日本の中小企業
少子高齢化時代の起業・経営・承継

未 読
日本の中小企業
ジャンル
著者
関満博
出版社
中央公論新社 出版社ページへ
定価
864円
出版日
2017年12月25日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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少子高齢化時代の起業・経営・承継
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関満博
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864円
出版日
2017年12月25日
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4.5
革新性
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レビュー

日本の中小企業は企業数で99.7%、従業員数で70.1%を占めるという。それにもかかわらず、マスコミなどを通じて私たちが目にする企業の情報は、圧倒的に大企業のものが多い。本書を読むと、私たちは日本経済の重要な部分を見逃していたのではないかという危惧に襲われる。

著者は45年にわたり中小企業の現場を見てきた、徹底した現場主義の経営学者だ。その言葉のリアリティと説得力は圧倒的といえる。著者によると、1985年のプラザ合意から92年のバブル崩壊の7年間を境として、それ以前とそれ以後では、日本の産業の置かれている条件が劇的に変わったという。一つ前の時代は、経営者たちは若く、いくらか貧しかった。アメリカを目標に据えて、彼らは必死に汗をかいた。だが、1992年以降、アメリカに加え「中国・アジア」の存在感が大きくなっていった。また、老人の貧困や非正規労働の広がりといった問題はあるものの、全体的に日本が豊かになり「高齢で、豊か」なことが新たな所与の条件となった。さらには「IT」と「環境」への対応が必須になっている。

一方、東日本大震災の復興過程で、地域の産業や中小企業の重要性が多くの人に認識された。こうしたことから、中小企業が現在抱えているさまざまな課題は、決して個々の企業の出来事ではなく、日本社会全体の未来を占う重要テーマであることがわかる。

本書は、現在の中小企業が置かれた状況を体系的に理解し、日本の産業社会の将来に思いを致す際の格好のガイドブックになるであろう。

しいたに

著者

関 満博(せき みつひろ)
1948年、富山県生まれ。1976年、成城大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。東京都商工指導所、専修大学助教授、一橋大学教授などを経て、現在、明星大学経済学部教授、一橋大学名誉教授。経済学博士。
著書
『中山間地域の「買い物弱者」を支える』(新評論、2015年)
『東日本大震災と地域産業復興』Ⅰ~Ⅴ(新評論、2011~16年)
『「地方創生」時代の中小都市の挑戦』(新評論、2017年)
『北海道/地域産業と中小企業の未来』(新評論、2017年)など多数。
受賞
第9回(1984年)中小企業研究奨励賞特賞(『地域経済と地場産業』)
第34回(1994年)エコノミスト賞(『フルセット型産業構造を超えて』)
第19回(1997年)サントリー学芸賞(『空洞化を超えて』)ほか。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本の中小企業は「廃業」が「起業」を上回っており、年々事業所数が減少している。
  • 要点
    2
    最大の課題は事業承継にある。従業員など第三者が承継する場合は、個人保証の壁が立ちはだかる。親族が承継する場合は、新しい時代の動きに対応できず、縮小に身を委ねている様子がうかがえる。
  • 要点
    3
    こうした現状を打破するために必要なのは、「時代認識」と「現場認識」である。日本社会は世界の先端に立っているという認識のもと、事業家としてその現状に積極的に関わろうという姿勢が欠かせない。

要約

減少する日本の中小企業

事業所数の推移から見る日本経済
Olivier Le Moal/iStock/Thinkstock

1992年のバブル経済崩壊から25年以上が経ち、「失われた25年」になろうとしている。この間、1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマン・ショック、さらには2011年の東日本大震災と困難が続いた。また2008年を境に、日本は人口減少へと向かっている。

怒涛の経済成長とバブル経済崩壊を経て、対外的には東アジア諸国地域の経済発展が強く意識されるようになった。それに伴い、成熟化、グローバル化の中での日本の存在感は希薄化しつつあるといってよい。

こうした産業社会の変化を端的に示すのが、中小企業がその多くを占める、企業の事業所数の推移である。総務省の統計によると、全国の民営事業所数は1991年の655万9377をピークに、2016年には535万9975にまで減少している。

特に製造業の事業所の減少は著しく、1986年に87万4471あった事業所は2016年には45万3810と、その数をほぼ半減させている。昨今は「ベンチャー」「起業」といった言葉がもてはやされているが、増加している事業区分は「医療・福祉」「農業・林業」くらいである。

起業の停滞と廃業の増加

次に廃業率と開業率の推移について見ていこう。90年代前半ですでに、廃業率は開業率を上回った。とりわけ製造業では、90年前後から一貫して廃業率が開業率を上回る状態が続いている。

製造業の退出が進むのは、設備投資の負担が大きく、重量級であり3K色の強い部門からである。機械金属産業だと、鍛造、熱処理、メッキ、大物製缶溶接、大物機械加工といった順番となる。

比較的3K色の弱い金型部門では、以前は中古のフライス盤を1台導入して、数十万円の投資で起業できた。しかし現在は、マシニングセンター(MC)、放電加工機、研削盤などを揃えなければならず、初期投資に少なくとも1億円がかかる。このような事情も、製造業の起業を以前に比べて格段に難しくしている。

一方、開業が多い分野は、パソコン1台からでも起業可能なIT関連、居抜きの貸店舗で開始される飲食業や美容業、農産物の直売・加工、介護・福祉関連などが挙げられる。共通するのは初期投資が少なくてすむことであり、女性による起業が目立っている点だ。

いまの時代の起業

既存事業での起業

まずは、既存事業の現状を概観する。日本の産業における多くの事業分野は成熟化が進む。繊維・日用品などの部門では、中国・アジアへの生産移管が著しい。特に繊維製品の96~97%は中国、アジア(東南アジアおよびバングラデシュなどの南アジア)製となっている。他方、1960~70年にかけて、大都市から日本各地に移管された工場群の大半は撤退を余儀なくされている。

近年、繊維・日用品の領域では、新たな生活様式に応えた起業が増えつつある。その一例が、セミオーダーのニット製品を手掛ける「ユーティーオー」である。岩手県北上市郊外に工場を構え、高級の羊毛であるカシミヤを素材に、一点ずつオーダーに応えて、手作りで生産をしている。価格は10万円前後。高額であるが、利用者の60%はリピーターになるという人気ぶりだ。

新たな事業分野での起業
ipopba/iStock/Thinkstock

次に新しい事業分野の動きに目を転じてみる。この20~30年においては、グローバル化に伴う「貿易や投資などに関連する事業」、高齢化に対する「医療・福祉系の事業」が拡大している。また、IT技術が進展するにつれ、多様な「IT関連企業」が登場した。「農業関連産業」は今世紀に入ってから、既存の発想にとらわれない、さらなる拡大の様相を呈している。

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経営戦略 起業・イノベーション 産業・業界
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