した一冊である。

社会科学の目的は「社会を科学的に理解し、制御する方法を見出すこと」である。しかし、社会科学の対象概念は抽象的であり、定量化の手法としてアンケートが用いられてきた。自然科学での精密かつ定量的な、いわゆる「科学」のイメージからは離れていた。

ところが近年、著者らによって、ITシステムに蓄積された社会の大量データを使い、社会の挙動を理解する研究が始まった。これは、社会を定量的にとらえるレンズが得られたのに等しい。物理学のように、社会についてもデータによる検証・反証可能な科学が発展し始めたのである。これは組織運営や都市計画、社会制度設計などにも大きなインパクトを与えるとされる。

「人間に法則なんてない。もっとどろどろしたもので、国や文化によっても違うし、一律な議論をしても意味がないのではないか」。そんなふうに思う人にこそ、本書をぜひ手にとってほしい。新しい思考の枠組みが得られ、知的好奇心が大いに刺激されることうけあいである。

西 広海

著者

アレックス・ペントランド(Alex Pentland)
マサチューセッツ工科大学(MIT)教授。MITメディアラボ創設から関わり、現在は同ラボのヒューマンダイナミクス研究グループ所長を務める。ビッグデータ研究の世界的第一人者で、フォーブス誌の「世界で最も有力な7人のデータサイエンティスト」にも選ばれた。また10以上のビッグデータ関連の会社を創立した起業家でもある。世界経済フォーラムでは、ビッグデータと個人データ保護に関するイニシアチブを主導した。邦訳書に『正直シグナル―非言語コミュニケーションの科学』(みすず書房)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    社会物理学とは、情報やアイデアの流れと、人々の行動の間にある数理的関係性を記述する、定量的な社会科学である。
  • 要点
    2
    集団のパフォーマンスには、アイデアの流れのパターンが、最も大きく影響している。具体的には、アイデアの数の多さ、交流の密度の濃さ、アイデアの多様性がカギとなる。
  • 要点
    3
    ビッグデータと社会物理学を組み合わせ、データ駆動型社会を実現すれば、都市の生産性と創造性を改善できる。そのためには、「データのニューディール」と呼ぶ取り組みが必要になる。

要約

「社会物理学」とは何か

つながりすぎた社会

多くの国はこれまで、市場経済と民主主義の実践により、何事もトップダウンで決まる中央集権型社会よりも多くの成果をあげてきた。だが近年は、人とコンピューターのつながるネットワークにより、変化のスピードが速くなる一方だ。数百万の人々が、お互いの意見から学んだり、影響を与えたりする「つながりすぎた社会」となったのである。そのため、私たちの社会は制御不能になる一歩手前まで来ており、対処方法を模索しなければならない。

社会物理学と物理学・経済学との比較
Kenishirotie/iStock/Thinkstock

この問題解決のカギを握るのが、社会物理学である。社会物理学とは、情報やアイデアの流れと人々の行動の間にある、数理的関係性を記述する、定量的な社会科学である。

この分野の性格について、著者は、自然科学の代表といえる物理学や、社会科学の代表といえる経済学との比較によって説明している。物理学は「エネルギーの流れがどのように運動の変化をもたらすか」の理解をもたらす。同様に、社会物理学は「アイデアや情報の流れがどのように行動の変化をもたらすか」の理解に役立つ。

また、経済学はいかに市場が通貨の交換によって機能するかを研究する。一方、社会物理学はいかに人間の行動がアイデアの交換によって促されるかを研究対象とする。

ビッグデータとソシオスコープ

社会物理学を動かすエンジンとなるのが、ビッグデータである。これまでの社会科学では、実験室の中で起きた現象を分析するか、アンケートに頼ることがほとんどだった。

しかし、ビッグデータを解析する技術の登場により、個人の間で生まれる膨大な量の交流を分析し、社会を複雑な姿のままで捉えられる可能性が生まれた。社会がどのように発展するのかを把握する、世界初の「ソシオスコープ(社会鏡)」が手に入りつつあるのだ。社会物理学は社会システムの改善の扉を開くといえる。

アイデアや情報の流れはどのように行動の変化をもたらすか

探求行為
seb_ra/iStock/Thinkstock

新しい行動は、「新しいアイデアを収集する探求行為」と、「その後に起きる仲間とのエンゲージメント」によって広まる。ここでの探求とは、アイデアや情報を収集するためにソーシャルネットワークを活用することを指す。探求の質を高めるうえで重要な点は次の3つだ。

・社会的学習:成功した他人を真似するという社会的学習を、個人学習と組み合わせた場合に、劇的に優れた効果がもたらされる。数学モデルでの検証によると、最善の学習戦略は、エネルギーの90%を、うまく行動していると思われる人の発見、模倣に割くことだった。

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リーダーシップ・マネジメント 政治・経済 テクノロジー・IT サイエンス
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