誰がテレビを殺すのか

未 読
誰がテレビを殺すのか
ジャンル
著者
夏野剛
出版社
定価
820円 (税抜)
出版日
2018年05月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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誰がテレビを殺すのか
誰がテレビを殺すのか
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夏野剛
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820円 (税抜)
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2018年05月10日
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明瞭性
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レビュー

インターネットの発展がここまでテレビを追いつめているのか。その凄まじさを感じさせる作品だ。ネット広告の売上額は、テレビ広告の売上額に迫り、動画サイトの登場がテレビの独壇場を崩してきた。多くのしがらみに自縄自縛になっているテレビを横目に、ネット空間には自由な世界が広がる一方だ。技術革新によるネット配信スピードの改善などにより、ネットは映像コンテンツのビジネスを伸長させている。逆にいえば、経営面、技術面、人々の嗜好などの変化が、テレビの将来を視界不良にしている。

テレビのメインの視聴者は60代~70代だ。テレビ局はこうした層に受け入れられやすい番組作りを重視してきた。しかし、著者も指摘するように、2015年に70歳だった人は2025年には80歳になる。それを考えると、こうした世代のウケ狙いにばかり走るわけにはいかないのは自明だ。2018年のいま、残された時間は確実に短くなっている。

テレビ局が生き残るには何が必要なのか。著者の主張は、テレビ局が映像コンテンツ総合制作会社になるべきだというものである。その核心は、テレビ、ネットという枠を超えて、各方面に自由にコンテンツを提供できるようになる必要があるということだ。

肝心なのは、テレビ局、特にその経営陣が発想転換できるかどうか。相当の覚悟が必要で、場合によっては痛みも伴うであろう。そうした業界の構造改革が断行できるかどうかが問われている。その打開策の数々を知ることは、他の業界のビジネスパーソンにとっても、非常に有意義であるはずだ。

毬谷 実宏

著者

夏野 剛(なつの たけし)
1988年、早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。95年、ペンシルバニア大学経営大学院卒業。96年、ハイパーネット取締役副社長。97年、NTTドコモ入社。榎啓一、松永真理らと「iモード」を立ちあげる。iモード以後も「おサイフケータイ」をはじめとするドコモの新規事業を企画・実践。2001年に米国の経済紙「ビジネスウイーク」にて、「世界のeビジネスリーダー25人」に選出される。執行役員を経て08年にNTTドコモを退社。現在は慶應義塾大学大学院特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、トランスコスモス、グリー、USEN-NEXT HOLDINGSほか多数の企業で取締役を兼任。政府委員や東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会参与なども務める。著書に『iモード・ストラテジー』『ア・ラ・iモード』(共に日経BP)、『1兆円を稼いだ男の仕事術』(講談社)、『なぜ大企業が突然つぶれるのか』(PHP研究所)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    ネットの存在は急速に人々の生活に浸透した。中でも動画サイトの登場は、テレビを脅かす存在として意識されている。
  • 要点
    2
    スマホの浸透は人々の時間の使い方に変化をもたらした。様々なコンテンツが生まれることで、人々の時間の奪い合いになっており、テレビは大きな影響を受けている。
  • 要点
    3
    テレビ視聴のメインターゲットは、60歳以上の人たちだ。2015年に70歳だった人は25年には80歳を迎える。テレビ局は番組の作り方、編集の仕方を抜本的に変えていく必要がある。

要約

テレビとネットの戦い

動画サイトがテレビの脅威に
Tero Vesalainen/iStock/Thinkstock

いまやネットなくして生活は成り立たないといってよい。その状況はすでに当たり前過ぎて、ネットの威力について、多くの人が理解できていないというのが著者の印象だ。

特にネットがメディア業界に与えたインパクトは非常に大きい。アメリカ発のネット動画配信サービスを提供する「ネットフリックス」や、Amazonが運営する「プライム・ビデオ」。これらが2015年に日本で始まってからは、計り知れない衝撃を私たちや既存のメディアに与え続けている。2000年以降、ネット広告の売上高はそれまで莫大だったテレビ広告の売上高を猛追し、2014年に1兆円の大台を超えた。広告業界の中では非常にシンボリックな出来事だったといっていい。また、結局成功はしなかったが、ネット企業がテレビ局を買収しようとするほどの資金力もつけていった。

このほか動画サイトの成長も見逃せない。2005年12月にYouTubeが正式にサービスを開始し、その1年後にはニコニコ動画のサービスがスタートした。この頃から次第に、テレビを脅かす存在としてネットが認識され始めていった。iPhoneに代表されるスマホの登場などが、そうした動きに拍車をかけた。

新たなビジネスを持ち込んだ新興勢力

先に触れた「ネットフリックス」や「プライム・ビデオ」の存在は、テレビにとって決して過小評価できない存在である。なぜなら、両者の登場により、これまでの常識を覆すような変化が起きているからだ。

その一つとして挙げられるのは、こうしたサービスがこれまでの動画配信サイトとは根本的に異なるビジネスモデルを有している点である。それは月額課金プラス都度課金の組み合わせによる会費制モデルだ。会費制ビジネスの強みは、「クリティカルマス」(商品やサービスが市場に爆発的に広がるために最低限必要な普及率)を超えた瞬間に、定常収入が際限なく上がっていく点にある。そのため、莫大な利益を生み出していく。

そうなると、潤沢な資金を後ろ盾とし、莫大な制作費を投入して、よりクオリティの高いオリジナルコンテンツを生み出せる。テレビや映画と違って、時間的な尺に対する制約がない。そのため、長編のコンテンツを作ることも可能だ。アメリカでは多くのハリウッドスターたちが、こぞってネットフリックスの作品に出演する動きも出ている。

がんじがらめの日本のテレビ
nicoletaionescu/iStock/Thinkstock

ネットの猛烈な勢いに、テレビ局の人たちはもちろん気づいており、危機感を抱いている。ネット配信とどう併存していくかを模索中だ。

ただし、テレビ局は大きなハンデを背負っている。その最たるものが芸能事務所の問題だ。所属タレントがネットに出演するのを、頑なに拒む事務所が一部存在する。このため、新興国では当たり前になっているテレビとネットの同時放送は、日本ではできないのが現状だ。仮にネットでも放送される場合には、新たな出演料が発生してしまう。こうした狭い視野での力関係が、日本全体のメディアの在り方にまで大きな影響を及ぼしている。このままでは世界の動きから、日本が取り残されかねない。

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