日本料理はなぜ世界でいちばんなのか

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日本料理はなぜ世界でいちばんなのか
出版社
出版日
2018年04月24日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

料理人という職業に、どんなイメージをお持ちだろうか。かつては料理の腕を競うようなテレビ番組などもあり、業界のトップに君臨する料理人は尊敬を集める存在だった。しかし今や、そうしたスターシェフは皆無だという。残念ながら、一般的な料理人の社会的地位は高くない。労働環境や報酬面も恵まれているとはいえない。

そこで著者が願うのは、包丁1本で生きる板場という職業を、本人が努力さえすれば一般のビジネスマン以上の稼ぎを生み出せる職業にすることである。本来、料理人とは、資金も人脈も学歴もなくても、「志」次第で勝ち組になれる世界であった。いつの間にかそうではなくなってしまったが、日本料理の世界を復活させ、そこで働く人に「夢」を持ってもらいたい――それが、著者の願いだ。

本書の著者は、吉兆などの料理人を経て、現在では経営者・料理人として活躍する渡辺康博氏だ。本書は、渡辺氏がこれまで経験してきた「板場道」について語られるとともに、一流の料理人になっていつかは自分の城を持ちたいと願う人に向けて、目標へと突き進む方法が指南される一冊だ。

料理人をめざす人はもちろん、他の分野において高みを目指す人にも、本書をぜひ手に取ってほしい。多くの人は、「夢」はあっても、飛躍するチャンスには気づいていない。情報はたくさんあるのに、それに気づこうとしない、つまり気づくためのアンテナを立てていないのである。本書がそのアンテナの一つになるかもしれない。

ライター画像
山下あすみ

著者

渡辺 康博(わたなべ やすひろ)
株式会社春義 代表取締役社長(兼・統括総料理長)。西日本佐藤調理師会参与。
1968年福岡県生まれ。11歳(小学5年)から料理人を目指して料亭で修業を始める。1987年九州産業大学付属高等学校を卒業後、大阪・曽根崎新地の料亭「八光」に入社。4年後、京都の御室懐石「佑近」を経て、4年間の流れ板(全国36店)を経験。1995年大阪ミナミの「割烹京こづち」入社。1999年福岡パシフィックホテルの料理長・副支配人を務めたのち、2001年株式会社吉兆に入社。2004年大分「かみ風船」料理長を経て、2007年福岡の有限会社グラスプダイナーサービスに入社。2017年株式会社春義を創業。
経営者・料理長のかたわら、大学などでの講演、料理人・料理長向け講座の講師としても活動。
本書が初の著作。

本書の要点

  • 要点
    1
    同じ仕事をしていても、料理人の腕前や待遇には大きな差がある。その差を生じさせているのは、「覚悟」の有無だ。強い決意があれば、腕前は上がり、地位も待遇も向上させていける。
  • 要点
    2
    「和食」の中でも、皿の上に人生観や季節感を表現しているのが「日本料理」であり、その頂点にいるのが「吉兆」だ。そんな哲学を持った料理は世界を見渡しても他にない。
  • 要点
    3
    弟子の板前人生は、師匠によって決まってしまう。著者は、自分が間違うと日本文化が終わってしまうというくらいの気持ちで、自分自身に制約をかけて生きている。

要約

板場の生き方

逃げる、よける、避けるは絶対にしない

同じ料理人という仕事をしていても、腕前や待遇には大きな差が生じる。その差を生じさせているのは、「覚悟」の有無だ。「どんなことがあっても、やり抜くぞ」という決意の強さがあれば、腕前は上がり、地位も待遇も向上させていける。

著者は修業時代に「逃げる、よける、避けるは、絶対にするな!」という精神を叩き込まれた。人間は、強い覚悟を持ち続けていなければ、すぐに楽なほうに流されてしまうものだ。だからこの言葉を肝に銘じ、絶えず自分自身の位置を引き戻さなければならない。著者は毎日この言葉を自分に言い聞かせて、自分自身の覚悟の度合いを点検してきたという。

いつも腹をすかせている
scyther5/iStock/Thinkstock

著者は、仕事中は一切食事をしない。満腹状態で料理をつくると、味が不確かになるからだ。

著者は昔、休憩時間に仲間とともにこっそりカレーを食べに行ったことがある。しかし、それが先輩たちに露呈してしまい、ボコボコにされたという。カレーのような香りの強いものを食べてしまうと、日本料理の繊細な味付けを判別することは不可能だという理由からだ。

また著者は、生まれてこのかたお酒を飲んだことがない。お酒は舌の感覚を麻痺させ、香りを鈍らせるからだ。だから、他店で「板さんもどう?」などと言われてお客さんからお酒を注いでもらっている板前を見ると、驚くと同時に憤りを感じる。

銀座のママのように勉強する

板場というプロフェッショナルである以上、料理の世界に精通し、その道を究めようとしなければ成功にたどり着くことはできない。

著者は、店でチップをいただけば、お礼を申し上げに行くという。するとお客様は挨拶を返してくれ、商売や株式、景気や経済動向にまで話が及ぶこともある。企業の幹部や株のデイトレーダーなどといったお客様たちと会話するため、著者は、経済新聞を読み、株価の動向を見ておき、政治や社会情勢にも気を配るのだ。

一流の銀座のママは、数紙の新聞や雑誌をチェックしておき、あらゆる話題についていけるようにするというが、板場も同じようにするべきだ。料理でプロフェッショナルであらなければならないのは当然のことだが、接客においてもプロフェッショナルにならなければいけないのだ。

【必読ポイント!】覚悟を決めるまで

実家で受けた英才教育
NYS444/iStock/Thinkstock

著者は、小学校5年生のときに、実家の料理屋での修業をスタートさせた。修業で忙しく、学校には満足に通えなかったので、中学生のときには科目別に6人の家庭教師をつけていた。勉強は毎晩、店での仕事を終えた後の21時から1時までで、勉強机の椅子にくくりつけられて、父に監視されながら取り組んでいた。

当時学んでいた科目は、数学、化学、歴史、国語、料理だ。料理では、料理の歴史を学んでいた。昔の故事にならって出来上がった料理を習ったり、料理の基礎となるタンパク質やアミノ酸の構造を学んだりと、料理人になるための英才教育ともいえる勉強であった。

地獄のような修業

高校卒業後は、大阪の料亭「八光」で修業をした。同期は40人で、料理屋の跡取り息子や旅館の長男坊など、すでにそれなりの技術を備えている者ばかりであった。

しかしその同期は、1年後にはたった2人を残して辞めてしまう。それもそのはず、

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要約公開日 2018.07.28
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